「アカデミー賞では少なくとも、主演女優賞、脚本賞、衣裳デザイン賞は獲得してほしい一作」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー賞では少なくとも、主演女優賞、脚本賞、衣裳デザイン賞は獲得してほしい一作
すでに『ドクター・ストレンジ』シリーズで「マルチバース」を扱ったんで、基本設定としては二番煎じととらえられかねないところ、本作はさらに香港アクションを混ぜ込んだ上に、ショットどころかフレーム単位で操作されている視覚的美術的演出により、「マルチバース」なるものの得体の知れなさを表現した作品としては、突出した存在感を見せつけました。
もちろんダニエルズ(ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート両監督)の先端的すぎる映像センス(と少々下品なユーモア)が本作の大きな特徴には違いありませんが、日常に疲れた女性からカンフーマスターまで、目まぐるしく役どころを変えつつ余裕すら感じさせるミシェル・ヨーこそが本作を唯一無二なものとしていることを、観た人は誰でも納得するでしょう。
単に香港アクションの第一人者である彼女のキレのあるアクションが堪能できる、というだけでなく、図らずも『カンフースタントマン 龍虎武師』が示した、苦境に喘ぐ香港アクションが、このような形でスクリーンにその存在感を見せつけたことにも胸が熱くなります。
G指定でありながらなかなか際どいユーモアが含まれているため、万人におすすめできるか、といえば少し躊躇はあるものの、本作がアカデミー賞のノミネート作品として異色ではあっても、それに値する優れた作品であることは疑いようがありません。
アカデミー賞では、少なくとも主演女優賞、脚本賞、衣裳デザイン賞は必ず獲得して欲しいし、もし作品賞と監督賞を受賞したら、アカデミー賞史上に残る快挙となるでしょう。発表が今から楽しみです!
結果的にアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞をはじめとして7部門を獲得。本当におめでたい!
キー・ホイ・クァンの受賞は心揺さぶられるだろうな、と思っていたら、スピーチが予想を上回る内容で、やっぱり泣きました…。
しかしもちろん、他部門での受賞が喜ばしいことも間違いなく、特にジェイミー・リー・カーティスやキー・ホイ・クァンが助演賞を受賞したら一種の復活劇として、ステファニー・スーが受賞したら新世代の幕開けとして、間違いなく落涙することでしょう!