辻占恋慕のレビュー・感想・評価
全19件を表示
崖っぷちの気高さ、言葉選びの鋭さに痺れる
大野大輔監督の描く物語世界では、いつも登場人物たちが何かしら崖っぷちに立ち、それでいてどこかその境遇を楽しんですらいるかのような異様な気高さを身に纏っている。作品の基調をなすのは膨大なセリフの応酬だが、その一つ一つを彩る心を突き刺す言葉選びとレトリック、一癖も二癖もある独特の論理は本作でも健在。それらは小さなうねりを生み、反復とズレの合間に矜恃を迸らせ、ラブストーリーとも、音楽映画とも、三十路の泥沼青春ロマンとも言いうる世界を、大野カラーで存分に塗りたくっていく。前作に比べてどこかシュッとした容姿へ変貌した主演俳優としての大野大輔も、蓋を開けてみると、厄介で偏屈でこうと決めたらテコでも動かない、いつもながらの彼。しかし今回は決して会話劇に終始せず、物語を展開させ、胆力を試すかのようなステージが用意されている。一枚殻を破り、新たな生態で歩みを加速させる表現者、作り手としての凄みが感じられた。
すべての“夢破れし者”へ
大きなくくりでは青春音楽映画ということになるだろうか。音楽に限定せずとも、演劇や映画、ダンス、お笑いなど表現者として“何者”かになろうと志し、ある者は才能や努力や幸運によって成功し、またある者はもろもろがうまくかみ合わずに挫折する。そんな表現者の栄光や挫折を描いた映画はこれまでにも多々あれど、「持たざる者たち」と銘打って青春の終焉を痛々しいほどに突きつける本作のようなタイプは意外に少ないのではないか。
細々とライブ活動を続ける三十路のミュージシャン、信太(大野大輔監督が自ら演じている)と月見ゆべし(早織)。対バンになった際に信太の伴奏をゆべしが買って出た縁で、信太は自身の夢をゆべしに託し、マネージャーとして彼女を売り出そうとするが…。
表現の世界でプロを目指すも挫折した人なら、2人の苦しさが痛いくらいに伝わるはず。数えきれないほどの“成就しなかった想い”への鎮魂…続きを読む
相変わらずの下北沢地雷文化。
演歌歌手の歌う歌の方がキャッチーで面白い。
歌の良し悪しは解らぬが、
演歌歌手自身が夢を諦め、本業の介護職に戻ると言っている。人生の幸福になる確率を考えて
そっちの方が良いと思う。
吉田拓◯さんをリスペクトしていると感じる。それくらいが救いかなぁ?
香坂みゆ◯じゃないんだ。僕は池袋の西口でコンサートやっている香坂◯ゆきを生で見たことがある。
映画にしないで、下北沢辺の笑劇場でやった方が良いと感じる。
さて、日本文化の低迷をパンデミックの影響にするが、パンデミックに関係なく右肩下がりは必然。そう、何もかも。
「良いから、まともな映画見せろよ!!」と突然キレるのは良いが、意味不明。自虐的にアイロニーとか入っているし、勿論デフォルメが極端で、
本音がどこにあるのかすら理解出来ない。これを平然の演じた事は少しは認めるが、こう言った突然キレるのが、大日本帝國のジジイが多いので、ちょっこっと驚いた。どうでも良いが。なぜなら
それ以外は、予定調和だからね。
最後の「辻占恋慕」って中島みゆ◯?
それぞれの答えへ
自由であるが故の不自由があったり
愛がある故に皮肉が生まれたり
夢がある故に捨てなければいけない物があったり
何を求めて進むのか?
ゴールは何処なのか?
人が生きて行く事自体がドラマだと思いました。
コロナ前にはよくライブハウスに通っていたので、なつかしい匂いがした...
コロナ前にはよくライブハウスに通っていたので、なつかしい匂いがした。
アイドル的な存在の女性アーティストのライブは客の大半がおっさんであるのは日常的な光景。
ゆべしのような雰囲気の女性アーティストもいた。
特別美人でもなく、不愛想で、歌も特別上手くないということでは人気も出ない。
終盤のマネージャーの暴走にはのけ反ってしまったが、なかなかおもしろかった。
独りよがり
ライブハウスに馴染みが深く、自身も演者として活動していたので気になり見に行きました。
しかし終始登場人物達の独り善がりさ、倫理観のなさが気になり、誰にも感情移入ができませんでした。書きたいテーマはわかるのですが、それ以前に主役たちがあんまりにもお客さんや同業者のことを考えていなさすぎます。彼女達はそもそも、音楽の何が好きで何がやりたくて歌っているのでしょうか?アイドルやラジオDJに対する敬意のなさも気になり、「こんなに性格悪ければそりゃ干されるわ………才能以前の問題だろ………………」という気持ちになり終始冷めた気持ちで見ていました。
夢を諦める葛藤や創作が認められない苦悩を描きたいのでしょうが、主役たちへの嫌悪感が先に立ち「自業自得だろ」という気持ちにしかなりませんでした。
歌は好きでした。
絶対売れないでしょ🎵 もちろんそれは関係ないのかもだけど…
最後のほう客に難ずる場面は、物事の本質が好きじゃなく雰囲気が好きな大衆相手に理解出来なくはない。
特に若かったら〰️
本人もこれで食べたいのか、理解してくれる人が多くいたらとかの思いはあるのか、はっきりすればって感じですねー
【”青春の終わり・・”歌の夢追い人たちの、夢を諦めきれない姿。けれども、このままでは愛する彼女が・・。切ない恋物語。女を愛する男の舞台上での下衆な観客たちに対する、長台詞シーンは圧巻である。】
ー 売れないロックデュオのボーカル信太(大野大輔監督兼脚本兼主演)は、相棒のギターにパチンコを優先され、シンガーソングライターの月見ゆべし(早織)に助けられる。
そして、二人は歌手とマネージャーとして、厳しい道を歩み始める・・。-
◆感想 <Caution! 内容に触れています。>
・月見ゆべし(恵美)を演じた早織さんの、ぶっきら棒ながら、母が立ったステージに、一度は立ちたいという想いが、ゆべしを支えている事が分かる。
・恵美も、信太も30歳過ぎ。ピークも、どん底も経験しないまま、ズルズルと先の見えない音楽生活を送る日々。
ー きついよなあ・・。けれど、二人は時に罵り合いながらも見えない壁に向かって行くんだよね。ー
■ある晩、信太が恵美の心模様を綴ったノートを読むシーン。
夢が綴ってあるはずのノートの後半は、黒…続きを読む
監督さんはこんな映画しか作れない自分に悪態をついている
プロ歌手を目指しながら、思い込みだけ強くて才能がなく努力もしない「ゆべし」と、これを献身的に支える、努力はするけれど能力のない「信太」の出会いと別れを描いた「痛い」筋書きです。「努力をすれば必ず報われる」などというような偽善的な脚本になっていないのが救いです。
でも、これを演じる役者さんはすごいなと思います。
映画の最後で「信太」役も兼ねた監督さんが、マイクの前で長々と悪態をつくシーンがありますが、あれはチャップリンの「独裁者」のパクりでしょうか。それにしては品がない。
最初は監督さんの怒りが分かりませんでしたが、長々と悪態を聞いている内にピンときました。
監督さんはこんな映画しか作れない自分に悪態をついているのだと
札幌での上映期間は一週間ぐらいでした。最終日に見に行きましたが、平日の夜だったので観客は数人(片手)、映画館の経営が苦しいはずで…続きを読む
深い。
売れないシンガー同士が
出会い、慕い、すれ違い…。
最初は何処にでもある恋愛物語と思いきや、コミカルな面もありつつ、悲しみ、プレッシャー、不安。そして最後の彼の愛し方…。
とても難しく、わかるんだけど上手く文字にできない感覚。
余談ですが、主演の男性がフットボールアワーの岩尾さんとチュートリアルの福田さんを足して2で割ったような感じで、要所で『あ、似てる♪』って思って少し入り込めなかった(^_^;)
凄く面白かったです。
才能の使い方と諦め方、夢の泥船の行方と姿はカッコいい
生まれ持った才能が、外に向かって放たれるとは限らない。それでも、信じてくれる人がいる。そんな夢の描き方と諦め方、どちらもカッコいいよ。
名前だけ聞いたことがあった『ウルフなシッシー』の大野大輔監督の最新作。このテーマを描くことに、監督自身は怖さを覚えなかったのだろうか。なかなか意欲的。台詞の角度が鋭利で面白いし、含みを持たせながら転がる日々にグイグイ引き込まれる。まだ自分は大学生だし、何も始めてないから笑えたりイラッとしたり出来たが、1つの諦めを覚えれば見方が変わる気がする。
才能がある。それは凄いことでも、矛先が万人でないと世間には認められない。そんな世界はどこにでも転がっているだろうし、形を変えて次から次へと出ているに違いない。その一方で、年齢や環境といった変化がもたらすモノも多い。そんな2人の最後の足掻きと、描いた未来。アーティストはそりゃ極めたいから…続きを読む
見て正解、大正解
主演の早織さんって誰だろう・・・調べてみたらなんと!時効警察の「真加出くん」じゃないですか!あぁ、素敵な女優さんになられて・・・別の意味で嬉しくなっちゃいました。
さてさて。
なかなか味わえない恋愛ストーリーでした。なるほどー、そーいうすれ違いもあるのか。本作
の作り手さんは同じ経験があるのかなぁ?「昔こんなことがありまして・・・」って話を直に聞いているような感じでした。「なぜ、二人がそーなっちゃっているのか?」ってところを多くを語らずに場面を澄み重ねていくあたりとても好みですし、クライマックスに向けてなかなか心を締め付けてくれます。
夢を追うことが青春って言うのなら、本作はれっきとした青春(恋愛)映画ですね。いわゆる恋人同士の、THE 恋愛映画のワチャワチャはありませんが、共有する「夢」と「愛」の線引きに苦悩する二人が切なくも可愛らしい。信…続きを読む
予想の100倍
人に勧められて観て、予想より10倍面白いなぁと思っていたら、最終的に100倍面白かったです。
月見ゆべし役の早織さんの不機嫌な顔、最高!あまりにはまり役なので、当て書きの脚本なのかと思ったら、舞台挨拶での早織さんはニコニコで、何やら光を放っていました。
信太役の大野さんは独特なお芝居をされる方だなぁと思ったら、エンドロールを観てなるほど!持ってるのは愛されボディだけじゃなかったのね。
台詞もいいし歌もいい、映像もいいし他の登場人物もみんないい。
これは誰かと語りたくなります。とりあえずもう一度観ます。
低周波とスタンガン
当日、映画館周辺でこの映画に決定して鑑賞。
印象に残ったのが、低周波を使った攻めるシーンとスタンガンを使ったところは衝撃的でした。
映画鑑賞後に早織さんとヨーロッパ企画さんのとのトークショーで監督の事が知れてとても良かったです。カセットテープを購入しなくて申し訳なかったです。
良く出来た音楽青春爆笑映画
全く売れなかった音楽家が、生活の為に音楽活動を辞めるが、音楽は辞められず。
結局、歌手のマネージャーになるのだが。苦労しても金にはならず、という人生では良くある話なのですが。台詞が面白いのと、最後がハチャメチャで良かった。
登場人物の誰にも感情移入できなかった
ヒロインの芸名が「月見ゆべし」とはケッサクである。「ゆべし」は全国的にバリエーションのある菓子だが、知名度は団子よりもはるかに下だ。団子は月見の際に供えることで有名なのに対し、ゆべしに有名なシチュエーションはない。つまり、月見団子は誰でも知っているが、月見ゆべしは聞いたことがない。どこまでもマイナーなのだ。
月見と言えば月見草が連想され、山崎ハコの「織江の唄」を思い出す。映画「青春の門」の主題歌となった歌だ。次の歌詞がある。
月見草 いいえそげんな花じゃなか
あれは セイタカアワダチソウ
作曲は山崎ハコだが、作詞は「青春の門」の原作者の五木寛之さんである。月見草とセイタカアワダチソウは花ひとつを見れば似ても似つかぬ花だが、黄色く群生するところが似ていて、遠くから見ればセイタカアワダチソウと見紛うこともある。本作品のヒロイン月見ゆべしは、遠く…続きを読む
生の音、ライブハウスはいいよ。
懐古系というほど古くもなく、いつの時代にもいる微妙な年齢の売れないミュージシャンの話。
主役の早織さんは歌も演技も魅力的で素敵だった。対バンから才能に惚れてマネージメントに回る男が監督だったりして、ダメな肉体とか話し方が好感持てた。そういえばラブラブシーンなかったな。
でこの手の話は2人がうまくいかなくなって終わるわけだけど、その終わり方、クライマックスがピンと来なかった。彼の怒りが凄い空振りに見えてしまったのだ。
私自身趣味でバンド未だにやってて思うに皆んな今は昔と違う覚悟の決め方してる感じがある。プロデビューを目指してる子も少なくなりました。インディーズで売れてた人がメジャーデビューしてポシャるの山ほど見たし、レコード会社の大量解雇が色々わかりやすかったよね、音楽業界のビジネスモデルが崩壊したんだ。
今のマネージャーはsns管理、配信、pv作り、録音など…続きを読む
CDの方が早いし安い
ライブハウスの対バンで知り合ったことが切っ掛けで30歳の売れない女性スナフキンのマネージャーになると共に恋人になった男の話。
ギターにすっぽかされて途方にくれる男に、1曲だけとヘルプでギターを弾いた女。
そして打ち上げからの流れで2人で飲んで、と始まって行くストーリー。
一応2人共インディーズとはいえレーベル所属、って趣味じゃないのね…チケットノルマ制だろうし捌けてる様にもみえないレベルだけど。
ネガティブレビューに傷ついたり、媚びたり迎合するのを嫌がるのも判るけれど、あなたは一体ナンボのモノよ何て感じつつも、音楽に対する思いとか、話し悪くはなかったのだけれど…ちょっと歳行き過ぎだし、肝心の唄の説得力が薄かった。
そ!と、前説は言ってることにスジが通っていればそれでも良いけれど支離滅裂な割に長かった。
最近の思い出し映画の中では抜きに出た1本
たまたまカレルゼマン特集を観にいった際に予告編を観て、このシンガーは誰?…早織?!ということでほぼ早織さん目当てで観にいって大正解。初っ端からグイグイと引っ張られて気づいてたら涙で終わっていた。
ライブハウスでの偶然の出会い、マネージャーと歌手(売れない)の葛藤の日々、そして… という青春の終焉のお話。会話劇が面白く、そして見たことのないこの茫洋とした俳優、しかもゆるんだ肉体の俳優は誰だと思ったら監督だった。それでか。ほぼ1対1の会話劇になっている。カメラが手元だけ映し、人すら映っていなくとも会話は進む、そして歌の挟み方が気持ちいい。そしてまさに30歳前後のこのままどうしたらいいという時代の怖さを体現したかのような睨みをきかす早織の目つきと歌声がいい。まあ予告編でそれを観たくて行ったのだけどたっぷり、そして映画としてもただひたすらにそれを映し続け、最後に人がたくさん集まって歌うはずの…続きを読む
全19件を表示