「人肉」フレッシュ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
人肉
プロモーション画像ではDaisy Edgar-JonesとSebastian Stanがいて、赤地にサイケデリックなゆがみでFreshとロゴされている。(filmarksのサムネで使われている手パックとは違う画像です。)
映画をよくご覧になる方ならご同意いただけると思うが、プロモーション画像をパッと見て「センスいいな」と感じた映画は、たいてい映画もいい。
まっとうなプロダクトは映画以外もいいのであって、ポスターデザインはダメだけど映画は良かった──というパターンはあまりない。(と思う。)
監督はmimi caveという人で来歴にはミュージックビデオやショートがあったが(長編)映画はこれがデビューになっている。が、演出は確か。センスも画像に感じたとおりだった。
映画監督が初回作品からプロフェッショナルな素地をもっているのに接するたび日本映画と比較してしまう。この稟性なセンスの格差はなんなんだろう。
まあそれはいいとして。
海外ホラーにはアスター級の大物も次々にあらわれるが、ぴりりとからい山椒な小品にもたびたび出くわす。さいきんだと(じぶんの見た範囲なので網羅性はないが)スマイル、ナイトハウス、ボディーズボディーズボディーズ、The Rental、The Stylist、セイントモードなど、小粒だけど光るところをもったホラー、Freshもそんな佳作だった。
ヒロイン役ノア(Daisy Edgar-Jones)はマッチングアプリで出会いをさがしていて冒頭その失敗例からはじまる。
カニバリズムをあつかうホラーだが、一方で噛み合わない男女のデート描写が妙にリアルで可笑しい。
批評家も肯定に振っていてRottenTomatoesは82%と81%、imdbは6.7だった。
バッキーバーンズのSebastian Stanがこの映画では人肉食道楽をやっていて、若い女を捕まえて監禁し切除した部位を自分で消費したり富裕層に提供したりしている。若い女なのは、それがいちばん美味しいから。
ノアも捕まるが、演技で信頼を得て口淫するところまでもっていき陰茎を食いちぎって復讐を遂げる。
とはいえスラッシャーではなくコメディが主意で、言いたいのは男女関係の形骸性みたいなもの。明るいBerlin Syndrome(2017)という感じ。
ようするに意思疎通ができていない男女間は、勘違いしている男と、たんに力に屈して従順なふりをしているだけで常にその状況から逃げようとしている女の関係性のようなものだ。──と映画Freshは言っている。
主人公ノアはそういう気遣い(勘違いする男と調子を合わせる自分というポジション)をする出会い系デートにほとほと嫌気がさしている。
そんな彼女の前に現われたスティーヴ(Sebastian Stan)が珍しく当たり男かと思ったら人肉食いで、監禁して生かしながら部位を切除し食っていくとかぬかしやがった。(生かしておくのはFresh(鮮度)重視だから。)
結論はツいてないことと世にいい男がいないことへの嘆き。ゴアは控えめでEdgar-JonesとStanの尻アゴを見くらべながら楽しめた。