「思う事とした事は違う、衝撃のラストはどうしてこう成ったのか全国民で考えて欲しい!」ロストケア The silk skyさんの映画レビュー(感想・評価)
思う事とした事は違う、衝撃のラストはどうしてこう成ったのか全国民で考えて欲しい!
油断する 長雨冷える 花見かな
もう桜咲いてんだね。しかも 一気に。
でも 生憎雨で 空に晴れ間はナシ・・・
そんな天候の中、今日は「ロストケア」鑑賞です。
この映画は 喪失の介護 ”ロストケア” がテ-マ。
喪失の介護 について原作からは
~殺すことで彼らと彼らの家族を救いました。
僕がやっていたことは介護です。~とされている。
ズバリ、介護の末における安楽死(殺人)という問題を
この映画で取り扱っています。
私自身も主人公と同じような家族の病と介護経験はあり
そして最後を見送りました。
この映画の話は決して特別では無くて、今の現実社会に
起こっている事象を淡々と描いていると感じます。
実は観ていて、とうとうコノ手の作品を目にする時が
来たのかと思ったぐらいで、
話展開スジは大体読めておりました。
今作は 観てて非常に重いテ-マと感じます。
原作は2013年頃以前の独身男性と父親介護における
話筋ですので、それから10年。
今は介護における現場環境や保険適用範囲なども
少しづつ改善されてきたので、映画を観ていて
少し現状との違いを感じるかも知れません。
基本的にはサスペンスと言う位置づけなんでしょうけども
全くその色は薄めで、検事が数学を使って犯人を絞り出すも
登場人物の少なさより 最初から彼が犯人と言う事は
スグに断定されてしまいます。
その点では肩透かし的内容でしょう。
実父を苦難の介護の末に亡くしたのに、
自身が介護士となって41人もの自身の経験と同環境下の
要介護者を救ってあげたいと勘違いし、安楽死させるのは
誠に身勝手。
映画では余りこの殺害された家族等のクロ-ズアップな扱いが
されておらず各家庭の事情があまり良く分かりません。
41人という数字が浅く取り扱われて映ってしまってるのが残念。
今作は、主として犯人の斯波が何故こんなにも人の命を絶ったのか。その発端となった自身の父の介護と苦労して生きてきた内容に視点を置いて描かれています。
また彼を追い詰める検事 大友との介護生活環境の
対比描写があり、貧困は更なる悲劇を生む原点と
思わせる節を感じます。
まさに穴に落ちた者の世界と、そうでない者の世界です。
大友のラストの涙の告白で、斯波の今までの行いを分かった様に思わせるのですが全くその点が心に響いて来なくて 最も残念に感じた次第。
総合で★は3.5程度かなと思います。
(作品)
原作:葉真中顕氏
監督:前田哲氏
(MC)
・斯波宗典 主人公介護士:松山ケンイチさん
※会社を辞め父の介護をする。後に介護士に。
・斯波正作 主人公の父:柄本明さん
※脳梗塞、認知症発症、父子で暮らす。
・大友秀美 検事:長澤まさみさん
※実父の助け無視し死なせる。
・大友の母 介護施設にいる:藤田弓子さん
※早くに離婚し一人娘を立派に育てて施設へ自ら入る。
・椎名幸太 検事補佐:鈴鹿央士さん
※得意な数学を用い犯人を断定する。
・介護老人の家族:坂井真紀さん
※最後は犯人に感謝
・介護老人の家族:戸田菜穂さん
※最後は犯人を人殺しと罵る
(思った事)
・施設長が自信の借金を埋めるために、預かってる鍵で介護宅へ窃盗侵入の流れは非常に残念。有っては成らない事だと思う。ここは結構問題でゾッとした。
・斯波が犯人と分かって、慕っていたのに目標を失い介護職を辞めた若い女性が風俗?に転職しているのが何故と感じた。
あるTV番組で介護も風俗も人の接し方や仕事感覚が近いと話してる子がいたのが頭によぎった。
・結局 最後の裁判の行方はどうなったのか?分かんないまま。
・斯波が生活を追い込まれて 生活保護を受けに役所へ。
自身が働ける事を理由に断られるのだが、そこの点が本当に憤る。
父と二人で暮らしてるから生活保護受けられない。独居にして生活保護を受けさせて介護保険適用したらという声があったけど。
年間20万件ほど毎年増えてるこの現場で皆が同じ事をしたらどうなるのさ?
そんな事まかり通ると思ってる?どっかが破綻するでしょ。
真面目に働いて税金入れてる若者からしたら 何かおかしくね?って声でそう。
この部分の問題提起したことは 良い場面だったと感じます。
・検事の母が良い施設に入れている点。
現在そんなに簡単に施設には入れないと思う。
毎月高額で受け入れている所はスグに入れられるが、そんなのが利用できる方は所得が高い人と思うね。
入所の順番もケアマネ次第でもあるし。自身も入所に関しては不公平を受けることは多々あった。
家族が面会に来てる時は丁寧な対応をしてくれる施設は多かったと思う。だけど帰った後どんな対応をされているのか・・・認知症の親を預けると気になる事があったのも確かで。何も文句は言えない家族と、嫌なら家で介護をという板挟みに陥る人もいると思う。
・大友の既に離ればなれの実父からの急に電話がくる訳無いだろうし、見捨てておいて 死んでから反省とか・・・いらんね そんな思いわ と感じた。
・二人の生活の途方の果てに、斯波が父を死なす場面。
親の介護をしてきた自分は観ていてやるせない思いがしたな。
実の所 事情はメッチャ理解できるが、
死なしては欲しくは無かったなの思い。
ここは 思い留まって耐えて耐えて
二人して涙を流して欲しかった。
生きるって事に 前に向いて欲しいと思うわ。
・父を死に至らせる描写を変えて欲しい思い。
※死なす事が出来ない悲痛な叫び、思いを表現させる。
父の唯一自由になる手を 息子の手の上に重ねて
息子の指を押して自身の腕に流し込む~。
つまり、息子を犯人にするのでは無く、
父自身の思いで自殺に導いた・・・との 表現が
一番良いと思うのだけど。
・今作の 白髪にして役作り頑張った松山さんと、
父役の柄本さんは 両名共、迫真の演技でとっても
素晴らしい親子の間柄だったと思いました。
衝撃のラスト展開は、全国の役所の福祉課や介護施設で繰り返し
流して欲しいね。国民皆で考えると良いよ。
現代における介護の問題作!
ご興味有ります方は
是非 劇場へ!