「暴動の街のささやかな生活」キラー・オブ・シープ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
暴動の街のささやかな生活
知られざるアメリカの黒人名監督と言われるチャールズ・バーネットの作品。70年代ロサンゼルスのワッツという街に暮らす黒人たちのささやかな営みを描いた作品で、確かに隠れた名作と言われるだけはある。どうして、これが知られざる名作になってしまったかというと、音楽の版権の問題が大きかったようだ。学生時代の卒業制作として作ったのでその辺は意識が甘い部分があったんだろう。
スラム街であるこの街の住民のほとんどが黒人で、60年代に起きた「ワッツ暴動」が起きた街として知られてしまっている。スラムを舞台にした作品だが、この作品はことさらにギャングが出てきたり、抗争などを取り上げているわけじゃない。むしろ、市井の人々のつつましい生活をリアリズムで撮り上げ、ささやかな幸せを噛み締める姿を捉えている。
往年のケン・ローチの映画のようなみずみずしさと人々を見つめる温かい視線を持った作品だった。ちょっと危ない遊びに興じる子どもたちの無邪気さと、タイトルの由来となっている、主人公一家の父親が従事する羊の屠処理がとても印象深い。
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