劇場公開日 2022年9月30日

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「I, Daniel Blake」アイ・アム まきもと shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0I, Daniel Blake

2022年9月25日
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鑑賞方法:試写会

なるほど。『おみおくりの作法』は日本だとこうなるのか。
当たり前だけどイギリスと日本人では墓地からして違う。
でも、物語の核となる部分は同じように響いてきて、同じシーンで号泣しました。

『おみおくりの作法』は最低限に削ぎ落とされた物語がエディ・マーサンの繊細な演技で豊かに紡がれていましたが、
『アイ・アムまきもと』はそこに、現代社会が取り組むべき問題が加えられていたように感じました。
尺は13分しか違わないのに盛り沢山。
阿部サダヲが主人公を演じることでテンポアップしたのと、取り巻く人々の名演技でコンパクトに収まった気がします。

主人公は寡黙で内向的な男ではなく “言葉のニュアンスを読み取るのが苦手” な人物です。
「一人一人が“個性”を活かして安心安全に社会参加できる世の中」が裏テーマだったと感じます。
おみおくり係の物語ですから孤独死問題はもちろん、生産性重視で人間を労働力として扱っていた問題も描かれていました。

名優たちの演技が光る見事な掛け合い。
ニュアンスが伝わらないズレが、笑いとして昇華します。
(阿部サダヲ×松尾スズキ)
醸し出す雰囲気で察して、目だけで分かり合えるシーンの素晴らしさ!
(満島ひかり×宮沢りえ)
もちろん國村さんは最高です。

ほとんどセリフでは語らないラストの展開が胸を締め付けます。
一人の人間が生きて死ぬということ。
疎かに扱われて良い人間など一人もいない。

エンディングテーマの歌声も静かな余韻として心に響きました。

▼余談
引き取り手の無い遺骨が増える問題は『川っぺりムコリッタ』でも取り上げられていましたが、市役所と警察の連携の部分は『アイ・アムまきもと』で始めて知りました。
両方の映画に満島ひかりさんが出演されていることにも驚き。
『おみおくりの作法』の原題は『Still Life』ですが、リメイクタイトルが『アイ・アムまきもと』なのは労働者問題を追加したことで『わたしは、ダニエル・ブレイク(I, Daniel Blake)』をリスペクトしたように感じました。

shiron
shironさんのコメント
2023年7月12日

Mさん、コメントありがとうございます
もともとがシーンジャンキーでして。
心を震わせるシーンが一つでもあれば満足する体質なので甲乙つけ難い。(>_<)
映画って、どれも違ってみんな良いんですよね〜。
そして見る側も、人それぞれ自由な感想があって良い。
そんな懐の深さが大好きです。

shiron
Mさんのコメント
2023年6月13日

私は「おみおくりの作法」の方が断然好きでした。

M