劇場公開日 2023年3月24日

「家族との絆」ロストケア サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0家族との絆

2023年4月5日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

今年は泣ける映画が沢山あるが、本作は群を抜いている。ラスト15分間、大号泣だった。悲しくて、辛すぎる。思い出しただけでも泣けるくらい、秀逸な演出と構成であった。胸が張り裂けそう...。

「ドクターデスの遺産」を思い出させる内容。
あの作品は映画こそ〈クソ作品〉であるが、小説はとても丁寧に描いており、深く考えさせられ見応えのある秀作だ。実は映画版では、柄本明が出演しているという、共通点があるのだけど...全然違う笑 「ドクターデスの遺産」は、生きることを苦しむ人々に安楽死という選択を与える、医師の話。延命治療が当たり前とされているこの国は、人に寄り添う心が何処か欠けている、そんなことを語る作品。そして、本作「ロストケア」は、親の介護で苦しむ人々に〈救い〉を与える、介護士の話。家族という絆が、家族をどれだけ苦しめているのか、ということを強く語る作品。

ドクターデスという医師はネットでの申し込み制、家族の了承があっての実行だったのに対し、本作の斯波という介護士は全て自分の判断、家族の承認一切無しでの実行であったため、少し倫理感が欠けている部分はある人物。快楽じみている。しかし、ドクターデスの場合だと、申し込むことに罪悪感を感じ、また今の刑法だと、共謀者として罪に問われる可能性もある。が、斯波の場合は、全ての事件を彼1人で行っているため、無論他の逮捕者が出ることもないし、身勝手な行動のあまり批判もあるだろうが、自然な形で苦しみから解き放たれ、救われる人も少なくないはず。

どちらが正しい行いをした正義なのか、というのは分かり得ない。だが、どちらも『この国は下を向かない。見えないんじゃなくて、見ない。』と訴えている。本作の斯波の犯行は、〈お父さんを返せ〉という言葉がある時点で、大きな罪に問われるのだけど、同時に〈救われたんです〉という言葉もあるため、100%間違いを犯したとは言いきれない。少なくとも、救いの手は差し出すことが出来た。

辛い思いをしている家族を楽にしてあげる。
これの、何処が悪いのだろうか。生きる権利があるなら、死ぬ権利があってもいいはず。特に本作は老人に焦点を当てた作品であったため、当人も自分のせいで家族が苦しんで欲しくない、と考えるはず。私がその立場に立ったら間違いなくそう思う。小説「ドクターデスの遺産」よりは、犯行に抜け目が多く、許されない行いだが、とてもリアリティがあって頭を抱えるほど考えさせられた。松山ケンイチと柄本明の演技力がお見事である。

感想と言うよりも解説が多くなってしまいました。
せっかくなので、原作も購入し、できれば改めてレビューに追記しようかなと。淡々と描いているために少しあっさりとした作りではあったけど、優れた演出で涙が止まらない、いい作品でした。ぜひ。

サプライズ
満塁本塁打さんのコメント
2023年4月6日

映画ドクターデスは胸ぐら掴むは、人の職場で鼻つまみ、年上の容疑者呼び捨て胸ぐら。主役の2人に逝ってほしかったです。表層的でした。おっしゃるような背景ですと、原作者決して映画作品に満足してませんね勉強になります。図書館にあれば拝見させていただきます。😊基本的に貴殿のおっしゃるご意見に共感です。
重要なのは多分、法的には間違いなく処刑されるべき犯罪者悪人。だが道徳的にはある意味完全な善行。法廷でのおばさん叫びは 偽りの絶叫で、敢えて挿入しましたね。殺人励行批判交わすために・・実際は感謝される場合がほとんどカモです。【松山ケンイチ役のやった41人が 自分自身をほぼ失っている 排泄ができないor暴力を振るう】という大前提が付きますけれども・・・

満塁本塁打