ロストケアのレビュー・感想・評価
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見事な伏線
伏線の仕掛けがあまりにも見事な作品です。
本作の紹介文としては、「42人もの老人の命を奪い、その殺人を“救い”あるいは“介護”であると主張する連続殺人犯と、彼の罪を強く非難する検事の対決を描き、なぜ犯人は殺人を犯したのか、その真相に迫る社会派エンターテイメント。」とあり、深刻な社会問題を下地にしながら、そこに猟奇的殺人の謎を解くミステリー要素を盛り込んだサスペンスドラマと捉えられますが、私は全く異なる感想を抱きました。
巻頭の、長澤まさみ扮する大友検事が、孤独死した老人の暮らす部屋の現場を検証するシーン、このシーンの意味が巻末のシーンで解き明かされます。
この巻末シーン前のラスト30分、大友検事と松山ケンイチ扮する犯人の斯波の二人での、殆ど台詞のない寄せアップでの長回しが交互に続くシーン、演技派二人の面目躍如たる、息が出来ないほどの重く濃い空気が映画館内を覆い尽くしていました。
ここで長澤まさみの目が変わりました。それまで1時間半に亘りエネルギッシュな探求心と検事としての正義感に満ちて煌めき輝いていた目が、一気に澱んでどんよりと沈んだ目に一変します。
一方の松山ケンイチ。それまでの無感動で死んだ魚のような無気力な、まるで生気のない目が急に生き生きと輝き出します。
私には、この転換が、この瞬間には意味が分からず理解不能でしたが、このシーンに続く巻末の映像で、一気に氷解しました。
この映画の本質は、この二人の“目”の輝きの入れ替わりを伏線とした、瞑想ないしは夢の中の物語です。
本作は、明らかに大友検事目線でカメラは捉えて進行します。これは多くの方も共感されると思いますが、実はこの映画は、単に彼女目線で捉えただけではなく、斯波というシリアルキラーを触媒としつつ延々と2時間続けられた、彼女の、父親の死に対する悔恨に根差す壮大なモノローグだったということが、ラストに至って始めて明らかになりました。
実際に斯波という介護士による大量殺人があったかどうかは、本作にとって問題ではありません。あくまで大友検事の心の内の後悔と葛藤を、見事な伏線を張り巡らして描いた作品です。
これは偏に、緻密に練り尽くされた脚本の完成度の高さに基づくと思います。
松山ケンイチと長澤まさみの二人の対話劇は、濃密で重厚な舞台劇のようであり、ダイアローグドラマのような展開に、観客は上映中、終始スクリーンに熱中し没入していました。
とはいえ、上映中はその圧倒的重力に吸い寄せられながらも、一方で観終えた後に強い疲労感と脱力感が残る作品でした。
喪失の介護とは
介護保険制度はいつから始まったのか、調べてみたら2000年4月だった。一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯、認知症高齢者など介護を必要としている人が増えてきて社会問題として騒がれてきたのはそのころだったのかと今更ながら認識した。
介護福祉士という国家資格は1987年から存在するようなので、2000年というのはこの映画の舞台となっている訪問介護センターのような介護ビジネスが興隆していく節目となった年だろう。そして、それから20年以上経った今、高齢化率はますます加速化して、介護ビジネスも年々市場規模を拡大している。もはや介護問題は国民一人一人誰にとっても他人事ではなくなったといえる。
「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と予言者である。」
(マタイによる福音書)
これは介護士が信条としている言葉であろうことは想像できるが、営業系の仕事に携わっている私でさえも戒めにしている有名な聖書の一節なので、まさか人を殺す動機の言葉になるとは思ってもみなかった。
「殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。」「僕がやったことは介護です。」「喪失の介護、ロスト・ケアです。」
介護で苦しむのは、介護される本人とその家族である。認知症の場合、本人は一時的に症状が落ち着いた時に、自分自身への怒りと嘆きを吐露する一方、家族は症状が進みだんだんと壊れていく父や母を見るのがつらくなる。介護現場はこれ以上どう頑張って何をすれば正解なのかわからないという状況に追い込まれる。
「絆は呪縛であり、誰も救うことができない呪縛から助けるのが、自分に与えられた役割だ。」
自分の父や母には、明らかに家族の「絆」があり、それは決して切れるものではない。斯波はその呪縛から家族を解放するために行動を起こしたと主張する。
斯波の起こした行動を正しく審判できる人間はいないと思うが、介護される人を尊厳のあるうちに見送り、家族をその絆が理解できるうちに見送らせたとはいえるかもしれない。
足立由紀のその後は本当にいらない(激怒)
2023年映画館鑑賞24作品目
5月4日(木)ムービーオンやまがた
1800円
監督と脚本は『パコダテ人』『パローレ』『ブタがいた教室』『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『老後の資金がありません!』の前田哲
脚本は他に『小さき勇者たち〜ガメラ〜』『ストロベリーナイト』『四月は君の嘘』の龍居由佳里
救済と称して42人の老人を殺害したヘルパーとそれを許さない検事との対立
サスペンスとかミステリーというより社会派ヒューマンドラマ
親子愛がテーマ
10年前の小説なので訪問介護とか家族の介護とか今の現状とはだいぶ違うだろう
それを踏まえて前田監督も龍居さんもこの映画を作ったんだろうか
この映画はあくまでフィクションでありドキュメンタリーではないので観客を楽しませるため誇張も多々あるだろう
多くの人々に共感を得るためには竹を割ったようなわかりやすさが求められる
それでも多くの人々が考えさせられたのならいいだろうだが考えさせられたから何ができる
所詮多くはデモ行進したりネットで政府を批判したり自民党に票を入れた奴らは全員ネトウヨだと詰るのがオチだろう
まさか俺も私もとニコチン注射で救世主になろうとコピーキャットやらかす人が続出しないだろう
意外にも松山ケンイチ長澤まさみ初共演
取り調べの2人のやり取りが良い
冷徹な犯罪者と熱すぎる検事
検事があんなに感情的になるのはいかがなものかと思うがこれは娯楽映画だしまあいいだろう
ただちょっと声が大きすぎる箇所は一つあった
シアター全体が大きく響いた感じ
これが映画館の魅力でもある
スマホやタブレットやDVDにはこれがない
そんな2人よりも凄かったのは柄本明の怪演
今まで見た柄本明の中でダントツで最高の芝居
これなら2人の息子に毎回ダメ出ししても説得力あるわ
ずんのやすも充分場に溶け込んでいた
ずんの飯尾が役者で高く評価され相方のやすのほうはどうかと思ったが少なくとも悪くはなかった
カンコンキンシアターで鍛えられたのかな
残念なのは2点ある
裁判所の戸田菜穂が突然「人殺し!」などと叫んで退場される場面
あまりにも唐突すぎた
そこまで至る場面がカットされたのか初めからないのかわからないがそれならこれもバッサリとカットしてほしい
中にはこういう遺族もいるんだよと斯波宗典に共感している人たちに冷静になって考えてみろよと冷や水をかけたのだろうがそれならもっと丁寧な作り方をしなければ存在そのものが大きなお世話だし野暮というもの
もう1点は憧れの先輩ヘルパーに裏切られショックを受けて新人ヘルパー足立由紀はセンターを辞めるわけだがその後に自棄のやん八で風俗嬢になるくだりは絶対にいらない
猪口真理子がホワイトボードから磁石付きのネームを外す場面だけでいいよ
たしかに世の中には稀に由紀のような女はいるかもしれない
だとしてもこれは絶対にいらない
端役だし
観客に想像させてよ
興醒めした
あまりにも突飛で尚且つ男性的な安易な発想
前田哲監督を鼻で笑ったが同時にむかついた
本心は女子を小馬鹿にしてんじゃないの?
俺は男だけどちょっと軽蔑するな前田哲監督
女の脚本家は猛烈に反対するべきだったしプロデューサーも同罪
加藤菜津の事務所からなんでもいいからもっと出番を増やしてと泣いて頼まれたのだろうか
実情がわかれば評価も多少変わってくるが
AKIRAって映画評論ブロガーは好意的に受け止めているようだが俺は絶対にダメだね
現実逃避?馬鹿げてる
売れっ子監督のようだけど一寸先は闇だよ
映画監督がそっちの穴に堕ちたら何かとうるせー今の時代いくらカネを積んでも手を差し伸べてくれる人はなかなかいないよ
この二つのシーンがカットされていたら星5だったのに惜しい
とても残念
エンディングテーマの森山直太朗の美声が良い
宮城県も岩手県も上映期間が終了したためドライブついでに久々に山形まで出向いたがそれだけの甲斐がある傑作ではある
まだ観てない方で比較的近くで上映している映画館があるなら是非そちらで観てほしい
タブレットでいいよとか1800円も払えないよとか観客ガチャとか嫌だよとかしょうもないことほざかないでさ
配役
老人訪問介護センターのヘルパーで殺人犯の斯波宗典に松山ケンイチ
検事の大友秀美に長澤まさみ
大友検事を補佐する事務官の椎名幸太に鈴鹿央士
介護老人の娘の羽村洋子に坂井真紀
洋子とは別の介護老人の娘の梅田美絵に戸田菜穂
老人訪問介護センターの先輩ヘルパーの猪口真理子に峯村リエ
老人訪問介護センターの新人ヘルパーの足立由紀に加藤菜津
洋子と親密な関係になる春山登にずんのやす
大友検事の直属の上司にあたる検事正の柊誠一郎に岩谷健司
老人訪問介護センターのセンター長の団元晴に井上肇
大友検事からの取り調べの最中にムショ生活を懇願する万引き犯の川内タエに綾戸智恵
警部補の沢登保志に梶原善
秀美の母の大友加代に藤田弓子
宗典の父の斯波正作に柄本明
善悪の違いとは
見たいものと見たくないもの
本作では、反射物(鏡や机、ガラスなど)を用いた人物描写が多用されているが、これは劇中で大友(長澤まさみ)が語る「見たいものと見たくないもの」の象徴である。
斯波(松山ケンイチ)は自身の経験から、見たくないものに目を向け、殺人を「救済」と捉えた独自の正義を貫く。一方で大友は、法の観点から斯波の行為を殺人と捉えながらも、斯波の思想に耳を傾け吟味している。
その結果、大友は見たくないものであった父や母との関係性を見つめ直し、自分なりの答えを見つける。そして斯波は、いつしか見たくないものを見続けるあまり、人を失う辛さを見ていなかったことに気がつく。つまり、それぞれは表裏一体であり、白黒つけられるものではない。その点に言及するのが、羽村(坂井真紀)である。
羽村は作中で唯一、斯波に救われたと語り、梅田(戸田菜穂)とは対照的描かれている。特に、終盤での春山(やす)との会話の中で、「人は人に迷惑かけ合うもの」だと話しており、この言葉に表裏一体への理解が表れている。その上で、殺人の否定と救済の恩恵を提示し、本作の結びとして位置付けられている。
登場人物それぞれの気持ちが よく解る。
原作未読 故えに 予告編を頼りに
本作はミステリー的要素が多々ある映画だと想像して鑑賞しましたが、社会派映画でした。
「人の(両親の)人生の最後を一緒に看取る」という事は、
大変な事で、安易な事ではない。
お金は大してかからないが、"自分の時間"以外にも多くの事や人間関係、仕事。。。それ以外にも自分のプライベートの多々を犠牲にする事にもなります。
自分の人生の"ある期間"すべてを占めてしまう事です。
しかし僕達はロボットでもないので、見送り介護が自分の生活の中心に成ってしまう事を負担に感じてしまう事も当然あります。
それが「人としての是非なのか」と改めて考えてしまう映画でした。
長澤まさみさんは良い女優になりました。
この映画を観たら、看取られる側から描いた映画「ファーザー」と併せて観る事をすすめる。
終活してぽっくり死にたい
長澤まさみちゃんが見たくて何も知らずに鑑賞。え。思ったより重かった。。2日前にMER観て「死者ゼロ!」良しっっ!ってやってたのに(╹◡╹)
大友(長澤まさみちゃん)検事だし加代さん(藤田さん)あんな高級老人ホーム入れるよね。欺波(松山さん)介護士で安月給だよね。あの白髪はやり過ぎだけども、勝ち組負け組の話しかな?って思ったら。それにとどまらず。。。加代さん女手一つで保険のセールスでお金貯めて自分で入った言ってたけど、どんだけ稼いだんよw娘も検事にしてるしwって、ちょっとふざけないと触れるのがしんどいです。。
私が父子家庭で育ち、実妹は少しハンデがあり信じられない事をしでかすので疎遠気味です。わかっていても続くと怒りが抑えられません。そして初めての妊娠中に義母の介護、看取りを経験しました。家族、絆、呪縛、見たいもの、見たくないもの。。突き刺さるワードが多く辛いシーンが続きます。大友、欺波の掛け合いもお涙頂戴的な感じでなかったので、フィクションを見ているかの様でした。正解がわかりません。。殺人は絶対だめなんだけど。。何なら欺波間違ってないのかも。と思ったり。。でも裁判で戸田さんが叫んだとこで、心が少し戻りました。介護中は死んでくれって思ったかも。死んでしまったけどホッとしたかも。でもやっぱり他人に殺されたっていう事実には怒る感情。人間的。一方で酒井さん。介護から解き放たれて安らぐ時間をもてた。現実味がある。やすナイス^ ^
自分が将来寝たきりとかボケたら安楽死したいなって思うけど(出来ないけど)もし父ならば、、1日でも長く生きて欲しい!と思う矛盾。もうそれは本人がどう思うかじゃなくて自分の気持ちが優先になってしまうと思う。正作さん(柄本さん)は殺してくれって頼むけど。わかるけど!欺波の事を思ってだし、このままじゃ共倒れ確実だし、自分もはっきりした意識のまま死にたい。って。わかるけど!子供にその選択をさせないでおくれよ泣泣 と、もう私では正解はわかりません。。
そんな正作さん演じる柄本さん!最近は息子さん達大活躍だけど、父ここにあり!で見事でした!足立由紀さん(加藤さん)はなぜそーなったw
_φ(・_・痛いほどわかる
小生も父親の面倒を見ていた時期があります。介護というより介護費用を月数十万払っていた時期があり、これがいつまで続くんだろうかと不安な日を過ごした覚えがあります。
辛かった、、、毎月手取りの半分が消えていくのですよ。父は呆気なく亡くなりましたが、死んだ時悲しい気持ちになりましたが、どこかホッとしたのを今でも覚えています。
この恥ずかし思いを兄弟に話したらみんなそうだったようで、今では笑い話になっています。この映画の肝は誰かにその思いを話すこと。話すことでくだらない考えを昇華させること。ですが誰かに助けを求めることができない人がたくさんいるのでしょう。そして嘱託殺人。悪循環の始まり。なんとかならないですかね、、、、。
自分の未来を考えさせられる映画
人生の「盛り」は、コドモが小さくて親も若い頃
人生の「盛り」は、コドモが小さくて親も若い頃。自分しみじみ、実感があります。
斯波の父が昔のアルバムを見たがる、大友の孤独死した父がそばにおいていたのは若い自分と小さい娘が写った写真。老いて壊れていく自分を止めることができない老親が心の慰めにするのはその頃の幸せな記憶に浸ることだ。
世の中にはいろいろな親子の形があって、毒親なのに見捨てることができなかったり、親を愛するがゆえに自分の人生を潰さざるを得なかったり。
「絆は呪縛」その通りと思いました。絆があるがゆえに自分を潰して仕えないといけない羽目になる。
もっとドライに、介護する側される側がお互いの幸せのために、介護を家庭の外の他者に託すことはできないのだろうか。介護地獄と生活苦がいちどに押し寄せたら、いっそのこと、というところに追い込まれてしまうのも無理はない。行政の支援はどうなんだろうか。
検事・大友の言葉よりも斯波の言葉のほうが説得力がある。というより、大友の言葉が屁理屈に聞こえることが多い。クリスチャンとして聖書を学んだ大友よりも、読みこんだだけの斯波のほうが聖書の教えの本質を理解しているんじゃないか、という気がする。
それにしても検事が直接事件捜査するもんなんだろうか
前半は見たのを後悔した
仕事で高齢の方と接する機会が多かったころ「老いる」ことが、本当に怖かった。まだまだお元気な方ばかりだったのに、どうしてこんなことが出来ないのだろう、どうしてこんな簡単なことがわからないのだろうと、不思議だったしこれが老いかと恐ろしく思っていました。この映画を見始めて、すぐに見なければよかったと後悔しましたが、徐々にひたすらに映画の世界に没頭しました。自分を愛して育ててくれた親を、介護の辛さに憎んで死んでほしいとまで思ってしまう、自分を愛してくれなかった親を捨てられず人生を破滅させられる無念さ、人生の過酷さを目の当たりにして苦しくなります。
柄本明さんの演技は圧巻でしたね。なんとか聞き取れるギリギリの発声に、まるで自分の親の訴えを聞き取ろうかとするように、全身全霊で耳を傾けていました。自分だったらどうするだろうか、斯波のような選択をするのだろうかと、ずっと考えていました。
大友が抱える罪悪感は理解できますが、貧困の末に自分の親を直接手にかけた斯波と、幼い自分と母親を捨てた父親を見捨てたと罪悪感を持ち続ける大友。同じか?の疑問が最後まで消えませんでした。
洋子さんと春山さんの熟年カップルの幸せを祈ったり、やっぱり猪口さんは頼りになるなぁとホッとする場面もあり、重いだけの映画ではありませんでした。鑑賞後は、意外とすっきりした気持ちになったのは不思議でした。
メッセージは響くが、映画としてはひねりがない
これをみて世の中日本の未来を考えるべき
タイトルなし
役者さんのいい演技に感情移入してジーンときても、シーンごとにブツッ、ブツッと感情が切られてしまう感じがして、シーンの繋がりがあまり良くないように思った。
また、物語の展開が派手ではないので、役者が一対一で対峙するシーンも多いのだが、カメラが不必要に移動したり、ガラスにうつった顔をアップで長くとらえてみたりと、ノイズに感じてしまう演出が多かった。先日鑑賞した「ザ.ホエール」と比べてしまったが、あちらは余計なことをしていなかったので、最後まで俳優の演技に浸れたと思う。
最後は救いで終わることも期待したが、今後自分も経験するであろう親の介護や、自分自身が子供に介護されることを思うと、ザホエールのように自分で決着をつけて浮き上がってThe Endというわけにはいかないのだなとしみじみ感じた。
ずんのやすがカッコよく見える
本作は長澤まさみ演じる検事大友と松山ケンイチ演じる殺人犯斯波の
「尊厳」を生に見出すか死に見出すかを問う会話劇。
哲学的な会話劇を補完する画の撮り方が実に見事だと感じた。
対立する2人の人生のバックボーンは検事大友の仕事場と殺人犯斯波の自室によって
顕著に表れている。
そして、皮肉にも数多くの書物に囲まれた検事大友の言葉より、ほとんど物がない殺人犯斯波の言葉の方が説得力に富んでいる。
「経験者」が語る言葉の重さはどんな規範も倫理も陳腐なものに感じる。
あえて求刑や判決のシーンを入れなかったのは私たちに考えさせるためだろう。
そして、私自身が斯波の定義する「安全地帯」から「抜け出せない穴」に
落ちた時にどう思考し、どう行動するのか?
正直今の自分には想像もできない。
少なくとも分かることは
「自分は今とても疲れているということ」と「酔っぱらって気持ちよさそうに寝ている父の顔」と
そして、「ずんのやすがかっこいい」ということだけだ。
検察が正しいのかわからなくなる
松山VS長澤
重厚過ぎるテーマ。
演技のガチンコ対決。
前半は謎解きサスペンス。
後半は法廷人間ドラマ。
全体として変わり身キャラが多い。
斯波(演:松山)はもちろん、所長や、
見習いの女のコ、足立由紀(演:加藤菜津)など、
よりにも風俗て(笑)
まぁ、それだけ壊れてしまった…とも取れるが。
被害者の娘、梅田美絵(演:戸田菜穂)も、
「あんないい人が…⁉」みたいな感じだったのに、
判決時には「人殺し!」と気も狂わんばかりに取り乱していたのは何故か?何があった?
同じ被害者の娘の羽村洋子(演:坂井真紀)との対比にしてるのかもしれないが。
最後の面会の後、斯波の様子をちょっと描いて欲しかったところ。
ある意味、柄本劇場(笑)
ストレスでハゲないタイプ
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