「不快に思うかもしれません」私のはなし 部落のはなし コビトカバさんの映画レビュー(感想・評価)
不快に思うかもしれません
205分、途中休憩ありという上映時間の長さに、どうしようか上映開始1時間前まで迷い、一か八か観に行った。
自分の住んでいる所には、映画に出てくるような人権センターのような施設もないし、人権の授業のようなものもなかった。
普段の会話で、出身中学を聞かれることはあっても、生まれの地区を聞かれたことはない。
なので、昔"アイドル高岡早紀"を目当てに『橋のない川』を観に行った時も、いまいちピンとこなかった。
「寝た子を起こすな」まさにそれで、この映画に出てくるのも西の地域。自分の中に部落差別という問題は、はなから存在しないものだった。
大人になって、他地域の人と交流が出来て初めて、部落問題を知ったに等しい。
同窓会の件で「怖いと思う人もいるかもしれない」と言った同級生に「何故か聞いたみたらいい」とあったが、それを聞いてしまったら“怒鳴り込んでくる人"と一緒ではないかとも思った。
悪気はなかったかもしれない、しかし"人権センター"という名称は重く感じる。正直きっと自分も躊躇してしまうかもしれない。差別意識ではなく無知、何をする施設か知らないから。
今の所にいる限り、この先も部落問題とは縁がないかもしれない。
差別意識はあると言っていた女性が、この問題はなくならないと言っていたが、差別する人と差別を盾に利益を得る人が両方いる限り、きっとなくならない。
この映画の制作意図ははっきりとは分からないが、率直に興味深い映画だった。
「差別意識はあると言っていた女性が、この問題はなくならないと言っていた」の場面で私はドッキリした。私の考えもそこに行きついていたから。後半彼女の優生論をあざ笑う自分自身に少し寒気をすら覚えた。無知覚、無意識に人の心を傷つけること、それもまたりっぱな差別だと思う。人は差別から逃れられない。