「才能の使い方と諦め方、夢の泥船の行方と姿はカッコいい」辻占恋慕 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
才能の使い方と諦め方、夢の泥船の行方と姿はカッコいい
生まれ持った才能が、外に向かって放たれるとは限らない。それでも、信じてくれる人がいる。そんな夢の描き方と諦め方、どちらもカッコいいよ。
名前だけ聞いたことがあった『ウルフなシッシー』の大野大輔監督の最新作。このテーマを描くことに、監督自身は怖さを覚えなかったのだろうか。なかなか意欲的。台詞の角度が鋭利で面白いし、含みを持たせながら転がる日々にグイグイ引き込まれる。まだ自分は大学生だし、何も始めてないから笑えたりイラッとしたり出来たが、1つの諦めを覚えれば見方が変わる気がする。
才能がある。それは凄いことでも、矛先が万人でないと世間には認められない。そんな世界はどこにでも転がっているだろうし、形を変えて次から次へと出ているに違いない。その一方で、年齢や環境といった変化がもたらすモノも多い。そんな2人の最後の足掻きと、描いた未来。アーティストはそりゃ極めたいから世界を狭めるし、マネージャーは現実を見つめるから戦う。凄くムズムズするけど、結局それは自分はリスクを鑑みてしまうから。振り切ってまで努力できる人は本当にすごいと思う。ただ、その見せ方が不器用な人も少なくないってことだろう。
主演の早織さんが凄く強くてカッコいい。最後まで鉛筆のような固さと濃度が充満していて、なんともたまらない。大野大輔監督も主演のひとりとしてリードしているけど、頼れなくて…でも頼れる姿が印象的。他にも、福永朱梨さんや小竹原晋さんなど、邦画では馴染み深い顔が揃っているのも大きな魅力。
元にこうしてレビューをつらつら書いている。皮肉にも、これが今の時代の指標となる。うるせぇ、そう言って世界を疑い、自身を通せる大人はやっぱりカッコいいのだ。