劇場公開日 2022年9月30日

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「彼が弔った人々が白鳥になって現れて、彼も白鳥になって一緒に飛び去る位のラストシーンを期待したかったが…」アイ・アム まきもと KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0彼が弔った人々が白鳥になって現れて、彼も白鳥になって一緒に飛び去る位のラストシーンを期待したかったが…

2023年6月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

英国映画「おみおくりの作法」に号泣し、
その舞台を我が故郷に移し替えた作品だった
ので比較鑑賞した。

「おみおくり…」との主な設定上の違いは、
・主人公の空気が読めなく、
 さっしの悪い人物像が
 印象付けられる一方、
 潔癖症については
 それほど強調されていない。
・引き取り手のない遺骨の保管場所を
 市役所内にすることによるトラブルを
 大きな展開要素にしている。
・主人公の個性の強調のために、
 葬儀屋役と警察官役を新たに配した。
・初めて芽ばえたかの恋心を強調せず、
 主人公の死の原因ともしていないこと。
などだろうか。

そして、「頑張った」の台詞や“白鳥“を
モチーフにしているのが印象的で、
原作の各エピソードを我が郷里の風土要素に
上手く翻訳して織り込んではいた。

しかし、「おみおくり…」での、例えば、
女性が2階の窓辺にいる構図を
繰り返し用いる中での
主人公の通らない最後のシーン、
アルバムを新調する主人公の心、
積み重ねた本を壊れた椅子の足代わりに
している親子の同じ対応、
弔い人の元戦友が用意した主人公のいつもの
ものにそっくりな食事、
お茶に誘うことで情愛を暗示したり、
主人公が準備した父の葬儀で
彼の姿を探す娘の描写、
等々を思い浮かべると、
残念ながら、演出力に格段の差を感じた。

また、「おみおくり…」のラストシーンでは
随分と感動させられたが、
この作品ではそうはならなかった。

それは、この作品での、
葬儀屋や警察官、また上司等、
まきもと以外の登場人物が多過ぎ、
且つ、彼らのキャラが濃過ぎて、
主人公の心象だけに寄り添えなかったため
だったかも知れない。

更には、ラストシーンとしては、
せっかくこの作品のモチーフに使っていて、
尚かつ、白鳥の飛来地の酒田市を舞台に
しているのだから、私としては、
まきもとが弔った人々が白鳥になって現れ、
彼も白鳥にもなって一緒に飛び去る位の
ラストシーンを期待したかった。

郷里を舞台にした期待の作品だったが、
原作をリスペクトの上、
日本らしい風土色の工夫を加えながらも、
残念ながら、オリジナル作品の演出力を
超えられなかった印象を受けた。

ただ、個人的には、同じく
我が故郷を舞台とした「おくりびと」に続く
嬉しい作品にはなった。

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KENZO一級建築士事務所