劇場公開日 2022年10月21日

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「幽玄の世界へ」線は、僕を描く 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5幽玄の世界へ

2023年3月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

家族を不慮の事故で亡くし生きるチカラを無くした
青山霜介(横浜流星)
友人に頼まれた搬入のアルバイトは国宝級の水墨画家・篠田湖山(三浦友和)の
門下生の展覧会だった。
原作の室内会場から、戸外のお寺の境内への場所変えが効果的でした。
そして霜介は思いもかけずに湖山から
「弟子になってみないか?」
と言葉をかけられる。
ずぶ濡れの迷い犬を拾うように、湖山は霜介の心と身体に栄養のある物を
惜しげもなく与えてくれた。
「喪失と再生そして出会いの物語」
この使い古されたフレーズが、艶やかで愛溢れたそれでいて静謐な
美しい映画になりました。
稀に見る心地よい映画です。

水墨を描く筆とコラボして躍動する音楽。
音楽を作曲した横山克の役割は大きかった。
即興の水墨画の実演。
篠田湖山の筆にかかると、真っ白い紙が【夢幻の宇宙】に変わる。
水墨画が本当に美しく力強く素晴らしい。
大きな鷺(サギ)が翼を広げる即興画はほんとうに鷺が飛び立つようだ。
そして水墨画の魅力を伝えた原作者の砥上裕將の原作も水墨画の今後に
大きな一歩を刻んだと思います。
原作も水墨同様にモノクロームの印象でした。
モノクロームの物語を美しいカラーに変えた脚本の素晴らしさ。
そして華を添えたのは清原伽耶の存在感と美しさ。
横浜流星の澄んだ瞳。
三浦友和の国宝級の文化勲章受賞者なのに「軽やか」「柔軟」
原作でも篠田湖山は驚くほど偉ぶらない人で、それだけで感動的な人。
権力者にならないお年寄りとして、魅力の極みでした。
一番弟子の西濱湖峰の江口洋介。
最近は大物役が多いので、こんな軽みのある飄々とした人物が
とても新鮮に映りました。
彼のお料理もとても美味しそう。
室内装飾や食器、テーブル、椅子、何もかもセンスが溢れます。
美術の五辻圭。
撮影の安藤宏樹。
水墨画監修の小林東雲。

水墨画の実演(笑)
なんというんでしょうね。
即興ですかね。

黒と白のグラデュエーションの中に秘める【無限の可能性】
原作にもありましたが青山霜介が食い入るように見つめる
千瑛の椿。
それは誰にも表せない篠田千瑛(清原伽耶)だけの
「椿の水墨画」
椿の花弁を重ねて行き、最後にビロードの黒を深々と重ねる。
漆黒が《真紅のビロード》に本当に見えるのですね
原作者は砥上さんは実際に水墨画家。
若い人が何かに打ち込むキッカケを与えたかった、
と語っています。

線は僕を支え、
僕を救い、
進む道を教えてくれる

心打たれました。

琥珀糖
uzさんのコメント
2023年6月23日

コメントありがとうございます。
原作との違いなど、レビューも非常に興味深く読ませていただきました。

江口洋介は、ロジカルなサラリーマンを見た後だったのでギャップが凄かったです。
実演中の、少年のような表情も素晴らしかった。

個人的に、若者向け主題歌の作品はやや警戒します。笑
逆にエンドロールがインストの作品は信用できる。(偏見ですが)
本作は、中身はよかっただけに余韻が勿体無かった…

uz
caduceusさんのコメント
2023年3月24日

文句なく面白いけど、ちはやふるは越えられない、そんな感じですかね。
しかし、横浜流星もいいし、清原果耶もいいですね。

caduceus
CBさんのコメント
2023年3月24日

いい映画、いい原作ですよね。素敵でした。たしかに、(原作の凄さは、白黒というか墨の濃淡だけによる絵を、読んでいるだけの俺たちの前にまるで見せてくれているかのような文章だと思いますが)なるほど、映画の魅力はそこにカラーを交えて伝えてくること、ですか。そうですね、そうかもしれません。この光をふんだんに使った画面の中で、鮮やかな色が飛び交う景色の中に置かれるからこそ、水墨画がよりいっそう浮き上がっているのかもしれません。
琥珀糖さん、さすがですね。

CB
2023年3月23日

確かに奥深い、趣がありました。清原果耶さんが描いたのは薔薇の絵だったのですね。私が間違えたかもしれません(汗)
夢幻→無限の可能性を感じられて良かったです。
ありがとうございました✿

美紅
2023年3月23日

観たのですね。
幽玄の世界、夢幻の宇宙
とても繊細な感覚でレビューされています。

美紅
2023年3月23日

こんばんは☆琥珀糖さま

美紅