劇場公開日 2022年12月23日

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「“利己的な遺伝子”のプログラム」かがみの孤城 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5“利己的な遺伝子”のプログラム

2022年12月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年最後にもう一本位劇場で観たいと思い選んだのが本作。
漫画が原作のアニメだと思っていたら、本屋大賞に選ばれた小説のアニメ化という事で、原作者が映画ではアニメ化して欲しいとの要望があったらしい。

予告編からファンタジーであり思春期の少年少女の物語というのは分かっていたので、七十近い年寄りが観るのもどうかと思ったのだが、丁度読んでいる本と内容的に少しリンクするのでないかという興味から鑑賞しました。
それは私の贔屓インフルエンサーの岡田斗司夫氏が盛んに読め読めと推薦している橘玲著の『バカと無知』という本で(まだ読んでいる最中なのですが)、内容は人間社会の問題が何故起こるのか?の種明かし的なものでした。今回はその本と本作にどの様な繋がりがあるのか?を頭の中で整理したくなりました。

本作では思春期の中学生の心の問題が設定として横たわっているのですが、この問題って結局のところ人間社会全体の問題と変わらないという気がしたので、その確認のために観ておきたかったのです。
なので、今回は『バカと無知』と『かがみの孤城』両方の感想になると思います。

『バカと~』の最初の章で「生物は進化の過程で生存と生殖を最適化するように“設計”されてきた」「このきびしい競争“自然淘汰”に勝ち残る進化論では“利己的な遺伝子”のプログラムが生得的に埋め込まれている」とある。
これだけでこの本の概要は大体分かると思うのだが、人間にはバカ・普通・優秀と能力差は確実にあり、その分布は大体ベル状の曲線であるのだが、全ての人間に上記のプログラムは働いているため、社会に問題が絶えないのであり、イジメ・仲間外れ・誹謗中傷・ハラスメントなどの類も、確実にそのプログラムが正常に働いてるからこそ起きる問題であって、なのでそれは子供社会だけの問題では当然ないという事が言えます。

『バカと~』はまだ途中なので結論がどうなっているのか分かりませんが、本作の方は避けては通れない人間社会の只中で、深く傷つかず上手に生きる為の模索であり提示だったと思います。
大人は決して子供だけの問題として捉えず、子供はこの不幸が自分だけの問題だと捉えず、助けを求められる人も周りには必ずいる事を忘れなければ(絶望さえしなければ)何処かに解決の糸口はある筈だというのが、本作のメッセージだったように思います。

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シューテツ