ボイリング・ポイント 沸騰のレビュー・感想・評価
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全て長回し、リアルな1時間半のドラマ
個性的なキャストで緊張感ある状態で無理無いカメラワークでストレスは感じなかった。ただ話の終わり方が残念な感じで、次観たいw
テレビ枠で数話観たくなる感じでした😄
ハプニングは山ほど起きる!けど〜〜
最近「アフターシックスジャンクション」で取り上げられたので
再投稿しておきます。
宣伝の通り、全編、主要人物の顔の間近や
背中に張り付く様なカメラワーク。
出だしの、シェフの困った様な電話のやりとりに始まり
衛生局の調査結果や食材の仕込みが出来てない状況、
従業員のミスと遅刻、スーシェフの給料面での不満、
お客のわがまま、ライバルシェフの挑発、
オーナーの娘であるマネージャーの独断等々
次から次へと問題山積。
このレストランはこの後、どうなっちゃうの?
最後までハラハラが止まらない作品になってます。
90数分の尺なのでサクッと観られる作品です。
で、月に8本ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
最近はあまり入れ込んで観ているドラマが少ないので
引き合いに出す作品が古くて申し訳ないが
まるで「E・R」のレストラン版を観ている様に
次々に事件が起き、ハラハラさせられる展開は共通。
この映画と「E・R」との違いは、どんな出来事も
「E・R」ではご都合主義と言われればそれまでだけど、
観ていて気持ちの良い結末やら、カタルシスがあって
何となく毎回納得させられてドラマを楽しめたが
この映画は、どんどん状況が悪くなって行くだけで
とんでもない形で終わってしまう。
折角のスピーディーな展開が
回収されずに終わるのは何とも〜〜〜
撮影の技法や技術はよくできているし、役者陣は頑張ったと思う。
その上で料理の美味しそうな描写がほぼ無かった。
食べ物映画では無いから仕方ないかもしれないけど
このレストランには絶対に行きたくない!と感じた。
残念。。
何の前情報も無しで、単にロンドンが舞台ということとワンショット撮影ということで鑑賞。
序盤、パッと見の印象は、ワンショットのためか画面が小刻みに揺れるのが気になった。確かに臨場感はあるのだが、途中から安定したものの、もう少し長い時間見てたら酔ってたかも。
繁忙期の人気レストランの戦場のような忙しさを描く本作。厨房・フロアそれぞれのスタッフのそれぞれの苦労・不平不満の嵐・・・・なのだが、、この店、そもそもキャパオーバーだろう(笑) 客数(席数?) に対してスタッフが少な過ぎでは?仕入れも満足にできてないようだし、やる気なさそうな者、サボってる者もいるし。そんかしっちゃかめっちゃかな中、責任者のアンディは携帯電話に何度も出るわ、客席で話し込むわ、急に新人の指導始めるわ・・何だこりゃ??さらに皆を忙しくさせてどうする??自分はこんな状態なのに周囲のスタッフにキレて怒鳴ったりする彼には全く共感できず。。ドレッシングの容器みたいなもので四六時中何か飲んでるのもシェフとしてどうなのか。すごく違和感。薬物摂取のためなのか、肉体的・精神的諸々の限界が一気に来たのか、最後はそのアンディが倒れて終わり。
個人的にはアンディみたいな人と働きたくないし、この店で食事したいとも思わないな~。スタッフも来店客も含めて、何か終始、人間のイライラ・怒気ばかり見せられた感じで、救いようのないストーリーだった。せっかくロンドンが舞台なのに街並みすら全く見られず残念。
全集中!
こんな戦場のようなお店に毎日いたら、
みんなまいっちゃうよ…
お酒にもクスリにも頼りたくなっちゃうよ…
楽しくないよ…
って、
ワンカメだからなのか、
元シェフによる監督・脚本作品だからなのか
もう、ドキュメンタリーにしか見えなくて、
ただただ、手に汗握りしめながら集中していました。
しかし、ワンカメで撮るって、
スゴッ!コワッ!!
これにチャレンジする全ての関係者に賞賛を贈ります。
手法が目的ではない
見終わった後、フランス映画なのかと思った。
何を見せたいのか、それがどんな演出だったのか、分からない人には分からないんだなぁ…と、Proレビュアーに少し呆れてる。
沸点の先にあるのは
「私は最悪」を見に行ったヒューマントラスト有楽町で上映していて、TBSのクルーが見た人にインタビューとかしてたから、ちょっと気になっていた。
およそ90分を1カットで撮影した映画。舞台は一流レストランの戦場のような厨房。面白そう、あるいは「元は取れそう」だと考えた。何か番組作りのヒントになりそうな気もするしね。
主人公は人間味あふれる表情が印象的な中年シェフ。多忙でヘロヘロなのに家族サービスを求める電話がかかり、開店前の厨房には意地の悪い保健所の役人がやってきて、衛生面の不備をネチネチと責め立てる。
これは「ダイハード」なのかなと期待した。誠実でタフな主人公に様々な不条理が降り注ぐけど、不屈の闘志やユニークなアイデアやチームの絆で乗り越えて、混乱の中でちょっとしたロマンスも生まれ、最後にはあっと驚くようなカタルシスが訪れる。そして、最後は静かにレストランの灯が消える、みたいな。
(以下、ネタバレあります)
しかし物語は期待を裏切っていく。いい意味で?悪い意味で?
うーん、前者よりの後者?。
混乱が混乱を呼ぶ。それはいい。厨房のスタッフはそれぞれ別々の事を考えて、それぞれにいがみあっていく。オーナーの娘はSNSを気にして厨房に無茶を言うし、ホールの中年スタッフはナンパの事しか考えていない。
洗い場の若者はさぼってばかり。相方の女性はヒステリーを爆発させる。
それを主人公がタフに解決していく、と思いきや問題の半分はそのシェフから起こっていることも徐々にわかってくる。え、そんな感じ?
多忙ゆえの発注ミス。短気ですぐに大声を上げるから雰囲気は悪くなる。料理の腕が確かなのは救いだけれど、どうやら傍らに持ってるボトルに入ってるのは強い酒だ。
中盤に入っても、トラブルは積み重ねられていく。芸能人となったかつてのライバルは、ネットで人気のグルメライターに悪評を書かせようとするし、オーナーの娘は唯一のまともなキャラである女性シェフに反論されてトイレで泣き崩れる。ライバルは主人公の弱みに付け込んで経営に入れさせろと脅し始めるし、その間に主人公のミスで客がアレルギー発作を起こす。
5分起きにおこる様々なトラブルと人間模様のいざこざが、すべてワンカットで描かれる。撮影にかけたであろう熱量は、そのままスクリーンに表れて、見る方に伝わってくる。何か盛り上がって来てる?
全編1カットの名作と言えば、三谷幸喜が竹内結子を主人公に作った「大空港2013」を思い出す。借り切った空港を縦横無尽に駆け回りながら、群像劇として一人一人のドラマを描き込んだエンタメ大作。
別にワンカットでなくても面白い脚本を、あえてワンカットで制作する事で、生の演劇のようなテンションが生まれていく。
「カメラを止めるな」もそうだけど「ワンカットもの」には、監督の強い思い込みと、「ワンカットでなければいけない」という脚本の必然が要求される。三谷作品であれば、その目的な竹内結子のコメディエンヌとしての才能に惚れ込んだ三谷が、彼女に最大限の負荷をかけながら才能を最大限に引き出すことが目的だったように思える。
それならば「ボイリング・ポイント」の監督にとって「ワンカットであること」の必然はどこにあったのかな。そう考えながら見ていった。
期待を良くも悪くも裏切っていく脚本。全く「いい人」ではない主人公。監督のことは何も知らないけれど、おそらく主人公のように、どこか心に鬱屈のようなものを抱えた人格ではないかと推測される。
期待されたハッピーエンドなんて糞くらえだ。万人が喜ぶ口当たりのいいものなんて作るものか。そんな声を勝手に聞いた。
これだけのスケールのワンカットを指揮して作り上げるのだから、色々な意味で相当にパワフルな人物なんだろう。そんな監督は、自分に似た主人公にどんなエンディングを用意するのか。
見て、損はない作品だと思う。
そしてもしあなたが脚本や物語作りの仕事をする人ならば、とても「いい教材」になるはずだ。自分なら、このフォーマットでどんな物語を作るか。
様々な人物像と、シチュエーションが用意されている。
伏線にできるけれど、決して回収されなかった伏線もいくつもある。それをあなたならどうするか。
一番の楽しい難問はこうだ。
「あなたなら主人公をどう設定し、どんなエンディングを用意するか」
映画を見終わった後も、自分なりの「ボイリングポイント」を想像して楽しんだ。
凄腕シェフの手元を避けるのはやはり不自然か‥
90分マジでワンカットなので長回しフェチの私としてはこれを観ないわけにはいかない。最初からその先入観がありカメラワークなど少し気になってしまう部分もあるのだが見事に最後まで回し続けた撮影のマシュー・ルイスにまず拍手。そして脚本が優れている。リアルな90分にこれだけのエピソードをワンカメショーの動線の中に盛り込みきちんとおとしまえをつけるのだからその手腕は恐るべし。サボってばかりいる皿洗いの男にシェフがなぜ寛大なのかなど最後の最後に一気に伏線を回収して見せる。ただ望むらくは、てんやわんやの厨房とわがままな客たちを裏腹で見せるのがやはり面白いのでライバルシェフとのシーケンスを少し削ってでも他の客のエピソードをもう少し入れて欲しかった。せっかくここまでの舞台を作っておきながら、ちょっと食い足りない感が残った。
レストランに食事に行く前に観ましょう
クリスマスで大繁盛の人気レストランでの一夜の騒動をワンカットで描いたドラマで、なかなか面白かったです。ごった返す店内や厨房内で、次から次へと起こるトラブルを上手くキャラをバトンタッチさせながら、カメラがどこまでも追いかけていくので、臨場感がハンパないです。飲食業や接客業の経験のある人には、身につまされるかも。主人公のシェフも、役人には叩かれて、部下からは突き上げを食らう、まさに中間管理職状態で、最後は燃え尽きてしまうあたり、むしろサラリーマンの一生を凝縮した感じです。惜しむらくは、もっと手元の調理シーンや料理の映像も欲しかったかな。主役のスティーブン・グレアムは、くたびれた感がぴったり、スーシェフ役のビネット・ロビンソンは頼り甲斐のある姉御肌でインパクトありました。
90分ノンストップ!!へとへと!!
ドキュメントかと思わせる90分ワンショットで撮られた作品。繁忙期、クリスマスのレストランを舞台にたった90分の間にカスハラ、パワハラ、同性愛や人種差別、労働環境や従業員の人間関係まで一気に見せられヘトヘト!!こりゃすごいや…4テイクでOK出たそうで、それもすごい。
ラスト、どうなったんですかね…気になる。
そう考えると凄い密度
ただでさえ忙しいクリスマスのレストラン。
そもそも色々な問題を抱えているシェフに襲い掛かるトラブルの連続。
ワンショットなので約2時間の出来事。
ボタンの掛け違いによるローリングで転がり落ちる展開が面白い。
責任回避のために他人を責めたら跳ね返ってきたりするところとか、日常のさりげないイジメなどとてもリアルで、切り取った2時間でありそうでなさそうな飲食業の闇をよくかけてたんじゃないでしょうか。
ワンカットだから少し点数甘め
ワンカットで撮影された映画やドラマが好きだ。たとえそれがワンカット風のものであっても、全編がワンカットでなくても構わない。脚本や撮影の段取りの大変さを想像しながら鑑賞するのが楽しい。
本作はレストランを舞台にしたワンカット映画。冷静に考えると、あんなに短時間にあれだけの客数をさばくことができるの?と疑問に感じてしまうが、実はあまり気にならない。ワンカット映画にありがちな、時間経過の錯覚をうまく使っていた。
基本的にはシェフのアンディの感情を乱す出来事を描くのだが、その他の登場人物にも感情を乱すトラブルが続出する。そして沸点を迎える人たちが。実は群像劇のようにいろんな登場人物の物語が垣間見えるのが面白かった。
余裕のなさ、想定外のトラブル、チームワークの乱れ、マネジャーの人間がイラつく要素がてんこ盛りの展開。アンディ目線だと同じようにイライラしてしまうが、冷静に見てしまうと彼の自業自得に感じてしまう。その場しのぎの対応や感情を表に出してしまうこと等、上に立つ人間としてはアウトなことだらけだ。
ワンカットで話が進むから多少強引な展開があったり、伏線回収がわかりやすかったりするのも仕方ないところ。でも、不満なところがあっても、全体的には緊迫感があってなかなか面白かった。
三谷幸喜作品が好きな身としては、この設定、この展開でコメディだったらさぞかし面白かったんじゃないか?と思ってしまう。いや、人が傷つくのはもちろんなしだけど。
どの箇所が沸点なのか楽しみに…
カメラ1台でのワンショット映画と聞き、緊張感ある映像を期待して観てきました。
リハーサルで監督の演技指導はあったのだろうと思いますが、カメラ1台だから撮り直すことはできないので、そういう意味で俳優たちの醸し出す緊張感があるのだと思っていましたが、そんな緊張感は吹き飛ぶ別の緊張感で溢れて、このレストランが、シェフが、スタッフたちが、どうなっていくのか息もつかせないスピード感で回っていくカメラ、まるでレストランのホールや厨房をのぞき見している錯覚も出てきて、楽しめた作品です。
綱渡りの厨房。
客のどんな無理難題な注文もプロシェフたちの華麗な捌きでしのいでゆくレストランの一夜をドキュメンタリータッチで描いた作品かと思いきや、意外にも主人公をはじめとする登場人物一人一人の苦悩や葛藤をリアルタイムで見せる見事な人間ドラマに仕上がっていた。長回しによる一切緊張感の途切れない演出もお見事。
いまや繫盛店となったレストランのオーナーシェフアンディだが、仕事に忙殺され家庭はすでに崩壊しており、愛する一人息子の面会にも行けない。
シェフとしての腕前は一流だが、そんな状況下で次第に仕事もおろそかになり、常に酒とドラッグが手放せない状態に。
そんな彼に周りのスタッフの不満がつのる。仕事には遅れ、仕入れも滞りがち、料理の下ごしらえも出来ておらず、あげくに衛生管理も怠り店のランクを下げられてしまう。
また、一見店を上手く仕切っているかのような支配人は共同経営者の娘で、予約過剰による厨房スタッフのオーバーワークにも気づかず、給仕も仕切れないファザコンである。
こんな状況下で店は繫忙期の一夜を乗り切られるのか。まさに綱渡りの一夜が幕を開ける。
店はオープンし、ただでさえ忙しい中、レイシスト親父によるあからさまなクレームや、迷惑系ブロガーのわがままな注文、そして極めつけはアンディの元雇い主が評論家を連れてこれ見よがしに料理に注文をつける始末。
そんな状況下でも辛うじて切り盛りしていたアンディだったが、ついに恐れていたことが起きてしまう。アレルギー体質のお客に禁忌食材が入った料理を提供し客が発作を起こしてしまうのだ。
原因がアンディにあったことが発覚し、周りのスタッフはついに我慢の限界(ボイリングポイント)に到達。助手のシェフは今までの不満をぶちまけ、片腕のカーリーは店を移ると言い出す。
限界点に達したスタッフたちを見て、アンディは気づいたはず。これが正常な人間なのだと。限界に達すればぶちまければいい。そうでなければ人は正気なんて保てない。
酒とドラッグで正気を保ってきたアンディの限界はとうに過ぎていたのだ。ただそれを遅らせていただけだったと気づいたアンディは酒とドラッグを断ち切る決心をし、その場で倒れこむのだった。
いずれは生じるであろう人間の限界点。それが起きる様をレストランを舞台にスリリングに描いた本作は、まさに人の心が折れる瞬間をリアルタイムで感じられる最上のエンターテイメントだった。
そして一人の人間の破滅を描いてはいるが、同時に再生を予感させるラストで本編は幕を閉じる。
沸点を迎えた先に
スタッフの怒り爆発。
主人公は心身が爆発。
冒頭から不安定な精神状態の主人公、キャパオーバーの仕事量に混乱する厨房、コミュニケーションにやや不安がある外国出身の新人スタッフ、食品アレルギー持ちの客の来店。蓄積していた問題にバッドラックも重なり、もうイヤ~な予感しかない中で大方の予想通りの事件が発生。どんどん憔悴していく主人公を見るのが辛い。
意外性、驚き、派手なドラマは無し。
ラストは主人公が過労死したという事で合ってるのかな。倒れた後のいびきがリアルで怖かった。
仕事中なのに家族がちょこちょこ電話してくるのはイギリスではあるあるなの?それともただのイライラ演出の一つ?
一番グッときたのは、若い見習いの男の子のリスカ跡に偶然気付いたスタッフのおばさんが、なにも聞かず彼を抱き締め二人で涙を流すシーン。
対して主人公は周りに理解されず酒臭いオッサン等と罵られ、言わなくていい事をポロッと漏らしてしまいフォローしてくれていた有能な仲間にも見捨てられる。最後、アルコールや薬物への依存からどうにか抜け出そうとする意思が見受けられた途端力尽きてしまう。なんだか救いがないなぁ、と悲しくなってしまった。
発想は素晴らしいがもう一度観たいかと聞かれたら微妙
90分ノーカットという前代未聞の作品。
イギリスの、とある格式高いレストランの舞台裏を切り取った作品。
まずそれを映画にしようとした着眼点もすごいし、90分ノーカットで撮り切るという狂気とも言える偉業にも鑑賞前から圧倒された。
どんなに華やかで上品な高級レストランだろうが、実際に裏はこんなもの。お客さんが当たり前だと思っている表舞台のエレガントさは、舞台裏の彼らの汗と涙、心労で成り立っている。
料理人というものを少しでも経験してきた人達は、これはまだマシな方と笑うかもしれない。
事実、料理人は先輩の料理人から理不尽に暴力を振るわれ、些細なことで怒鳴られたりすることが多い職業だ。例え高級な日本料亭だろうが、フレンチだろうが、それは国境を超えても同じこと。
劇中では、理不尽な客から人種差別的な扱いをウェイトレスがされたり、厨房と支配人の意見が噛み合わずに罵倒しあって対立する場面は、あるにはあるかもしれない。だが、現実のシェフはもっと過酷。ただし、あまりにもリアルに描きすぎると、ただのつまらない胸糞映画になるので、監督はその料理人あるあるの、汚い部分は描かなかったのだろう。あくまでリアリティを重視した、ノーカット撮影という、役者の緊張感をストーリーに混ぜた1つの芸術作品だ。
切羽詰まった調理場が、登場人物を介してすらすら流れていくので、退屈と言う人がいるかもしれない。事実、退屈な映画と言えば退屈ではある。そのへんのよくある映画と違って、感動も、涙も、笑いも我々に与えてはくれない。与えてくれるのは、「空気」だ。ただひたすら、タイトル通りの、登場人物それぞれが抱える鬱憤が沸騰している現場の「空気」を伝える映画。大きなスクリーンで見た分、その緊迫感はダイレクトに伝わるが、それだけの映画と言ってしまえばその通り。もう一度観たいかと聞かれたら残念ながら、私は首を横に振る。それに、終わり方も、少し物足りない気がした。あの後アンディがどうなったのか、まだ営業時間も終えていないレストランがそのままブラックアウトしていくのは消化不良。
キャパシティ
前情報ゼロで鑑賞。
登場人物はそれぞれストレスや疲労を抱える中で、キャパシティオーバーの営業の中にいる。
崩壊直前のレストランの模様が臨場感たっぷりに描かれる、そしてそれぞれが沸点を迎える。
その背景には、過剰労働、人間関係、人種差別、ドラッグ、自傷、多くの社会問題が存在。
どんな職場でもストレスは存在するけど、せめて60℃くらいで調整したいね。
鑑賞後はどっと疲れた。
沸点の後
2021年。フィリップ・バランティーニ監督。ロンドンの一流シェフが手掛けるレストランの内情は問題だらけ。一番の問題は料理の腕は超一流のシェフ自身にリーダーシップや生活力がないことだが、オーナーの娘でもあるマネージャーは上から目線で料理人にあたり、皿洗いは仕事をせず、見習いは自殺未遂歴があり、フランスから来たばかりの下料理担当は英語を聞き取れない。そこへ、明らかに人種差別をする白人男性客がホールの黒人女性に嫌がらせをし、今や売れっ子タレントとなったシェフの元相棒が料理批評家を連れて表れて、、、という話。
ワンシーンですべてを撮っているという触れ込み通りの緊迫感はあるが、さらに緊迫化を生んでいるのは、登場人物たちが次々と「沸点」を迎えて感情を爆発させていくなか、内面の心理状態からも外面の資金繰りや人間関係からも徐々に追い詰められていくシェフの様子。シェフが「沸点」を迎えることで物語は終わりとなる。
人種規範もあらわだが、ジェンダー規範もあらわで、男たちは「沸点」を迎えてそれでおしまい、なんの後処理も修復もしないが、女たちは「沸点」を迎えたあとで修復の努力をして人間関係を続けようとする。ナルシストな男、インクルーシブな女。これこそジェンダー的に問題のある描き方かもしれないが。
実在のレストランでの群像劇がスリリングに疾走する、『ヴィクトリア』に比肩するワンカットサスペンス
全編ワンカットの映画としてはスペインからやってきたウェイトレスの女の子が酷い目に遭う明け方までの140分を捉えたドイツ映画の『ヴィクトリア』という大傑作がありますが、こちらはロンドンにあるJones & Sonsという高級レストランを舞台にオーナーシェフのアンディ、アンディの同僚カーリー、フロアマネージャーのエミリー、アンディの元同僚で有名シェフのアリステア、グルメ評論家のサラといった複数の登場人物達が持ち込む小さな騒動がぶつかり合ってタイトル通り“沸点”に達するまでの群像劇を一つのカメラで見つめ続けるより複雑でテクニカルな90分。次から次に起こるトラブルを場当たり的に追いかけていながらさりげなく伏線を張っているので、クライマックスの展開はただでさえ無軌道な物語をあらぬ方向へ強引に加速させ着地させます。収拾がつかないほどリアルな喧騒は演者によるアドリブなりハプニングもあるのでしょうが、相当繊細に準備されたもの。それを一発撮りで完成品に仕上げた製作スタッフのチームワークに感動しました。
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