あしたのわたしへのレビュー・感想・評価
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高校生たちの揺れ動く思いが伝わる作品
全国の中学生や高校生、その周りにいる大人の方々に、是非観てほしいと思える作品でした。中高生にとっては、不安や悩みを一人で抱え込んでしまっている自分に気づく、良い切っ掛けになるかもしれないし、周りにいる大人にとっても、一見普通の顔をしている中高生が、実はいろいろな事を抱えて孤独になっているかもしれないと、想像力を働かせる切っ掛けになると思うからです。
子供の貧困、ヤングケアラー、自分の夢と家業や親の意思との間での葛藤などは、身近にいる中高生にも、実はけっこう普通にある状況だと思います。そういった状況の中、高校生たちが成長していく姿を映画を通じて観ることで、実際の中高生の方々が自分を客観視する良い機会になるのではと思いました。また、それを取り巻く大人の方々にとっても、どのように関わってあげたら、中高生の夢をサポートしてあげられるのかを考える良い機会になる作品だと思いました。そういった意味で、例えば学校の芸術鑑賞の時間などで、鑑賞後のディスカッションも含めた活動として、観て頂くのはどうか、とも思いました。
この作品の公開に先立って、オーディションの様子が配信されましたが、このドキュメンタリーも中高生に是非観て頂きたいと思いました。同年代の方たちが、緊迫した雰囲気の中、真剣に演技に取り組む姿に、色々な刺激を受けると思いますし、その後に、この作品を観たら、出演者の方々の努力の成果と成長を目にして、何かしら影響を受けるのではないかと思いました。
作品を通じて印象的なのは、少しトーンの落ち着いたマットな色調の風景です。伊東市の美しい海の風景が描写されていますが、様々な感情が伴う日常生活の中で目にする故郷の風景は、どこか少しだけ憂いのある感じに見えたりもする、そんな感覚が表現されているように感じました。また、学校の教室などのシーンでは、窓からの光と床で反射された光が、なんとなく懐かしい、学校独特の雰囲気を醸し出しているように感じました。この作品では学校の先生とか、家族といった大人はあまり登場しないのですが、生徒のバイト先であるミカン農家の佐伯さんという方が登場する場面があります。明るいイメージのミカン畑と佐伯さんの明るく少しコミカルなャラクターも相まって、作品全体の雰囲気とは違うアクセントになり、映画を観ている側にとっても、笑顔になれて、心をリセットできるような場面となっていました。
オーディションからはじまり、若い俳優さんたちと、制作スタッフの方々皆さんで作り上げた作品、是非全国のたくさんの方々に観て頂きたいと思える映画でした。
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