「二人の熱い友情と使命が、熱量全開で駆け抜ける。」RRR すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の熱い友情と使命が、熱量全開で駆け抜ける。
◯作品全体
信頼関係の厚い友情が、自分自身の夢や使命によって揺れる物語が好きなんだけど、もう、まさしくそれと言える作品で、本当に素晴らしかった。
夢や使命が揺れるときって、得てしてその人物ではなく、周りの人物が揺さぶることが多い。家族や恋人、仕事の問題…いろいろ原因はあるし、本作でもそういったものが揺さぶりをかけてくる。その結果、自分の夢や使命を絶ってしまったり歪めてしまう。ありがちではあるけれど、それを見ているのはエンターテイメントとしても、その登場人物の心情を考えたとしても、辛い。
しかし本作のメイン二人にとって使命は常時根底にあって、揺るがない。ビームを逃がそうとするラーマは一時的に自分自身の使命と葛藤するけれど、ビームの歌声こそが故郷に持ち帰る銃であり、その銃よりも威力を発揮することを知った。だから自分の使命を曲げずに友情を選ぶことができた。二人にとって最良の選択が見ている我々にとっても最良の選択になっているから、重苦しいシーンや二人を分かつシーンがあっても、後味の良い物語を噛みしめることができる。これが本当に素晴らしかった。
演出の仕方によってはそれが「ご都合主義」に見えてしまうときもある。けれど本作では熱量全開の二人と、これまた熱量MAXなアクションが、そういう冷めた感情を捻り潰してくれる。
三時間という長尺の作品だけれど、軽快な音楽と絶え間ない熱量によって一気に駆け抜けてくれる。
とびきりの映像体験だった。
◯カメラワークとか
・多くの作品が編集するときに音楽よりも映像のつなぎを重視していると思うんだけど、本作はミュージッククリップのような、「音ハメ」的カッティングになっている。挿入歌やBGMに合わせてあえて短いカットを入れたり、ジャンプカットを使ってテンポ感を重視する。ラージャマウリ監督の個性っていうより、インド音楽MVの文脈っぽい気がするけど、すごく良かった。
・ビームを鞭打ちするシーンで、ラーマの顔に飛び散ったビームの血とともにラーマ自身の涙を拭うカットが最高にカッコよくて、かつ泣けた。
・二人が再び合流して森の中で戦うシーンの挿入歌と映像のシンクロが笑っちゃうくらいかっこいい。ラーマとビームを歌う曲なんだけど、ビームのことを歌い始めたところでビームのアクションに映る。そして歌っている間は無敵。『MADLAX』のヤンマーニ的BGMだった。
・「R」の演出は、ちょっと一生懸命考えた感出てしまってた。「INTERRRVAL」は面白かった。
◯その他
・やっぱナートゥダンスかっこいいなあ。腕を振るう動きの力強さが本当にかっこいい。それだけで心が奮えた。
・終盤はちょっとイギリスにヘイト向けすぎてたような気がしないでもない。ラストでジェニーが出てくるのも、あれだけイギリスに復讐しておきながら都合良い気がしなくもない…。