「【WR】鋼の錬金術師実写映画化RTA(6時間42分)【バグあり】」鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
【WR】鋼の錬金術師実写映画化RTA(6時間42分)【バグあり】
鋼の錬金術師実写映画化RTAなら間違いなく世界記録。
先に申し上げておきますが、想像よりは悪くなかったです。
というのも、「三部作の中で一番酷い」と言っている映画レビュアーさんが何人もいたので、一作目が嫌いな私は「あれより酷いのか」と思って、ハードルが下がりきっていたので、実際見てみたら「思ったより悪くないじゃん」って感じでした。
ただ、だからといって「面白かった」とは到底思えません。前作と比較して戦闘シーンなどの見せ場がかなり多いので「退屈しなかった」とは思います。やはり原作のストーリーを三部作で詰め込むには尺が足りな過ぎたのか、あまりにも駆け足でストーリーが進むし、あまりにも展開が急です。原作を読んでいる私ですら急展開に面食らってしまったので、果たして原作未読の方は本作をどのように鑑賞したのかが非常に気になります。
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失った体を取り戻すために賢者の石を求める錬金術師のエドワード・エルリック(山田涼介)とアルフィンス・エルリック(水石亜飛夢)の冒険を描いた『鋼の錬金術師』シリーズ三作目にして完結編。ホムンクルスたちから「お父様」と呼ばれる謎の人物による国全体を巻き込んだ巨大な陰謀に、エルリック兄弟は巻き込まれていく。
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全27巻ある原作を頑張って三部作に収めようと、ストーリーをとにかく消化することだけを考えているような構成でした。一作目からその傾向はありましたが、完結編である本作はとにかくストーリーのキーとなる人物を出しまくって台詞で全部説明させて人気のある名言もとりあえず言わせとけみたいな内容になっていて、最速で原作のストーリーを消化することだけに特化したような映画です。ゲームのRTA観てる気分になります。多分これが一番早いと思います。
色々文句言いたいところは多いんですが、私が本作を観ていて一番キレ散らかしたのは「戦闘SEのショボさ」ですね。原作でもストーリー後半は戦闘シーンが多いので、本作もまた2時間20分くらいの映画の中で、5~6回くらいの戦闘シーンを挟みます。殴ったり蹴ったりだけでなく、銃火器や戦車や錬金術も盛り込んだ迫力の戦闘シーンなんですが、如何せんSEがあまりにもショボくて、思わず鑑賞中に「何だこれ」って声を挙げてしまうくらい酷かったです。
具体的に言えば、北部の要塞ブリッグズでの、ホムンクルス・スロウスとの戦闘ですね。極寒の屋外にスロウスを追いやるために戦車で押し出し、エドの最後の一撃でスロウスを崖下に突き落とすシーンです。崖下に落とすためにエドが放った蹴りのSEがあまりにもショボい。しかもショボいSEなのに、スロウスの巨体が金属製の手すりを突き破って崖下に落ちていくほどの破壊力がある。視覚情報と聴覚情報が完全に矛盾しているので、めちゃくちゃ気持ち悪いんです。
キャラクターの扱いについても、原作ファンとしては文句があります。
全体的に、キャラの扱いが雑。特にイズミとオリヴィエが雑。時間が無いから仕方ないところはあると思いますが、原作で重要な役割を持つ非常に魅力的なキャラクターたちが、物凄い適当な扱いを受けている気がして気に入りません。あと、作中でも最強の呼び声高いキングブラッドレイ大総統も、イマイチ強そうに感じませんでした。舘ひろしさんのアクションの問題なのかもしれませんが、強さに説得力が無いんですよね。原作やアニメのブラッドレイは「こんな奴にどうやって勝つんだよ」という絶望を与えるキャラクターだったので、そこを何とか再現してほしかったという残念さがあります。
また、構成に無理が出ているような気もします。
鋼の錬金術師という漫画は、他の漫画と異なりストーリーの区切りになるような展開があまりなく、27巻の漫画全体で起承転結や伏線回収が完成しているという作品です。そのため、ストーリー序盤の展開が、終盤の展開に大きな影響を与える伏線になったりしているのですが、1作目と2作目で色んな展開を端折った皺寄せが、完結編である本作に全部集まっているような気がします。事前の説明や伏線が無いので、展開が急に思えてしまう場面が多いんです。終盤の感動的なシーンも、展開が急すぎて薄ら寒いシーンになっている気がします。
細かな部分で気になるところも多く、「適当に作ってんだろうな」ってのが感じられます。
例えばコンクリートからはみ出た鉄筋がエドの左腕に刺さってしまったシーン。右腕を取り戻した後に右手で鉄筋を抜くんですが、それがあまりにも簡単に抜けるし痛がる描写も薄い。また、その直後に最後の錬成をするエドが、無傷の右手じゃなくて怪我して流血している左手で錬成陣を描いているのも違和感がありました。
映画を観る上で、このような違和感というのはノイズでしかありません。演者はこういう細かいところにもしっかり気を配った演技をしてほしいと思いますし、監督は演者に対して責任もってディレクションするべきだと思います。
決して悪いところばかりではありません。何ヵ所か普通に面白いと思った部分はありますし、コスプレ感はあるものの、キャスティングは原作キャラクターの再現度が高くて結構良かったと思います。ただ、全体的に見ればやはり粗が目立ってしまっていて、とてもじゃないけど人にオススメできるような作品では無かったように感じます。