劇場公開日 2022年11月25日

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「スイカのシーン」シスター 夏のわかれ道 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5スイカのシーン

2022年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

誰にでも過去や事情を背景に、事によっては「譲れない」ことがあります。そして、他人の介入は当然のことながら、むしろその「過去や事情を知る親類」だからこそ、許しがたく触れてほしくない「琴線」があるものです。
突然の両親の死から、それをきっかけに初めて会うこととなる弟・ズーハンの養育を押し付けられることとなるアン・ラン役のチャン・ツィフォン。自分の過去のしがらみと、否が応でも比較対象として見てしまう「弟」、そして「両親」への想い。複雑な心情だからこ自分の言動に自己嫌悪したりと、難しい役どころを見事に演じています。
それにしても、小憎らしさも含めて可愛らしいズーハン役のダレン・キム。もうズルいです。あんなの見放せないに決まってます。そして、両極端にも思える(母方の)叔父と(父方の)伯母がそれぞれ素晴らしい。特に「(伯母とアン・ランの)スイカのシーン」、姪に甘い真ん中の部分を掬って食べさせ、自分はその余りを切って食べつつ、姪へ優しく気遣った言葉をかける。もう思わず落涙しそうになりした。
おそらく、現代の中国映画ではこれでも「意欲的」なのだろうと思える(まだまだ検閲は厳しいらしい)問題提起として「男性優位な社会と一人っ子政策」や「ヤングケアラーの問題」、また「ネットでのプライバシーの拡散」など、一昔前からしっかりアップデートされていて単に「犠牲に感動をみる」ような陳腐なものにしていません。
それにしても中国人の喧嘩、特にキレた女性は近寄りがたい。でも、よく知ればそれは「愛情深さ」だからこそと気づき、その尊さを感じます。良作でした。

TWDera