「何が正しいのか解らなくなる。「深く考える」素晴らしい作品」ロストケア ゆうやさんの映画レビュー(感想・評価)
何が正しいのか解らなくなる。「深く考える」素晴らしい作品
「介護問題」という大きな論題について可視化した様な作品だった。
終始静かな展開で進み、深く深く考える話なので動きや驚きが欲しい方にとってはめちゃくちゃつまらないと思います。(アンチじゃないです)
自分は本当に作中ずっと頭を凝らしよくよく考えるこの時間がとても楽しくて素晴らしい作品を観れたと心から思います。
介護問題、特に自宅介護について。
現実でも起こっている介護の過酷さ、年老いていって身体もボロボロで老人は介護されてもなお生きているのが幸せなのか?
介護されてる側もする側も…それが幸せと呼べるのでしょうか。
法律が正義なのか。命に対して何が正しいのか。
表面上では善人で居る事が当たり前の世の中ですが
本質はどうなのか、本当に幸せになれる方法はどの手段なのか。
作中の検事と介護士の掛け合いはとても息を呑みました。
松山ケンイチの演じる介護士、斯波宗典(しば むねのり)の検事への返しのひとつひとつが凄まじく重みのある言葉で、介護する側は無理して自分が苦しまなくても自分の人生をもっと生きれるし、介護される側も無理して生きていても苦しい
本来このように思ってる人はたくさん居るんじゃないか…と思います。
このシーンは一言一言なんて答えるんだろうと凄く見入りました。
実際、母を亡くしたスーパーで働く娘さんは余裕が無く子供への接し方も酷くなってしまっていたが
最後には子供と楽しく会話したり、新しいパートナーとも出会えたりと全てがうまくいって自分の人生を生きれていました。
自分は感情論を抜きで斯波の方に共感しました。
ただ、父の最後には斯波も父からの家族の絆(折り鶴の中のメッセージ)を受け取っていてこのシーンには胸がギュッとなりました。
ただただ、現実問題に立ち向かう
【悲しい】という感情を味わえる名作だと感じました。
あからさまに感動させようとしてくる映画と違い、ちゃんと自分なりに考えて噛み締めれる作品で本当に観てよかったです。
あと松山ケンイチの演技ホント好き