「相手の顔を見て話すということ」LOVE LIFE 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
相手の顔を見て話すということ
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冒頭、息子のオセロ大会優勝のお祝い、兼ねて父の誕生日祝いのサプライズと、晴れやかな日のはずなのに、どうも不穏な空気に満ちあふれている。一連のシークエンスで、夫婦と息子の関係、それぞれの職場、親との関係、さらにはキーアイテム(オセロ、手話、ベランダのCD)を描いてみせる手際は鮮やか。そして、不慮の事故で息子が亡くなり、葬儀会場に行方不明だった実の父である元夫が突然現れ、狼藉を働く。
さあこれからどうなる、と本編に入るわけだが、どうもその後の展開が甘い。作者はあえて登場人物の言動に感情移入させないように作っているとしか思えない。元カノのシーンとか要るかな…
元夫は聾唖者であるため、手話を使い、互いに相手の顔を見て感情を読み取りながら会話する。一方、現在の夫は、相手の顔を見て話すことができない。人と人がどうしたら理解し合えるのか(そもそも理解することができるのか)がこの作品のテーマで、ラストシーンに繋がっていくことはわかる。それにしても、手話以外のセリフや独白は、上滑りな感じがしたが、それも作者の狙いどおりか。
「ドライブ・マイ・カー」に続き、韓国手話が使われていたが、元夫を韓国人に設定した意図や効果はわからなかった。妻が韓国行きフェリーに飛び乗ったが、パスポートはあったのだろうか…
役者陣は頑張っていたが、微妙なところ。永山絢斗の役は、誰がやっても難しかっただろう。
ラスト、タイトルが出るタイミングとその後の長回しにじんわりときて、後味は良かった。
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