「独創的な意欲作。だからこそ勿体無く感じる部分も。」神は見返りを求める 今日は休館日。さんの映画レビュー(感想・評価)
独創的な意欲作。だからこそ勿体無く感じる部分も。
毎度毎度、あまり見たくない人間の一面が大好きなのかとお見受けする吉田監督。『ヒメアノ〜ル』は快作でしたね。あれ以来、気に留めてるです。
今回はYouTube界隈を舞台に、人間の嫌になる程の軽薄さを、シリアス、コメディ、ホラーなどごった煮感のある「妙な作品」として仕立てています。
演出含めてノンジャンルな感じ、とても良いです。描こうとしているものも、独創的で好み。役者さんのチョイスや演技も素晴らしいですね。「本物のYouTuberを使ってるんじゃないか?」と思えるほど、YouTube界隈の表現はリアリティがあります。そこのディテールは今作の肝の一つですから。
ただ、作品全体としてYouTubeを表現することに入れ込みすぎてるかな……という印象も少し。これ「YouTuber批判」とか「SNS批判」みたいに表層的に受け止められかねないかなと。「インターネットで希薄化した人間性」みたいな。
まぁそういう感想を抱く鑑賞側も含めて「いやぁ人間って軽薄w」っつーのも嫌いではないですが。
また作品の全体的な趣向や、描こうとしているものは独創的だと思うのですが、それを表現するシナリオが少々詰まりきっていないかなぁ、と。
意図的な部分もわかるのですが、途中「胸糞スッキリ系バラエティの再現VTR」みたいになってしまっていて。後半に向けたフリだったんすかね。胸糞が前に立ちすぎてしまっていて。
ラストシーンもちょっと唐突。「普通に終わらせない」みたいな、作品からはみ出た作り手の意図を感じてしまいました。サラッとスッと、シンプルな余韻が欲しかったかも。
作品全体として、とても独創的で志の高い意欲作だと感じます。人間の醜悪さを時代性を交えてポップに描く試みは、ポン・ジュノ作品を彷彿とさせる。
だからこそ、要所でちょっと足りないと思うところも。物凄い作品になり得る可能性を感じるだけに。