「何が「罪」で何が「救い」なのか。」ロストケア luna33さんの映画レビュー(感想・評価)
何が「罪」で何が「救い」なのか。
殺人を繰り返す斯波を「狂ってる」と言い切れない。
殺人を断罪する大友を「正しい」とも言い切れない。
まさにこれが本作の「闇深さ」なのではないだろうか。
斯波は人を殺したことを「救った」と表現した。
この言葉すらも僕は完全には否定し切れない。
大友は「あなたに殺す権利などない」と言い放つ。
この言葉さえも僕は完全には同意し切れない。
「救われた」と感謝する遺族もいる。
「人殺し!」と罵倒する遺族もいる。
どちらの気持ちも分かる。だから苦しい。
安全地帯からどんな正論を言っても心には刺さらない。
大友の主張だって何ひとつ間違ってはいない。
でも彼女の言葉は正論と言うより「きれい事」に聞こえる。
それがまた苦しくてたまらないのだ。
罪とは何なのか。救いとは何なのか。
その答えに正解はないし、あったとしても1つではない。
誰もが生きて欲しいし死んで欲しくない。
でも、生きてる方が地獄な状況も確かにある。
頭では分かってる。分かっているのだ。
でも誰もが納得する答えなど、どこにもない。
このやり切れなさをどう受け止めるか。
それぞれの人生観や死生観が試される作品だろう。
いつもありがとうございます。
中々核心に迫るレビューですね。
これが映画の力なのだと感じます。
殺された家族にも賛否が分かれます。
法廷で声を荒げた遺族
彼女の状況を、もしかしたら犯人は見誤った可能性もあります。
彼女は犯人が思うほど追い詰められていなかった可能性もあります。
しかしながら作品が描きたかったのはそこにはないと思います。
luna33さんがおっしゃったように、人それぞれ感じ方は変わるのでしょう。
その要となっているのが法律です。
真っ二つに切れば済む話ではないということでしょうか。
この作品を議論すれば、その行き先は法律になる気がします。
彼ら介護者が必要な家族に対する特別支援の決済について、陪審員のような制度で決めていくことがあってもいいように思います。
役所が対応できないことを、地方の第三者委員会で決めることで、取り残される人が減るように思います。