「カオスな世界観は楽しめるが、登場人物の目的がよく分からず、「尻すぼみ」なのが惜しまれる」エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
カオスな世界観は楽しめるが、登場人物の目的がよく分からず、「尻すぼみ」なのが惜しまれる
マルチバースを行き来できるといっても、それは「意識」だけの話で、しかも、そのきっかけとなるのが「突拍子もない行動」というのが、人を食っていて笑わせる。
主人公が、すべてのユニバースの中でも、一番目的や夢を叶えられていない自分で、最も弱いが故に、それだけ強くなれるという設定も秀逸である。
ただし、この場合、別のユニバースの自分にこちらのユニバースの自分が乗り移るだけのはずなのに、なぜ、向こうの自分の能力を、こちらの自分が手に入れることができるのか、その仕組みがよく分からない。(例えば、小指だけで敵を倒す技などは、強靭な肉体がなければ使えないはずである。)
また、別のユニバースの父親が、本来の敵である孫娘のことはそっちのけで、なぜ、自分の娘を倒すことにこだわるのかも理解できない。
そもそも、全宇宙にカオスをもたらすとされている娘の目的や能力がよく分からず、それ故に、母親が成すべきことも分からないので、話が目的に向かって転がって行かないのはいただけない。
それとも、「アルファ」のユニバースで母親から虐待された娘は、単に、自分を心から愛してくれる母親を探していただけなのだろうか?
いずれにしても、出だしは快調だったものの、中盤以降は同じような展開の繰り返しで失速し、最後は、予想通りのありきたりな結末に落ち着いてしまったのは、着眼点が良かっただけに、残念としかいいようがない。
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