劇場公開日 2022年9月1日

「伊坂幸太郎さんの日本にあるまじきスケール感がハリウッド映画化でバッチリフィット!!  殺し屋犇めく新幹線でケチなスリのブラピが襲われトホホのホ...なハードラック映画」ブレット・トレイン O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0伊坂幸太郎さんの日本にあるまじきスケール感がハリウッド映画化でバッチリフィット!!  殺し屋犇めく新幹線でケチなスリのブラピが襲われトホホのホ...なハードラック映画

2022年9月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ブランクを経て復帰したばかりの裏社会のスリの仕事がマフィアのボスの息子の身代金強奪だったことにより、舞台となる新幹線内で繰り広げられるボスを付け狙う殺し屋たちの抗争に巻き込まれていくアクションスリラー映画。 ビターで皮肉に満ちたストーリー展開にほんの少しの救いがウリの伊坂幸太郎さん原作作品なのですが、本作に関してはめっぽうコメディー色が強く、ラストは爽やかに終わらせてくれる上にスプラッター描写も控えめのため、そのあたりのいつもの伊坂さんイズムが苦手な人にも楽しめるアクション映画に仕上がっています。
 そして何より、いつもはアクション作品では超強い(無双ではないのでたまにラッキーパンチもらったりするけどそこも良い)かもしくは戦いを避けて飄々と上手く立ち回ることの多いブラピが、やる事成す事悉く裏目に出て余計な手間を負い、しかも強さはほどほどなうえに相手を殺さない、というしみったれたオジさんぶりを披露してくれたことが本作の最大の功績だと思います。
 加えて、真田広之さんの雄姿・・・序盤から中盤にかけては電話でのやり取りのみですがそこから車内へ参戦し、足取りの覚束無い杖付き老人の見た目は何処へやら、遂に誘き出した"ホワイト・デス"との一騎打ちでチャンチャンバラッチャーンバララ~ッです。 還暦を過ぎたとのことですが、ハリウッドでは60~70代の現役のアクションスターが沢山居ることですし、真田さんにもまだまだアクション頑張って欲しいと思ってたところだったので本作での切歯扼腕ぶりは頼もしい限りでした。
 血生臭いアクションシーンよりも殺し屋たちの軽妙な掛け合いのほうが際立つアクションコメディーなので、いわゆる”ポップコーンムービー”としてみれば申し分のない出来だと思いますが、一方でいつもの伊坂さん作品のようなダーティーさやミステリー要素を期待すると些か肩透かしな印象を受けるかもしれません。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)