ロストケアのレビュー・感想・評価
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相手への愛ゆえに追い詰められてしまう"介護"という名の底無し沼... 親族介護を題材に身近な滅私奉公の現存とその是非を突きつける社会派映画!!
とある地方の町で起こった介護職員の関係する殺人事件と、そこから偶発的に明らかになった件のデイケアセンターのサービスを受けていた被介護老人達の死の真相を巡るショッキングサスペンス。
渦中の犯人を至極真っ当な生命倫理の観点から断罪する主人公ながら、愛情を込めるがゆえに自分も相手も追い込んでしまう親族介護のどうしようもない皮肉を孕んだ顔と、自らの振りかざす正論が社会の同調圧力の一片となって介護現場を追い詰めている厳然たる構造と対峙することとなります。
"介護"という誰しもが人生の何処かのステージで直面するテーマゆえに対岸の火事とは見做せない性急さがあり、犯人が如何にして"喪失の介護"を奉じるに到ったかの人生遍歴を追うミステリーとしても大変見応えの有る一本でした。
常に適度な距離感を保ち得ないと知らずの内に彼我双方に不幸を招いてしまう介護というものの難しさと、それが万人に何かの切っ掛けで降りかかり得るという現実にぐうの音も出ないのが正直なところです。
そしてそれを考えれば、普段の生活の中で目にする様々な形の介護現場に対して"かくあるべき"という先入観の眼差しを向けることが既に静かな暴力かもしれない、という気付きを得る意味でも意義深い一本だと感じました。
あなたも傍観者から当事者へ
介護疲れの人達を「救う」ためにご老人を殺すことは正義なのか。
安全なところからこの問題の傍観者として検事の長澤まさみ。社会の穴からこの問題の当事者として介護士の松山ケンイチ。二人が対峙するシーンがこの映画の最大の見どころです。
信念をもって人々を「救った」と理路整然と主張する松山に対し、長澤まさみは感情をもって社会正義を説いていきます。しかし、殺人者の境遇を聞くにつれ、長澤まさみの正義は徐々に揺らいでいき、最後は間接的ですが、当事者として犯人に向かいあう場面がクライマックスです。
誰もが多かれ少なかれこれから経験することや経験したことがある介護問題。その裏側にある貧困問題。脆弱な社会のセーフティネット。
ところどころで「え?」っていう設定(事件をきっかけに風俗嬢に堕ちる後輩等)はあるものの、この映画を通していろいろ話してみてもいいかもしれませんね。
最後に。
痛々しくリアルで。柄本明の演技は圧巻の一言!
「穴」をどれだけ狭く、深さを浅くすることができるのか
【社会派】★★★★★(メインは介護だが、それ以外も小出しに表現)
【構 成】★★★★★(場面転換が素晴らしい)
全日本国民に見せるべきかと、特に子供に(子供には見せたくない派が多そうだなぁ…)。
ここまで脚本しっかりして真面目な映画なら、主人公を半白髪(ビジュアル派)じゃなくストレスで禿げ上がった容姿にしても良かったのでは?と言ったら「それはだめ」と苦笑される。そうか…ダメなのか。
現実だと、狭いコミュニティ(映画だとデイケア)ではなく広範囲のSNS上の「救い」委託とかで微塵も足が残らないような「救済」とかが行われているんじゃないかなぁと想像してしまうほど。
この社会問題はどんな世代も他人ごとではないし……
長生きか否かよりも自身の身の回りのクオリティオブライフ()に一喜一憂し、我先に「呆け」を遠ざけよと脳アンチエイジングに飛びつかざるを得ない世代が大半を占める現代。
それこそ
○十年後に「見たくない現実」に囲まれても「見ることができる現実」として社会全体で受け入れることが可能な社会とは何かを考えさせられる一作。
ぎゃん泣き
もう人ごとでは無い!
この先もっと大きな問題になるであろう介護のお話
本作品では、犯人の介護士と検事の真っ向からの正義と救いの事が描かれているが犯人の思想など関係ないのだ
今の法律では如何なる理由があっても殺せば殺人罪なのだから
問題なのは介護にかかわるする側される側を誰がどのようにケアしてくれるのか
行政、民間etc… 誰に何をどのように相談すればいいのだろうか
殺すことが救いなら地獄を見る前に救ってやれって
しかし先のことや他者のホントの気持ちなど誰にも分からない
私の親のこともきちんと考えなければ、人に任せっきりで矢面に全然立ってない
腹が立つほど身につまされた作品でありました。
追記
医療が進み人の命も健康不健康どちらでも「長生き」出来る時代がこの先も続いていくでしょう
長生きとは、どこまでしたらいいのだろうか?
昔は不老不死が題材の映画などがありましたが今はそんなものない!
もうそこまで長生きしたいと思うさわなくなったのでしょうかね、老人の時が長くなることのリスクが恐ろしいですからね
例えば医者が病気で瀕死の状態を救っても家族から冷たい目で見られるような事もとっくに起こっているのでしょうね
本人が「死にたい」と言おうが「死にたくない」と言おうがお構いなしに医者は命を救わなければならない
救って家族に地獄をあたえる
とても難しいです
改めて映画『PLAN75』が重く深い作品なのだと思えてしまう
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」 マタイによる福音書 7章12節
松山ケンイチと長澤まさみの丁々発止。人の死は誰のものなのか、と自問させられる。斯波の行為は犯罪である。しかし、道義的にはどうなのか。それで救われた人はいるのかいないのか。当事者はそれを知っても感謝するのか非難するのか。立場が異なる人の数だけ、答えがいくつもある難問。それでも殺人は決してダメだ、といいきれない虚しさ。
同じテーマを扱った小説「命の終わりを決めるとき」(朔立木)を思い出した。こちらは限りなく"尊厳死"という課題に寄った内容だった。映画にもなった。この先、生きていくとき、その"生"が、自分にとって、周りの家族にとって、けして好ましい状況だと思えないとき、死を選ぶことの難しさ。目の前にあるその"死"を決めるのは、本人なのか、家族なのか、事情をよく知る他人なのか。はたまた、偶然という名を借りた"神"なのか。
「人には、見えるものと見えないものがあるんじゃなくて、見たいものと見たくないものがあるんだなって。」と言っていた。信じたいものと、信じたくないものもある、と思った。この映画を、いま現在、"絆"という"呪縛"に縛られている人が観た時、はたしてどう感じるのだろうか。でも、そうやって自分の時間も感情も抑え込んで人のために働いている人たちは、一本の映画を観る余裕さえもないのかもしれない。
正義と悪の境界
家族との絆
今年は泣ける映画が沢山あるが、本作は群を抜いている。ラスト15分間、大号泣だった。悲しくて、辛すぎる。思い出しただけでも泣けるくらい、秀逸な演出と構成であった。胸が張り裂けそう...。
「ドクターデスの遺産」を思い出させる内容。
あの作品は映画こそ〈クソ作品〉であるが、小説はとても丁寧に描いており、深く考えさせられ見応えのある秀作だ。実は映画版では、柄本明が出演しているという、共通点があるのだけど...全然違う笑 「ドクターデスの遺産」は、生きることを苦しむ人々に安楽死という選択を与える、医師の話。延命治療が当たり前とされているこの国は、人に寄り添う心が何処か欠けている、そんなことを語る作品。そして、本作「ロストケア」は、親の介護で苦しむ人々に〈救い〉を与える、介護士の話。家族という絆が、家族をどれだけ苦しめているのか、ということを強く語る作品。
ドクターデスという医師はネットでの申し込み制、家族の了承があっての実行だったのに対し、本作の斯波という介護士は全て自分の判断、家族の承認一切無しでの実行であったため、少し倫理感が欠けている部分はある人物。快楽じみている。しかし、ドクターデスの場合だと、申し込むことに罪悪感を感じ、また今の刑法だと、共謀者として罪に問われる可能性もある。が、斯波の場合は、全ての事件を彼1人で行っているため、無論他の逮捕者が出ることもないし、身勝手な行動のあまり批判もあるだろうが、自然な形で苦しみから解き放たれ、救われる人も少なくないはず。
どちらが正しい行いをした正義なのか、というのは分かり得ない。だが、どちらも『この国は下を向かない。見えないんじゃなくて、見ない。』と訴えている。本作の斯波の犯行は、〈お父さんを返せ〉という言葉がある時点で、大きな罪に問われるのだけど、同時に〈救われたんです〉という言葉もあるため、100%間違いを犯したとは言いきれない。少なくとも、救いの手は差し出すことが出来た。
辛い思いをしている家族を楽にしてあげる。
これの、何処が悪いのだろうか。生きる権利があるなら、死ぬ権利があってもいいはず。特に本作は老人に焦点を当てた作品であったため、当人も自分のせいで家族が苦しんで欲しくない、と考えるはず。私がその立場に立ったら間違いなくそう思う。小説「ドクターデスの遺産」よりは、犯行に抜け目が多く、許されない行いだが、とてもリアリティがあって頭を抱えるほど考えさせられた。松山ケンイチと柄本明の演技力がお見事である。
感想と言うよりも解説が多くなってしまいました。
せっかくなので、原作も購入し、できれば改めてレビューに追記しようかなと。淡々と描いているために少しあっさりとした作りではあったけど、優れた演出で涙が止まらない、いい作品でした。ぜひ。
ズシっと重たく心に刺さる
観た方が良い映画!考えさせられる。
答えがない問い
斯波が言った『僕を死刑にするあなたは正しい。しかし、(苦しむ老人を送る)僕も正しい』という言葉がとても心に残っています。
裁判の前、斯波が殺したことによって、介護から開放されて、『救われた』と述べた遺族の姿が描かれました。
しかし、裁判の途中斯波を『人殺し』と叫ぶ遺族の姿も描かれました。
この映画は本当に中立的に物事を描いていて、どちらの正しさも思わず納得してしまいます。
映画を観終わった今ですらどちらが正しいのか明言出来ません。
斯波も大友検事も、より良い社会を理想としています。
そこは一緒です。だからこそ観ていてすごく胸が締め付けられました。
この映画を観て、自分の親、恋人の介護の可能性、未来を考えました。
恐らくこの映画を観たたくさんの人が同じように感じたと思います。
とてもいい映画でした。
松山ケンイチ、長澤まさみ、柄本明の血気迫る演技の拍手。
自分で介護をしたことある人には刺さる作品
安全基地にいるのか、穴の淵にいるのか
介護制度ができてから、ずいぶんと時間が経っているというのに。
制度の穴はすぐに開くんだ。
介護サービスを受けない、受けられない人にとっては、なんの意味もないんだ。
介護、まさに目の前にある現実。
いや、それよりも自分の行く末を考えさせられたか。
家族が誰か分からなくなっても、それでも生きていたいか?そう問われているような。
厳しい現実の日々、汚物を素手で握り、食べたことすら忘れてしまう親を看ていて、それでもいつまでも面倒をみるからと、言い切れるだろうか?たとえ安全基地にいたとしても、罪悪感は否めないのでは?
いつまでつづくんだろう?
この問いが浮かばない介護者がいるのだろうか。
どんなにがんばっても、「これでよかった」と思える介護があるのか。
あっという間の114分。
松山ケンイチの演技に拍手。
それにしても、今どき、あんな生活保護担当いるかな〜?あれは、制度の穴じゃない。人災としかいいようがないでしょ。
本年度の邦画ベストワン候補
介護と救いと絆、何が正しいのか
人にしてもらいたいと思うことは何でも、
あなたがたも人にしなさい。
穴に落ちた側と安全地帯にいる側。
目に見えるものと見えないものではなく、
見たいものと見たくないもの。
迷惑かけていいんだよ。
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色々考えたり、思い出したりして
涙なしには見られなかった。
私の母は、
認知症の祖母の介護で苦労しており、
祖母が亡くなった時、親戚の人から
楽になれるねと声をかけられていた。
そんな私の母は、突然の孤独死だった。
私は母を亡くした時、
これから親孝行したかったのにと
悲しみのどん底にいたが、
親戚のおばさんから、
私の母は、娘孝行した、
と言われたことを思い出した。
何が正解か分からないが、
母の娘で良かったと生前に伝えられた
ことは今も私の救いである。
ひとつじゃない正義の行方
●公式サイトからあらすじ
介護士でありながら、42人を殺めた殺人犯・斯波宗典に松山ケンイチ。その彼を裁こうとする検事・大友秀美に長澤まさみ。社会に絶望し、自らの信念に従って犯行を重ねる斯波と、法の名のもとに斯波を追い詰める大友の、互いの正義をかけた緊迫のバトルが繰り広げられる。
***
かつてドラえもんはこう言った。
「どっちも自分が正しいと思っているよ。戦争なんてそんなもんだよ」
本作は文字通り、松山ケンイチ演じる殺人犯・斯波と長澤まさみ演じる検事・大友のそれぞれの正義をかけた戦争である。だが、明らかに正義であるはずの大友の分がどうにも良くない。大友が正論を吐けば吐くほど、斯波の覚悟を決めた眼に吸い込まれていく。斯波の瞳の奥に、自らの両親の姿を見たであろう大友が静謐な検事室で声を荒げるシーンは印象的だ。
劣勢の大友にとって数少ない救いは、裁判官に促された斯波が朗々と自説を述べる場面で、傍聴席から戸田菜穂演じる被害者遺族が発した「人殺し!」の一言だろう。
検事がつけるバッジは、秋の冷たい霜と夏の烈しい日光という意味の「秋霜烈日」という四字熟語がモチーフになっており、転じて、厳正な検事の職務とその理想像を示しているという。
検事役の長澤まさみはいつもながら美しいのだが、本作ではその美貌やスタイルを殊更に際立たせるような演出は鳴りを潜めた。赤いマフラーくらい。むしろ、年相応の皺やありきたりなパンツスーツなどで、彼女自身の年輪をそのまま魅せていく映像を用いて、ラストの「検事の担うべき厳正」に収まりきらない、ひとりの娘としての情動に見事に収斂させた。
圧巻は柄本明である。
検事室でのやり取りが「それぞれの正義」の対峙であるなら、かれと斯波との日々は「それぞれの愛」の対峙であり、後の連続殺人に正義があったというある種の倒錯を生み出したのは、かれの圧倒的なリアリティに依るところが大きい。
大友がぼつりとこぼした、「この世の中には"見えるものと見えないもの”があるのではなく、“見たいものと見たくないもの”があるのだ」という台詞が、観客であるわたしたち居心地の悪さと共に問う。要所で出てくる折り鶴の多義性をじっくり考えてみたくなる良作である。
どちらも、自分に有りうる、現実!
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