劇場公開日 2022年9月1日

「血塗れなのにポップでカラフル、ヘンテコな日本が楽しめる痛快なバカ映画」ブレット・トレイン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0血塗れなのにポップでカラフル、ヘンテコな日本が楽しめる痛快なバカ映画

2022年9月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

結論、メッチャクチャ面白いです。真面目な人からしたらホワイトウォッシュだと怒りそうですけど、ヘンテコな日本を舞台にした『デッドプール2』みたいなノリの人がバンバカ死ぬのに軽快極まりないバカ映画です。ヘンテコな日本を舞台にした映画をだいぶ参考にしてるっぽくて、まずはやっぱり『キル・ビル』の影響が大きいかと。あとは『GODZILLA ゴジラ』、『ウルヴァリン : SAMURAI』、『モータルコンバット』、『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』といった比較的最近の作品からの影響も濃厚。それは真田広之、アンドリュー・小路、アーロン・テイラー=ジョンソンといったキャスティングにもリスペクトが感じられます。全編ほとんどセット撮影、新幹線の中というワンシチュエーションで延々繰り広げられる殺し合いは極めて凄惨なのにカラフルでポップ。ここで注目しておきたいのは撮影監督のジョナサン・セラ。『ジョン・ウィック』でデイヴィッド・リーチと組んで以降、『アトミック・ブロンド』、『デッドプール2』、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』と連作していて、ブラッド・ピットとも『ザ・ロスト・シティ』で組んでます。今回はギラついたネオンや新幹線車内の照明といったアイテムで全編を鮮やかにコーディネートしています。特筆すべきは謎の女子学生プリンスを演じるジョーイ・キングの美しさをかなりねっとり撮っていること。あらゆるキャラを翻弄しまくるファム・ファタールを大きな瞳だけで表現するかのような怪演を見事に捉えています。

意外だったのは主人公がほとんど活躍せず悪運だけで窮地を切り抜けていくところ。この辺は『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』の主人公や『デッドプール2』のドミノっぽいキャラクターだなと思っているところでドミノを演じていたジジ・ビーツが登場する辺りは狙っているのかも知れません。タンジェリンとレモンという殺し屋コンビもユニークで、恐らくは『パルプ・フィクション』のヴィンセントとジュールスへのリスペクト。旧約聖書を引用するジュールスに対してレモンが引用するのが『きかんしゃトーマス』というのが笑えるわけですが、トーマスネタがしっかりストーリーに絡んでいる辺り物凄くシャレています。散々フザケ倒しているのに冒頭からポンポンばら撒いている伏線を一気に回収する展開は強引ではあるけど爽快。そして何といっても真田広之の大活躍が眩しい。『モータルコンバット』でも全然衰える様子のない鋭い身のこなしを披露していましたが、本作で見せる重量感を伴った殺陣は近年ではベストと言えるでしょう。

サウンドトラックがまた最高で、誰もが知っているあの歌この歌の別バージョンが採用されている上に、クライマックスで流れるのがあの人のあの歌なのには思わず飲んでたコーヒーを噴きました。この選曲チョイスはアラフィフの日本人だと思うと同時に、この選曲は日本以外ではチンプンカンプンなんじゃないのかと心配になったりしました。

さりげないカメオ出演も豪華で、これは『ザ・ロストシティ』と『デッドプール2』を観ている人にはボーナスポイントと言えるかも。

よね