「ロストケアを肯定的に捉えてしまうが…果たしてそれで良いのか…」ロストケア maruoさんの映画レビュー(感想・評価)
ロストケアを肯定的に捉えてしまうが…果たしてそれで良いのか…
小説を読んでから映画を鑑賞。小説と相違点はかなりあったが、メッセージのコアの部分はしっかり残しながら、周辺エピソードを削ぎ落とした感じか。小説ではグッドウィル事件を題材にした介護業者の不正問題も物語の重要な部分を占めていたが、映画ではその話は一切なかったため、国策の間違いに対する指摘は映画ではだいぶ薄れていた。その分、ヒューマンドラマとしての印象が強くなり、介護する側とされる側にとっての「救い」としての殺人であったというところがより強調される結果になっていたように思う。
松山ケンイチと柄本明のベッドでのシーンは迫真の一言。どちらも表情を1分間以上カットを入れずに流し続ける演出で、登場人物の心の葛藤や心情の変化などをじっくりと感じながら見ることができた。
裁判のシーンを見て、「ロストケア殺人」を小説よりも批判的に表現しているのかと思った瞬間もあったが、最後のシーンを見て、原作よりも「この殺人は仕方のないもので、介護する側もされる側も幸せな結果になった」という肯定的なメッセージ性を残していたように思う。でも見終わった後、「果たしてその感想で良いのか?」と悩んだ。きっと誰かと議論してもずっと平行線をたどりそうな答えの出せない問題だと気づいた。
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