「【情熱を持って、99年間を生きた稀有な女性の真の姿を、17年間に亘り取材し、最後は彼女にとって、大切な存在にまでなった監督が映し出した、ドキュメンタリー作品。】」瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【情熱を持って、99年間を生きた稀有な女性の真の姿を、17年間に亘り取材し、最後は彼女にとって、大切な存在にまでなった監督が映し出した、ドキュメンタリー作品。】
ー 故、瀬戸内寂聴さんは、ユーモア溢れる言葉と、戦争反対を唱えハンストした気骨ある女性作家であり、僧侶だと思っていた。
だが、このドキュメンタリー作品を観ると、一人の情熱溢れる女性であり、波乱万丈の生き方をされた方だと知った。-
◆感想
・一番驚いたのが、80歳を超えても、ステーキ肉、トンカツを嬉しそうに口にする姿である。健啖家として、彼女はこのように言っている。
”肉を食べないと、脳が働かないのよ・・。”
・最晩年はコロナ禍をあり、活動を自粛していたが、その前までの車椅子に乗って、国会前などで戦争反対を訴える姿と、その言葉の重さ。
・説法に来た数々の女性達に掛ける、菩薩の様な微笑みを浮かべて応える言葉の素晴らしさ。
ー 東北大震災で、夫を亡くした女性に掛ける、“貴方の傍には旦那さんがいるの。だから、泣いていては駄目。旦那さんが、心配してしまうわ・・。”という言葉。-
・時にユーモアも忘れない。姑と上手く行かないと悩む女性に掛ける言葉。
”確実に、姑の方が先に逝っちゃうんだから、相手にしなければ良いですよ。”
■そんな、瀬戸内さんが、今作の監督である中村祐さんにだけは、一人の女性として悩みや体の不調を訴え、時に泣きじゃくる。
そして、監督を”裕さん”と呼び、彼の私生活を気遣う姿は、恋人か、母親の様である。
<瀬戸内寂聴さんの著作は、瀬戸内晴美名義も含めて、恥ずかしながら読んだことが無い。
只、一時期、彼女の恋人と噂された、井上光春氏の著作は好きであるために、彼女の男性遍歴や、出家した事は知ってはいたが、ここまで稚気溢れる且つ聡明で心優しき女性であったとは・・。
謹んでお悔やみを申し上げるとともに、このドキュメンタリー作品の素晴らしさも、併せて記させていただきます。>
<2022年7月31日 刈谷日劇にて鑑賞>