「「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」」ロストケア いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」
介護問題を扱った作品の正統派切り口のストーリー展開である
配給が有名会社故、そこまでは踏み込まない、抑制の利いた演出や表現で、印象とすれば安心感は保たれているのではないだろうか
只、自分とすれば直近でもっと苛烈な演出の作品を鑑賞したせいか、甘さを感じたのが正直な感想である
とはいえ、この問題の解決の糸口さえみつからない深い問いかけを映画界として避けずに取り組み続ける意義は大事であると考える 片や積極的に、片や消極的に、父親を殺めた立場の対峙する二人の懺悔・・・ ラストの帰着はそこまで深さを表現しなかったのは、制作陣の優しさだったのであろう
一つ、もう少しアイデアが欲しかったのは、主人公殺人犯を慕っていた若い見習が、その事件を期に風俗嬢に転向してしまった件 まず全員、あんな下着姿で事務所待合室にタコ部屋のように待機してはいないと思うのだが・・・ 本来ならば蛇足感があるあのカットと演出は、なかなか考察が難しい差込である やさぐれてしまったということなんだろうが、それ以上に何かストーリーに絡むことがない
コメントありがとうございました。もしお時間ありましたら、是非原作もご一読下さいませ。映像化のために個々のエピソードが極限まで削られてしまっていますが、ご指摘の疑問点の理由についてもしっかり描かれています。普遍性を求めるなら映画の描写で十分ですが、社会問題に触れるなら原作というところでしょうか。
その後、ネットでの考察サイトで確認したところ、介護士からの闇堕ちの女の子の件の演出は、"介護"という問題が当事者だけでなく、人間全員に関係している事を表現するシーンであるとの記述がありました 父親を孤独死にした件も然りです
そういう演出意図を教えてくれる点に於いて、本当にネットは重宝ですね
それだけ今作は解釈や読み説き、考察が重要であり、個人だけで観賞して終わりだと、作品の良さが伝わらない事を改めて思い知らされました