「相手への愛ゆえに追い詰められてしまう"介護"という名の底無し沼... 親族介護を題材に身近な滅私奉公の現存とその是非を突きつける社会派映画!!」ロストケア O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
相手への愛ゆえに追い詰められてしまう"介護"という名の底無し沼... 親族介護を題材に身近な滅私奉公の現存とその是非を突きつける社会派映画!!
とある地方の町で起こった介護職員の関係する殺人事件と、そこから偶発的に明らかになった件のデイケアセンターのサービスを受けていた被介護老人達の死の真相を巡るショッキングサスペンス。
渦中の犯人を至極真っ当な生命倫理の観点から断罪する主人公ながら、愛情を込めるがゆえに自分も相手も追い込んでしまう親族介護のどうしようもない皮肉を孕んだ顔と、自らの振りかざす正論が社会の同調圧力の一片となって介護現場を追い詰めている厳然たる構造と対峙することとなります。
"介護"という誰しもが人生の何処かのステージで直面するテーマゆえに対岸の火事とは見做せない性急さがあり、犯人が如何にして"喪失の介護"を奉じるに到ったかの人生遍歴を追うミステリーとしても大変見応えの有る一本でした。
常に適度な距離感を保ち得ないと知らずの内に彼我双方に不幸を招いてしまう介護というものの難しさと、それが万人に何かの切っ掛けで降りかかり得るという現実にぐうの音も出ないのが正直なところです。
そしてそれを考えれば、普段の生活の中で目にする様々な形の介護現場に対して"かくあるべき"という先入観の眼差しを向けることが既に静かな暴力かもしれない、という気付きを得る意味でも意義深い一本だと感じました。
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