ロストケアのレビュー・感想・評価
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クジャクのダンスから
今放送されている「クジャクのダンス、誰が見た?」で初めて松山ケンイチさんの演技を見て、毎回その演技の凄みとその居姿にかっこよとなり、キュンキュンして、この方の作品を観てみたいとロストケアに辿り着きました。
ちなみに鈴鹿央士さんのファンでもあります。
確かに何故、この作品が評価されなかったのかと思いましたし、いつもなら動画の途中で飽きちゃったりして、また後日観ようとなるのに、全くそう思わないほど、内容があまりにリアルでした。とても人ごととは思えないと誰しもが思うのではないだろうか…。
それと、何故柄本明さんの演技が評価されないのか?色んな映画にメインではないにしろ、いつもその演技力に圧倒されるのに…不思議だ。
実際の事件もあった事だし、新し味は感じないんだけども
老人問題
介護問題
十数年、数十年 前から言われてきた社会問題。
老人病院の実態は 目にすれば 本当におぞましい。
実の父は そういった類の病院で息を引き取った。
実家の書店店舗と住宅を銀行に全て差し出して 私は故郷を失った。
夫の実家が同じ地方だったので その実感は今もほぼないが実際はそうである。
その病院は そこで働く看護師介護士が天使に見えるほど
壁やカーテンに糞尿の匂いが染み付いていた。
決して不潔という事ではないのに、その匂いは 病院の周りに引力に縛られた大気圏のように存在していた。
その病院には お世話になってる特養ホームから運ばれた。
ひと月程度の入院のあと 意識がなくなり それでもしばらく
痙攣を伴う危篤状態を数日経て
明け方に 一旦帰宅しようと病院から自宅に戻る首都高の上で 息を引き取ったと連絡を受けた。
自分の故郷でない場所で死んでしまった事が 私としては一番不憫に思えた。
父は 私を産んだ母とは 離婚していた。
そして 私を含む3人姉弟を 無理矢理 母から奪って
新しい母と暮らし、そしてその母と再婚し
私には もう一人妹が増えた。
誰しも というか それぞれ 人には
それなりの 家族の 関係があり 傷があり 痛みがあり
その痛みからは 逃れる事などできないので
受容するのだ。
殺してしまわなければならないような成り行きに
なるかならないかは 本当に 運 なのかもしれないと思う事がある。
殺す事は もちろん 出来ないんだけど
誰もが 我が家のように 出来たばかりの 新築特養ホームに入れるとは限らない。
今でも あの時 入れる手続きをしてくれた 区役所の職員には こういう作品を見ればなおさらの事
感謝という言葉だけでは 全くもって不十分なくらいの感謝をしているのである。
他人事で 切り捨てられない問題だから
だから
あの裁判のラストで遺族が叫ぶ
「返して!!!」 の言葉には ものすごく違和感を持ったのである。
ただただ 殺人を正当化するわけにはいかないから ってだけの詭弁にしか見えなかった。
介護職から見たロストケア
作品についての感想や演技についての素晴らしさは他の方からも散見されるので、介護職13年の自分から見た感想を書きたいと思う。
よく見ると本作は実に生々しく自宅介護の現実が描かれている。
散乱したゴミ、薄汚れた部屋、糞尿をまき散らかす父、同じことを繰り返し話す母、異食、暴言、暴力。
作品のそこかしこに介護の残酷さが見事にちりばめられている。
私は認知症対応型通所という認知症しか通えないデイサービスで働いてる。
利用者すべての人が認知症である。
デイサービスという仕事だからこそ分かる現実がそこにはある。
なぜなら必ず家に送迎をするからである。
そこでは利用者の状態だけでなく家族の接し方から家の状態まで見て取れる。
はっきりと言おう。まさに生き地獄である。
自分の時間や生活を削って手厚い介護をしている人はほんの一握りの富裕層あるいは低所得者(生保)だけで、現実は残酷なものである。
マツケンが演じる斯波は仕事を辞めて始めたアルバイトももならない状態になり、ついには父を殺めてしまう。
ここで少し介護に知識があれば介護サービスをなぜ使わなかったのか等と思うだろうが、使ったところでである。
デイサービスというものは早くて朝の9時前に迎えが来て、遅くても17時には送り出す。
早朝から親の身支度などを整えて自分の仕事の準備そしてどうかしたら子供の学校の準備も整えて、17時頃には家で待機しておかなければいけない。
これが認知症だと夜も眠れないこともしばしば起こる。
こんなホワイトカラーな規則正しい仕事が出来るのはほんの一部の人だけ。
現実的に考えてそんなことは不可能である。
これが柄本昭演じる斯波の父程度の認知症、身体の状態ならなおさらに無理である。
ホームヘルパーにしても短時間利用が原則で仕事に行っている間の9~10時間(残業なし)の間を看てくれる訳ではない。
気が狂いそうになると思う。実際に手厚い介護をしている家族ほど精神が蝕まれていく。
酷くなると同居している家族がいるのに3日前にセンターで着替えた衣服のまま、オムツのままという状態になる。
これはもう虐待である。しかし、そんなものはお構いなくデイサービスを利用する。
もうこの時点で家族も利用者も地獄の真っ只中である。
ここで介護サービスについて話そう。
介護サービスというのはまず居宅支援事業所のケアマネージャーが担当になり、介護者と本人の希望を踏まえた上で介護計画を作り、それに則って介護サービスを紹介して利用する。
ケアマネージャーは月に一度は利用者の元を訪れて担当者会議というものを行わなければいけない。
基本は利用者の自宅で、利用者の状態を踏まえてサービスの継続や変更などを確認する。
ここで何を言いたいのかと言うと、家の状態がどのようになっているかケアマネージャーは知っているという点である。
しかし現実では独居で糞尿にまみれた利用者を迎えに行くこともあれば、同居家族が居てもロクな身支度もされていないこともある。
それを知っているケアマネージャーも見て見ぬふりだ。
その理由の一つとしてお金の問題がある。最高3割負担である介護サービスは毎回病院に行っているようなもので、それを週に何回も利用出来る資金力が問われる。
さらに介護サービスは介護度によって月に使えるポイントみたいなものがあり、それを単位数という。
介護度が高いほど使える単位数が増えていく仕組みである。
寝たきりだと介護度は5になるので週に5~6回程度デイサービスの利用をが出来る。
しかし、認知症がどれだけ酷くても自分で歩いて食べれる人は介護度3が最高である。
だが正社員で働いていたら週に5回はデイサービスを利用しなければいけないが介護度3だと週に3~4回の利用までしか単位が足りず、あとは実費負担になる。
夕食付で延長出来る有料サービスもあるがこれも実費である。
よほどの高給取りか資産家じゃないとデイサービスを週5で利用して夕食までなんて出来ない。
そしてもっとも馬鹿げたなことに安楽死もないこの日本では生産性のない介護は家で行えというのが国の考えである。
自立支援という大義名分で自宅介護を推し進めているのである。
なのでケアマネージャーも自立支援を基本勧めてくる。
ここで個人的な見解だが正解を出すとしたら一つ。入所である。
負担額は割高になるが精神衛生上の事を考えると認知症は入居の一択。
とにかく一刻も早く地獄から抜け出たい人はまず精神科を受診させよう。
そこで正しい薬を出してもらい、入れるなら有料老人ホーム。
無理ならグループホームか老人福祉施設(特養)に入所させよう。
はっきり言うが入所施設は利用者にとって良い場所ではない。
認知症が悪化している状態だと扱いが酷いこともある。
それでもお互いの事を考えたら入所がベスト。
まさに穴の外の安全地帯に移動しましょう。
なぜ、私がこのようなことを言っているかというと、無理に自宅介護に拘って共倒れすることを危惧しているからだ。
斯波も言っていたがこの国の介護疲れによる殺人や無理心中は増加傾向である。
共倒れするくらいなら早期に入所させるのがお互いにとっても幸せである。
認知症は難病でもないのに、もっとも残酷で人に迷惑をかける病気だ。
もし自分が罹患したら自分でけじめをつけたいと私は強く思う。
我が子にそんな介護を強いたくないし、不自由なとこに入所までして生きながらえたくもない。
自分がどこに居て何をしているのか、自分の子供の事まで忘れてしまうのだから。。
どんな正義感の塊であっても、どんなに愛情深い人でも挫いてしまうのが認知症である。
少し想像してほしい。
自宅に居るのに「家に帰りたいんです」と間をおかずずっと話してくる両親を。
1時間でも地獄である。それが料理などしようものなら勝手に外に出ていくのである。
制止すると「何するのよ」と暴れて、泣いてくるのである。
本作はそんな地獄に警鐘を鳴らすとても良い作品だと思う。
どうか介護が地獄だと感じたらすぐに入所を考えて欲しい。
最悪の結果を招く前に。
リアルなお年ごろ
見る年齢によって映画の重さが変わってきそう。
俳優さんたちの名演技もあってリアルすぎて
明日の我が身を投影した。
単に[殺人犯=悪者]ではない現実社会を
切り取った、見えないところで起こっている
現実なのかもしれない。
やたらと鏡やガラスに映る大友(長澤まさみ)は
見えてる部分だけではない姿の現れだったか?
あの件を境に一気に白髪になった斯波(マツケン)
は無垢に救いと思って殺人を繰り返していたのか。
画面のあちらこちらに考えが張り巡らされていた。
働ける人がちゃんと働ける環境を
他人事ではない老人介護がテーマ
今や日本の最大の課題である超高齢社会の老人介護がテーマの映画。
お年寄りに優しく、介護士として真面目に働く松山ケンイチが実は陰で老人を殺害していた。それはその老人を介護している家族を守るためだと言い切る。過去に辛く悲しい認知症の父親に対する経験から来るものだったのだが。
ここに描かれている認知症の老人がかなり酷い。現実なんだろうけどこんな状態なら居なくなれば良いのにと思ってしまうのはわかる。意外にもそうでない人もいた。
被疑者松山ケンイチの担当検事が長澤まさみなのだが、彼女にもまた認知症の母がいる。被疑者と自分を重ね合わせ、対峙するシーンでは被疑者に煽られ感情的になるところがあるが、検事がこんなに声荒らげるか?と醒めてしまった。
色々と考えさせられる映画だった。
老人介護はしたくないな。。。
これはもっと評価されてもいい映画
重いテーマが問いかけてくる
在宅介護の過酷な現実
タイトルなし(ネタバレ)
お年寄りを殺した方がいいって言うのは
エゴでしかないかなと思ってしまい、
共感は全くできなかったです。
辛い過去があったのは分かるけど
だからといって殺していい理由はない。
長澤まさみと松山ケンイチは
本当に演技が上手くて大好きです♡
すばらしい演技と内容問題提議
俳優柄本明の苦悶の演技が強烈な印象
もっとも印象を受けたのは、俳優柄本明が苦悶の表情の中で「殺してくれ」と絞り出すような声で息子(松山ケンイチ)に告げる場面だ。この二人の間にある空気感こそ、この映画がテーマにしているものに違いないと思う。
お互いに疲れ果てている。父の介護のために仕事を辞め、生活基盤を失い、行政にも突き放され、社会との繋がりも次第に消えて絶望の穴に落ちる。終わりが見えない介護地獄の苦しみが伝わってくる。また、当事者である父もかすかな意識の中で状況を理解しており、「もう、いいよ」という意思を発するのだろう。
おそらく、これと同様の事態がそれぞれの事件現場で存在して、そのために彼は「ロストケア」を行った。淡々と。しかし、たとえ似たような状況があったとしても、結果の受け止め方はそれぞれに異なるということも作品で描かれていた。当然である。
映画は冒頭、孤独死の凄惨な現場検証の場面から始まった。これもかなりインパクトがあった。そして、最後の場面で家族に迷惑をかけまいとして、自ら高齢者施設に入った女性の寂しげな表情が映った。この冒頭と最後の事例は、この事件を立件した検事に関係する人間のものなのだが、全体として物語の作り方として面白いと思った。脚本が素晴らしい。
どこで最後を迎えるのか、家族の関わり方はどうあるべきなのか。最終的には当事者、家族が決めるべき問題なのだろうが、、それをサポートする社会的仕組みの充実を切に願う。
日本の課題
どうすればよかったか?
介護の問題は直接関わった経験がある方々と私のように直接関わったことはない者(映画の中の言い方で言えば安全地帯にいて穴に落ちなかった者)とでは感じ方は全く違うのだと思う。
だが、映画は父親に対する嘱託殺人も含め介護に苦しむ人々を「救った」と論ずる松山ケンイチ側にたつシーンが多く正解を見えにくくしているが、42人の老人を殺したことは大罪であり極刑以外に判断の方法はあり得ない。長澤まさみは自身の父親を見殺しにした事実に苛まれるがそれは罪ではない。母親に感謝し、しっかり寄り添っていけばよいのだと思う。
私は昨年から年金生活をしている。「敵」の長塚京三ではないが、僅かな年金と小遣い程度の配当では生活は賄えないので蓄えを取り崩し、それが尽きた時がXディだと思っている。
年金生活に入ると健康保険(任意継続でも国民健康保険でも)の支払い、前年の年収に対する住民税の支払い、介護保険料の増額やら蓄えを一気に持っていかれる。こんなんじゃXディは予定より早く来そうだ。映画でも柄本明の年金は月僅か7万円だし、働けなくなった松山ケンイチが生活保護を申請しても却下され、万引きした綾戸智恵は3食が食べれる刑務所に入れてくれと懇願する。これらは、今の日本の現実であり、自分で何とかしないと生きていくことすらままならない。
超高齢化社会を迎えている日本。政治も行政も明らかに行き詰まっている。
簡単にその解は見つからないのかもしれないが、変えれるのは政治とお金をまわす経済である。
真面目に生きてきて、何らかの形で日本を支えてきた人々が、年をとってもまともな生活をしていける。そんな当たり前の世の中にしてもらいたい。
介護の現実
認知機能が悪化した方たちは元に戻ることもなく、特に家族は大変な思いで介護している事も少なくない。
認知機能が低下すると、部屋で糞便を漏らし自分の便を触りあちこちに付け、色々な物を口に入れ、昼夜問わず独語や強いこだわりを見せて指示が入らない。
介護施設は入所するのも高額で、やむを得ず自宅療養を強いられ家族は疲弊していく。
終わりの見えない介護。「僕の殺人は救いだった」本人以外に家族も安堵が見えたのではないかと。
当の本人も死にたくても死ねない苦痛に苛まれている事もある。
穴に落ちない安全地帯にいる人が、正義を振りかざして非難出来る事では無いと思う。
安楽死が選択出来ると良いのにと思います。
60点
映画評価:60点
ずーんと、、
心が重くなりました。
人を殺すという事を
正当化する作品は数々ありますが、
そのどれもが幼稚で自分勝手な言い分が多かったし、全うな事を言われても
殺人を正当化できる訳がないと思っていました。
でも斯波の事は、
少し理解してしまいました。
安楽死が認められていない日本において、
老人と家族が目指せるのは互いに我慢する事のみ
その苦痛や苦労に
国が他人事を決め込む。
これはどこにでもある悩み。
幸い、私はまだ体験していないが
いずれはその順番が回ってくる。
温も愛もあるから、我慢は出来る。
だけど、苦しさが無くなる訳ではない。
時間も、体力も、精神も、金銭も無くなっていく。
本当に、本当に、辛い戦いだと思う。
命の終わりを選ぶ事は悪なのだろうか…?
だからといって、
斯波のやった事は正しい事ではない。
家族からの依頼があって初めて
闇安楽死として正当化されるのかもしれない
救われた人もいるだろうが、
今回の件もただの殺人です。
裁かれるべきだし、許せる事ではない。
だけど国が無責任なのは伝わった。
そういった、どうする事も出来ない事に切り込んだ勇気のある作品でした。
【2025.2.14観賞】
彼はなぜ42人を殺したのか
感想
松山ケンイチ、長澤まさみ、初共演の二人が入魂の演技で激突する社会派エンターテイメント。
第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」、「そして、バトンは渡された」の前田哲監督が映画化。
殺人犯VS検事 運命の激突ー。
自分はまだ安全地帯にいる側ですが穴の底を這う側を考えると観ていて苦しく辛かったです。
高齢化社会、介護を巡る事件と考えさせられる社会問題です。
綺麗事や正論では解決できない難しい問題です。
家族は絆にもなるし呪縛にもなる。
喪失の介護、ロストケアの斯波宗典は殺人者なのか救済者なのか…
個人的にはちょっと斯波肯定派です笑
松山ケンイチと長澤まさみのお互いの正義をかけた激突は見どころかと思います。
柄本明の脳梗塞で身体が不自由&認知症の演技は印象的すぎました。
※人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい マタイによる福音書7章12節
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