「声を殺して泣く女たち」シスター 夏のわかれ道 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
声を殺して泣く女たち
悪法ってのはドラマを産むのだな。
中国でもこんな作品が撮れるのかと驚く。
確か現在、その政策は廃止になったと記憶してるのだけど…こんな余波が吹き荒れてたとは思いもよらず。
女子の境遇の劣悪さったらない。
人権どころの騒ぎではない感じで、最早「不要」とのレッテルを貼られてるように見える。
色々とお国の事情はあるにせよ、やにわには信じ難いシュチュエーションのオンパレードだ。
物語の骨組みはよく出来てるなぁと思うのだが、結末としては消化不良な感じだった。
一人っ子政策による軋轢を赤裸々に描いていた割には、無難な幕切れだったように思う。
前半では、まさに子宝とも持て囃される長男の暴君っぷりも強烈に描かれてたりする。当時、我儘に育てられた男子の傍若無人っぷりを書いた記事の記憶が薄っすら蘇る。目に余るのが蔑ろにされている女子の存在だ。
…産まれた瞬間に死産って事にされた子達も数多くいるんじゃなかろうかと。
そこまで人でなしではない事を祈るばかりだ。
主人公や主人公の叔母、主人公の母の世代、様々な世代の苦悩が描かれてる。
主人公の彼氏の軟弱さったらない。箱入り息子なんて言葉がよく似合う。当時の女性たちにとって結婚は、奴隷契約と同じ意味を持ってたのではなかろうか?
息子を産めなかったら一族から袋叩きに合いそうだ。なのだが母性は世界共通らしく我が子への愛情は深く、それ故に苦悩も我慢もするのだろう。
…かの大陸で、女性に産まれた時点で負け組のように感じてしまう。
転院する妊婦さんのシーンとかえげつなかった。
冒頭の携帯のフォルダには弟と両親の写真しかなく、自分の写真は1枚もないとか…おそらくなら父親の携帯ではないかと思うのだけど。
最後の誓約書とか…会う権利まで奪われるものなのだろうか?そしてその誓約書の豪奢な事が恐ろしい。
色々とかの国の社会情勢に沿ったエピソードであり常識なのだろうけど、もう理解と想像の外側にあるような気がして薄寒い。
大陸側の人達もそう感じるのだろう、きっと。
作品的には☆3.5とかが妥当にも思うけど、あまり見る機会がない中国作品って事と、とにかく芝居がべらぼうに上手い!!なので+0.5
子役もそうだけど、主人公も主人公の叔母もピカイチだ。ナースルームで女医にくってかかる時の目の色とか尋常じゃないのだ。
しばらく彼女を観たいが為に中国作品を漁りそうなくらいである。
結局は彼女も一人っ子政策の捻れを甘んじて受け止める。ハッピーエンドでなくてもいいのにと思うし、そうでもしなきゃ検閲にひっかかるのだろうなと邪推する。