劇場公開日 2023年3月24日

ロストケアのレビュー・感想・評価

全331件中、261~280件目を表示

4.0どちらが正しいのか分からない…

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

まさに現代社会に突きつけられた問題に
正面から取り組んだ作品

長澤まさみが扮する検事

現代日本が抱える介護問題の代弁者
松山ケンイチ

の構図の映画です

日本の刑法上
人を殺すこと = 殺人罪
となってますが

介護に困窮を極めた人達にとって
果たしてそんな単純な数式だけで
人を裁いて良いのか
ということを
心の底から考えさせてくれる作品です

リアルに
検事である長澤まさみ
人殺しである松山ケンイチ
のどちらが正しいのか
分からなくなるような感覚に襲われます

最後に二人が対峙する場面の
カット割りも秀逸で

本作品のテーマが
監督の力によって
より引き立てられてると感じました

役者、監督を含めたスタッフ
双方共に素晴らしい作品でした

それにしても
柄本明さん
様々な作品に出てきますが

どの作品の演技も
超ナチュラルにハマっており

本当に毎作品
感心させられております

日本を代表する
名脇役ですね

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HIDE

4.5観ているのが辛くなる

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

 親の介護をしている人間には、身につまされる内容。この国は子育て支援はしなくてはならないというベクトルが働いてるが、介護については目をそらし、理解しようとすらしない。国レベルがそれだから、職場でも、子どもが急に熱を出してとる休暇は許されるが、介護は違う。今、介護を受けている世代は、働き続けて日本経済の成長を支えてきた人たち。真面目に一生懸命働いて、税金を納めてきた人々がその人生の終盤に切り捨てられる社会が今この国の現状。検事よりも犯人の言葉にシンパシーを感じてしまう。

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旅行者

4.0長澤まさみと松山ケンイチが初共演を果たし、検事と連続殺人犯として逮...

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

長澤まさみと松山ケンイチが初共演を果たし、検事と連続殺人犯として逮捕された介護士の対峙を描いた社会派サスペンス。
戸田菜穂演じる梅田が法廷で叫んだとき、大友検事を演じる長澤まさみが正論を語っていると思わせてくれるいい場面なのだぁ!!考えさせてくれるおもしろい映画です。

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てかる

5.0人にしてもらいたいと思うことを人にもしなさい。

2023年3月26日
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人にしてもらいたいと思うことをしてあげたい。でもその時にならなければ何をしてもらいたいか分からないこともある。子が親にしてあげられることは本当はあまりない、松山ケンイチと長澤まさみの迫真の涙に、苦しさと悲しさ、悔しみで体が震えた。

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YUKI

4.0松山ケンイチがすごかった

2023年3月26日
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松山ケンイチが美しく神々しかった。
横顔がきれいです。

長澤まさみも良い作品に出ますよねー

人ごとじゃなく考えさせられます。

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くんくん

3.5、、、、で?

2023年3月26日
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という感じで終わってしまった。
現状ではどうにもならない事で、どうしたらいいの?施設高いしね。
積極的に殺すのはアウトで気づかないフリで死なせるのはセーフはダメでしょってこと?

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くろすけ

4.5彼の行為を批判はできない自分がいる

2023年3月26日
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介護センターで働く男が老人の殺害をしていた。
彼の行いは救いなのかエゴなのか?
議論すべき話題を映画として扱ってくれた。
親子の繋がりが苦痛となる。このことが痛々しいほど伝わってくる。

事件の謎を追う中で自身の心理が変わっていく…最近だと「ある男」が当てはまる、ある男はラストゾワっとするが、今作はとても暖かい気持ちになった。

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いたかわ

5.0日本に住んでいる全員に観てもらいたい。

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

40代の自分にとっては物凄く重かったです。
鑑賞中、ずっと自分の親の事、自分の将来を
考えてました。
どうすればいいのか答えは出ない。。
でもこれを観れて良かった。
こんなに自分に問いかけながら
映画を観た事はないかもしれないです。

長澤まさみ、柄本明の演技が刺さりました。。
上手いです。

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Tak

4.0絆か呪縛か、答えはバラバラ

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

難しい

なかなか重いストーリー、重いテーマでした。
高齢化社会における、介護、認知症・・・

立場により見え方も感じ方も違うのだろうな。
安全地帯、穴に落ちた家族、それを介護する職員・・・

正解がなにかわからない、いや人によって正解が異なるのか、
尊厳死、安楽死という考えもあるが、さすがに人殺しはどうかと思う。

現代社会の大きな問題を描いた映画であった。

私も同じような立場になったとき、介護する立場、される立場になったとき、
どのように思うのか、何ができるのか。。。

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あさやん

4.5ロストケアは悲しいラストケア…

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

原作未読で、内容は全く知りませんでしたが、主演の二人の演技合戦を期待して鑑賞してきました。期待どおりの演技と練られた脚本で作品としての満足度は高いですが、内容は鑑賞後も深く考えさせられるものでした。

ストーリーは、ある民家で認知症老人とその訪問介護を請け負っていた施設のセンター長の死体が発見され、心優しく誰からも慕われる介護士・斯波宗典が犯人として浮上し、取り調べに臨んだ検事・大友秀美が同様の死亡老人のデータを分析して詰め寄ると、斯波は自分の犯行を認めるものの、それは「救い」であると主張し、二人の信じる正義が激しくぶつかり合っていくというもの。

劇的な場面はほとんどなく、物語は淡々と進行していくように見えますが、一つ一つの場面から登場人物の背景や思考が窺い知れ、それが本作のテーマに密接に絡んでいるため、ぐいぐい引き込まれていきます。圧巻だったのは、取り調べシーンで見せる主演二人の演技のぶつかり合いです。その役の人物背景から発せられる説得力のある言葉が、もはや演技を超えているとさえ感じさせます。

そんな中、終始押され気味の検事・大友が感情的に声を荒げます。それは理詰めで論破されているからではなく、彼女自身の後ろめたさや現在の状況に起因していることが、ラストで明かされます。そして、その布石が冒頭のシーンにあったことに気づかされ、構成の妙を感じます。

本作は、厳しい介護の現場をまざまざと見せつけますが、私自身は介護経験はなく、知人の話やテレビで見知った程度の知識しかありません。私のように本当の意味での介護の苦しさを知らない人は多いと思うので、それをこうして本作で突きつけられたことに衝撃と意義深さを感じます。本作が、実際に介護で苦しんでいる方の背中を間違った方向に押すことはないと思いますが、行政の側には真剣に現行制度を見直すなり何らかの方策を打つなりするきっかけとなってほしいと切に願います。

超高齢化社会へ突き進む我が国において、介護問題は目を背けてはいけない喫緊の課題です。そんな課題に対して、斯波が出した答えの一つがロストケア。しかし、これは取り返しのつかない、もう後がない最終手段。ラストケアがロストケアだなんて悲しすぎます。では、どうすればよかったのか。その答えはわかりません。わからないからこそ、議論し模索し続ける必要があるのだと感じます。救いのない闇の中でもがく人、もがく気力さえ失ってしまった人たちがいることが本当に切ないです。

主演は松山ケンイチさんと長澤まさみさんで、二人の迫真の演技が秀逸で、介護問題の深刻さを際立たせています。特に松山ケンイチさんにいたっては、揺るぎない自身の正義に従う斯波を圧倒的な存在感で演じきり、役の上でも実力的にも長澤まさみさんを凌駕していたように思います。脇を固める柄本明さんも、主演の二人を引き立たせる抜群のアシストで作品に奥行きを与えています。坂井真紀さん、戸田菜穂さんらも、被害者遺族を好演しています。

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おじゃる

4.0深い話でした とても考えさせられる

2023年3月26日
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この映画はあくまでも介護における
問題や考え方を示しているので
事件における展開は主になっていません
その辺りの展開を期待する物語ではありません

あくまでも犯罪者と検事という形にはなってますが
物事の進行であまり意味はなく
主張者と聞き役という今での関係をドラマチックに
描くための被告と検事な気がします

特に派手さもない映画で上記の様に展開がハッと
する様な事はないのですが演者の演技力に
目を奪われて見入ってしまいます

歳を取った者が見ると色々と考えさせられ
終活をちゃんとしないとならないと痛感させられます

とても良い映画だと思います

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フラフラタルト

4.0見る価値あり。

2023年3月26日
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主演ふたりの演技も見応えあるし、介護問題も誰もが考える内容。犯人の立場になったらどうなるかなー、とは思うよね。見る価値ありだしサスペンスものとしても極上。これも演技力あっての事か。

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peanuts

4.0育児にも通ずる

2023年3月26日
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こちらの映画は介護を問題にしていたけど、育児も通ずるところがあるなと感じました。
対象が高齢者ではあるけど子供だって同じだなと。
深いところを突き詰めると正解はないけど、人はみな誰かに迷惑をかけながら生きてるからこそ、そこに感謝をしつつ助け合わなければならないと思いました。

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ri.

4.0身につまされる映画

2023年3月26日
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泣ける

悲しい

「面白い」と言う内容の映画では有りません
かと言って「良かった」と言うのも・・
あらすじでも想像が、付くストーリーですが
身につまされる内容で悲しくやけに重い
全ての配役や演技が素晴らしく良かった。
特に松山ケンイチと長澤まさみ、この映画の
クオリティとエンタメ性を上げています
多少の演出には目をつむりましょう。

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Leojiji

3.0

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

44本目。
テーマだったり、見せ所は切実だし、分かりやすい。
正論対正論、偽善対偽善な感じで、正解が見出だせない。
だから国、法律があるんだろうけど、完璧はない。
けど、となる難しさもある。
見せ場で、ちょっとキャラ変に感じしまう、いやそうなるんだろうと思っていたから、やっぱりとは思うけど、自分がと思えば、やっぱそうなるんだろうな。

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ひで

4.0「絆」と書いて「じゅばく」と読む

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

巷間語られている、
自助・共助・公助の順序が
さも当然のように。

しかし、元々我慢強いのに、
お上に頼ることを善しとしない国民性から、
介護する側、される側が共倒れになるケースも多いと聞く。

また、生活保護についても、
受給までのハードルは高く、
本当に必要な世帯に届いていない可能性も
常々指摘されるところ。

本作は、そうした社会の歪みから生まれる悲劇を
極大化し描写。

とは言え、こうした痛ましい事件は、
単発では新聞やテレビのニュースでも
折々に目にすること。

『斯波(松山ケンイチ)』は
訪問先の家族からも職場の所員からも評判の良い介護士。

対応は真摯、思いやりの態度も自然で、
そのたたずまいはさながら聖職者のよう。

ただ、年齢の割にはかなりの白髪で、
「随分と苦労したのでは」とは同僚の噂話。

そんな彼が殺人事件の、
それも四十人以上の老人を殺害した容疑者として取り調べを受ける。
対峙するのは長野地検の検事『大友(長澤まさみ)』。

ここで驚くのは、本人があっさりと容疑を認めてしまうこと。
勿論、嫌疑を掛けるまでの検察側の丁寧な捜査はあるものの
(上司は一過性の単純な事件として急ぎ処理するよう、
いかにも免罪を生むような指示をしていたのだが・・・・)、
その過程は一本道。謎解きの要素は弱め。

ではどこに尺が割かれているかと言えば、
『斯波』が(「救った」と表現する)殺人を犯すようになった経緯と
『大友』自身が抱える家族の問題。

彼はシリアルキラーでは全くなく、
冒頭「聖書」の一節が提示される如く、
あくまでも介護される老人と
その家族を慮ってのことと言い切る。

前者は尊厳を、後者は慰撫を意識してのものだと。

実際に要介護の親族が居ると
相応の時間を費やさねばならぬことは間違いなし。

また、外からの助けを当人が拒否するケースもあり
家族は次第に疲弊していく。

そうしたことへの救済であるのだと。

裁判に当たっての被害者家族の反応も複数通り。

「(殺された)父親を返せ!」と声高に叫ぶ者、
一方で肩の荷が下りたの如く
自身の幸せに改めて向き合える者、
どちらも真の姿ではあるのだろう。

とは言え、根底に在るのは
親族への愛情と、肉体的疲労から来る戸惑いとの
血の繋がりが生む、抜き差しならない
アンビバレンツな感情なのには違いない。

もう一つのテーマ、
家族の関係性が浮かび上がって来る。

ストーリーの主線はあくまでも
『斯波』の物語も、
並行して『大友』の事情も語られ。

幼い頃に両親が離婚した彼女は
女親の手一つで育てられ、
しかしその母親は娘に迷惑を掛けまいと
独り逍遥と老人ホームに入所。

が、次第に痴呆の症状が出始め
将来への暗雲が広がりつつある。

二十数年間音信不通であった父親との関係性も、
日々の多忙な業務を言い訳にし、先延ばしにした経緯。

そうしたわだかまりが、
『斯波』が触媒となり一気に爆発、
場所を変えて二人が向き合う最後のシークエンスは一種の「告解」。

『大友』が映る多くのシーンでの鏡像の多用は二面性の表現。
加えて、『斯波』の科白回しや外見の造り込みは
全てこの場面に集約する目的だったのだなと感嘆する。

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ジュン一

3.0顔が皺だらけやぞ、長澤‼️❓そんなこと、あるわけ❓鏡を見て❓ホンマやサンマさん‼️❓

2023年3月26日
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ストーリーとしては破綻しています。
用意周到に殺人を繰り返していながら、反転して全て認める、証拠も無いのに。
統計と自白で死刑、物的証拠があるのは1件のみ、それも一番の容疑者であるはずの連続盗みの犯人を差し置いて。
何か、舞台劇のような、大袈裟な演技が鼻につきます、マツケン、まさみを含めて。
それとこれが重要ですが、認知症をステレオタイプにくくり、偏見と独断に塗れた表現にうんざりです、介護が大変なことは現実ですが、これは流石にやりすぎです。
舞台劇としては見応えがありますが、映画としては落第です。
客感的なことは気にしない人、長澤まさみが好きな人、は是非。

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アサシン5

5.0ズバリ来年の日本アカデミー賞を総ナメにする傑作だと断言します!

2023年3月26日
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鑑賞方法:映画館

 昨日観た『The Son/息子』のラストに衝撃を受けたのに、その余韻を打ち消すくらいの激しいショックに包まれました。上映が始まったら、心が揺れ動くのが自分でわかるくらい物語に引き込まれ、夢中で最後までスクリーンに釘付けとなったのです。そして、自分ならどちらの判断をするのだろうと、観終わった今もずっと考えています。

 葉真中顕の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作の原作は、謎解きの要素もありますが、何より、命の尊厳、家族の絆といったテーマに真摯に取り組んだことに好感が持てました。映画化において「ミステリー」という原作のジャンルを通してでも、重厚な問題提起が可能なんだいうことを、提示した作品となったのではないでしょうか。

 小さな町のケアセンターに勤める介護士、斯波宗典(松山ケンイチ)は献身的に働き、高齢者やその家族、同僚の信頼が厚く、誰からも慕われていました。でもその裏で施設利用者を大量に殺害していたことが明らかになるというのが、この作品の基本的な話です。
 物語の前半はミステリー調。施設利用者の家で利用者と斯波の上司で所長の団元晴(井上肇)の死体が発見される事件が発生します。
 事件を担当することになった検事の大友秀美(長澤まさみ)は、虚偽の証言をしていたことから斯波に疑いの目を向けます。しかし物証がない中で、数字に強い部下の事務官である椎名幸太(鈴鹿央士)がデータから、斯波が勤めるその訪問介護センターが世話している老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの自宅での死者が40人を超えることを突き止めるのです。

 真実を明らかにするため、斯波と対峙する大友は、「誤った正義感をふりかざした身勝手な大量殺人」と断罪します。しかし斯波は「殺人は最後の介護、ロストケアなのだ。本人と家族を救った」と主張するのです。冷静に語る斯波の言葉は揺るぎない確信に基づくものでした。
 斯波が目にしたつらい介護の現場の様子は、介護サービスを利用して年老いた親の面倒を見るその子たち(坂井真紀、戸田菜穂)の追い詰められた日常として描かれていきます。
 大友は、「自分勝手な誤った正義感に基づいた殺人」として、斯波を糾弾します。「一人一人の人生の何があなたに分かるのか」「大切な家族の絆をあなたが断ち切っていいわけがない」「他人の人生に決着をつける権利はない」と。しかし、斯波は「この社会には穴が開いている。落ちたらはい上がれない」「かつての自分がしてほしかったことをした」と反論する斯波に大友は言葉を失うのでした。そして斯波は、介護殺人が毎年何人増えているかという数字で畳みかけるのです。(厚生労働省の統計<2006~2019>によると年間20~30件起きているそうです。)

 斯波が介護対象者を次々殺害していく原点となったのは、実父である正作(柄本明)における過酷な介護経験でした。介護のために就労もままらならず、父親の年金では家賃や光熱費で精一杯。次第に貯金を切り崩していって、最後はお米を購入する資金までも枯渇し、飢えをしのぐ日々に。思いあまって市役所に生活保護の申請に行っても、就労可能な斯波が介助している限り、生活能力があると認定されて門前払いを喰らってしまいます。もう親子揃って飢え死にを覚悟せざるを得なくなったとき、正気を取り戻した正作から、自分を殺してくれと嘱託されたのでした。
 このときの殺害方法がバレずにすんだことが、後々の連続殺人につながっていったのです。

 大友が真相に迫る過程は、なかなかスリリング。しかし映画の主眼は斯波が犯行を認めてからの、大友との議論にありました。予告編では単なる殺人鬼にしか見えなかった斯波でした。大友の主張の方が当然だと思いました。けれども物語が進み、斯波が体験してきた介護の現実は、行政も宗教も救いようもない過酷なものでした。そんな現実を見せられると、斯波の主張する「殺害が救いなんだ」という主張に、すっかり共感してしまったのです。

 トドメのひと言は、作品の冒頭に表示される「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」 (マタイによる福音書 第七章 十二節)という聖書の言葉でした。
 キリスト教信者でなくとも、この言葉は耳にしたことがあることでしょう。他者に愛を求めるのではなく、みずからが愛を与えなさい。この考えはキリスト教に限らず、他の宗教でも根幹になっていることから「黄金律(ゴールデン・ルール)」と呼称されています。 斯波はクリスチャンではなかったが、どうやら「黄金律」の部分を繰り返し読み返していたようなのです。そして斯波が思ったように、もし「人にしてもらいたいと思うこと」が、正作が語ったように殺してくれ、自分を苦しみから解放してくれと懇願されたとき、「人にしなさい」と殺してしまうことがどうなのか、わたしの中の宗教観が混乱してしまいました。
 もちろん殺人は決してあってはならない行為ですが、何が正しくて何が悪いのかは、その時、その状況にならなければ判断できないと考えさせれたのです。

 ただ本作は、観客それぞれの置かれている状況によって、2人の議論は違って見えるかもしれません。毎日、高齢者を相手にしている家族や介護スタッフ、親を施設に預けた家族、近い将来介護する身、あるいは介護される身になるであろう中高年、少子高齢化社会を想像する若者たち…。斯波は、介護現場の厳しさとは無縁の人たちを「安全地帯」にいると言いいますが、そこにいるかいないかでも、違うことでしょう。

 ただ、誰もが受け止めざるを得ないのは、過酷な現実から逃れられない人たちがいるということ。映画は、見終わった観客にずしりと重い手応えを残すことでしょう。
 映画では、小説とは異なる大友の背景が描き込まれ、彼女が斯波に重なって見えてくるのです。いやそれ以上に、自分の母親を多忙な自分の都合に合わせて、老人ホームに押し込めていた大友は、斯波の言葉によって、罪悪感を感じ始めて、追い込まれていくのでした。まさに善人と悪人が逆転する悪人正機説を地で行く作品だったのです。
 接見の場面での前田哲監督の演出も、その狙いと一致する。松山と長澤は、丹念に役を演じています。微細な心理をリアルに表現し、何度も熱演に息をのみました。特にあの斯波の超絶したキャラクターは、作品ごとに役になりきる、松山ケンイチでしか演じられないものだと言えるでしょう。来年の日本アカデミー賞を総ナメにする傑作だと断言します。

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流山の小地蔵

5.0かつてなく犯人の言い分が分かる

2023年3月26日
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2023年劇場鑑賞69本目。
40人以上殺した介護士の話。
大体こういう犯人の言う事には何かしらの身勝手な独善的な部分があって、やはり受け入れがたい、となるのですが、今回の犯人の主張にどうしても反論しきれない自分がいます。両親が先に亡くなり、寝たきりの祖母がいたのですが、介護は全部同居していた弟がしていたので、いわゆる自分も安全地帯にいた訳です。未だに仕事に向かっている途中の、弟からの「おばあちゃん、死んだ」という電話が耳から離れないのを思い出しながら観ていました。

途中から犯人のやり切れない気持ちが痛いほど分かって涙が泊まりませんでした。

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ガゾーサ

3.5介護という内容に

2023年3月25日
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介護という内容に親の事と同時に将来の自分の姿を考えさせられた。
避けたいけど避けられない問題。

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Nori