「直近12年間の傑作・意欲作を効率的にガイドしてくれる」ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
直近12年間の傑作・意欲作を効率的にガイドしてくれる
なぜ2010年~2021年の公開作から選ばれたのか、という点には事前情報があるほうがよさそうだ。本作のマーク・カズンズ監督は、2004年に著書「The Story of Film」を発表し、この本をもとに19世紀末~2000年代の120年の映画史を1話約1時間のドキュメンタリーシリーズ「The Story of Film: An Odyssey」全15回を制作した(映画配信サイトJAIHOで第5回まで配信中。15回は来年4月の予定だそう…。過去にはスターチャンネルで放送されたこともあったようだ)。本作は原題が「The Story of Film: A New Generation」となっていて、15回シリーズの続編という位置づけになる。
だから、順序としては「An Odyssey」を先に観てからのほうがベターなのだろうが、もちろん本作を最初に観ても大きな問題はない。むしろこの10年ほどの間に鑑賞した作品がメインに扱われるので、「そうそう、あのシーン良かったよな」などとすぐに細部を思い出せるメリットもある。ちなみに、比較参照のために2009年以前の公開作も20本以上短く紹介されており、これらも含めて111本という計算のようだ。
「映画言語の拡張」などの切り口で、この10年ほどでもいかに映画の見せ方、語り方が進化しているのかを教えてくれるし、監督独自の視点からの指摘は「こういう見方もあるのか!」と気づかせてもくれる。映画の作り手だけでなく、観客にとっても学べる点が多々ある好企画だ。JAIHO、残り10回の配信予定早めてくれないかな……。
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