「女性として、人間として、姉として。号泣の傑作。」シスター 夏のわかれ道 mamiさんの映画レビュー(感想・評価)
女性として、人間として、姉として。号泣の傑作。
ずっと両親とは疎遠にしていた看護師の女性、突然の両親の死によって会ったこともない弟の保護者を押し付けられる。
今なお影を落とす一人っ子政策、家長制度、女性の古い役割の押し付け…もがく彼女を美しい光や色の中で繊細に描いた傑作。中国映画、時々すごいの来る。
同じように一人っ子政策を背景に二つの家族の人生を描いた「在りし日の歌」も素晴らしかった。
余分な説明台詞がなく、小物の使い方もすごく上手い。おばさんの西瓜とマトリョーシカには号泣。もう号泣。声出そうになった。上手い、こういうの凄まじく上手い。今思い出しても泣きそうになる。上半分だけだったり、もう中途半端になってしまったマトリョーシカ。諦めた夢を思い、長年捨てられずにいたのだろう。
しかしラストには正直がっかりした。こんな傑作なのに??ラストだけ。やっぱり彼女が背負うんかーい…となり。終盤の展開も少し雑というか、おじさんが引き取ったりまた戻ったり、やっぱり養子に出したりと短絡的に動いているように見えたし、「やっぱりお姉ちゃんが引き取るのが一番だよね(感動)」とはなって欲しくなかった。それでは旧時代と変わらない。おじさんが育ててやるか、もしくは養子に行った先の夫婦が「いつでも会いに来てね」と言ってやって欲しかった。
この作品、観る人の性別や年代の違いによって、見方も感想も変わってきそうだ。性別や年代によっては、彼女が結局弟を引き取るラストを美しいハッピーエンドと感動する人も多いかもしれない。もちろん姉弟仲良く暮らすことも素晴らしいことだ。しかし、あったはずの彼女の未来や夢、希望は?お母さんのように肉まんを作ってあげているシーンは、正直悲しくなってしまった。しかしこれが現代でも中国の現実なのかもしれないが。
いや、ラストのその先があると信じておくことにする。彼女は弟と北京に行く。お金はあるはずだから、弟を抱えながらも夢に向かっていく。そう思いたい。