「ハリウッド味が強いが、しっかり伊坂幸太郎っぽい」ブレット・トレイン といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッド味が強いが、しっかり伊坂幸太郎っぽい
私は伊坂幸太郎のファンです。
2009年までに刊行された作品は全部読んでます。多忙になってしまったので、それ以降の作品はほぼ読めていません。本作の原作となる『マリアビートル』は2010年に刊行された作品ですので、残念ながら未読の小説となります。殺し屋シリーズの前作にあたる『グラスホッパー』は読みましたが、世界観が共通しているだけで物語上の繋がりはほぼ無いそうです。
そんな伊坂幸太郎ファンでありながら原作未読の私が、ハリウッドで映画化された本作を鑑賞した感想は、端的にめっちゃ面白かった!!!伊坂幸太郎っぽい伏線や会話劇はしっかり含みつつも、ハリウッドらしいド派手アクションや奇抜な日本描写も盛り込んだ、お腹いっぱいの作品に仕上がっています。
劇中の日本描写などは昔のアメリカ映画にありがちなトンチキジャパンなので、ここに違和感を感じて映画を楽しめなくなってしまう方もいる気がします。ただ、私は結構そういうの好きなので、全く気にせず楽しむことができました。伊坂幸太郎の魅力と言えば、登場人物同士の軽妙な掛け合いと、恐ろしく綿密に練り上げられた構成と伏線にあると私は考えていますが、本作でもそれらの魅力は健在でした。
まだ未鑑賞の方は、ぜひ観てみてほしいです。今劇場で公開されている作品の中では、最もエンタメ性の高い映画です!!
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運が悪く落ち目の殺し屋であるレディバグ(ブラット・ピット)は、「東京発京都行の新幹線に乗り込み、ブリーフケースを盗め」というミッションを請け負う。ケースを盗んで次の駅で降りるだけの簡単なミッションだったのだが、何故かその新幹線には彼以外にも多くの殺し屋が同乗しており、不運が重なりなかなか電車を降りることができなくなってしまった。次々と襲い来る殺し屋たちは、何のために新幹線に乗ってきているのか。そして京都で待ち受けるものとは……。
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伊坂幸太郎の小説は過去に何度も映画化されています。
『陽気なギャングが地球を回す』『重力ピエロ』『オー!ファーザー』『グラスホッパー』『アヒルと鴨のコインロッカー』『アイネクライネナハトムジーク』『ゴールデンスランバー』などなど。
しかしそれらの映画、正直そこまで評価が高くありません。
私個人的には『アヒルと鴨のコインロッカー』とか『ゴールデンスランバー』あたりは結構楽しめたんですが、『陽気なギャングが地球を回す』はこの世の終わりのレベルでつまらなくて、私の生涯ワースト映画です。原作があんなに面白かったのに、どうすればここまでつまらない作品が出来上がるのかと映画を観終わって愕然としたのを覚えています。
「伊坂幸太郎原作は映像化には向いてないのかな」なんて考えていたんですが、本作を観て考えを改めました。「映画的なアプローチをちゃんとやれば、伊坂幸太郎原作をこんなにも面白くできるんだ」と感動しました。
とにかくエンタメ作品としてめちゃくちゃ面白い!!
ハリウッド仕込みのド派手なアクション・キャラクター同士の軽妙で愉快な掛け合い・ネオン煌めく奇抜な演出・ステレオタイプなトンチキジャパン。最高ですね。
原作から大きく改変されている部分もあるらしいので、原作既読の方はもしかしたらそこに拒否反応を示すかもしれないですね。私は原作未読なのが功を奏して、全く違和感なく楽しむことができました。
キャラクターがそれぞれ個性的で魅力的ですし、しっかり物語上で役割を果たしますし、群像劇として非常にクオリティが高い。ここも伊坂幸太郎の魅力の一つです。私のお気に入りキャラはレモンですね。何でもきかんしゃトーマスに例える子供のような一面を持ちながら、観察眼に優れているため相手の裏の顔を見通す能力を持っている。相棒であるみかん(タンジェリン)との関係性も良かったですね。
私がこれまで鑑賞した伊坂原作映画の中では間違いなくトップレベルの面白さでした。
頭空っぽにして観ても楽しめるエンタメ作品になっていますので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいですね。オススメです!!