劇場公開日 2023年8月11日

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「このリボルバーは不発弾」リボルバー・リリー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5このリボルバーは不発弾

2023年8月16日
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鑑賞方法:映画館

単純

寝られる

萌える

いやはや、何と言うか…。多くのレビュアーさんの指摘に口を揃える訳ではないのだが、でもやっぱりその通り。
面白味のある題材、一流の素材が揃っていながら…。
『キングダム』で邦アクションの本気度を見たかと思えば、またまたこういう凡例がお茶を濁す。

本当に題材や素材はいいのだ。
陸軍がある資産家邸を襲撃。全員殺される中、息子一人が助かる。
何か秘密のものを持って逃げる。血眼になって追う陸軍。
その少年を助けた一人の女性。彼女の正体は…。
莫大な資金。その鍵を握る少年。狙う陸軍、海軍も。ヒロインの過去も関わる。
思惑絡む陰謀から、女は少年を守りきる事が出来るか…?
ベストセラー・ハードボイルド小説。
監督は行定勲。大正時代の美術や衣装は素晴らしい。
主演は綾瀬はるか。他、豪華キャスト。
ドラマチックなアクション・エンターテイメント。
…の筈なのに、何なんだろう、この退屈さは?
一目瞭然だった。アクションとしてのセンス皆無なのだ。

アクション映画って、冒頭=掴みでどれだけ観客を引き込む事が出来るかに懸かっている。だから昨今のアクション映画は、冒頭にまず大きな見せ場を用意する。ここに引き込まれれば、その後の展開が気になって仕方ない。
一応本作も陸軍の襲撃や少年の危機など作品の主軸である事件から始まるが、これが驚くほど緊迫感がない。いまいち背景も分かりづらく。展開もスローテンポ。何か開幕から退屈さを感じてしまった。

開幕テロップでヒロインの素性を説明する。これは致命的なミスだと思う。
お陰でヒロインのミステリアスさが薄れた。いや、宣伝などで綾瀬はるか演じるヒロインが凄腕のスパイというのは分かりきっているのだが、それでもやはり展開していく内にその素性が分かっていく方が引き込まれる面白味があるのだ。

その開幕テロップで“多くの人を殺した恐れられる日本人”と出るが、なら過去のそういうシーンを挟むべき。
ただ簡潔に文字だけで言われても…。
だから序盤の列車で最初のアクションを披露しても唐突に感じてしまう。
それかそのテロップを無くし、序盤の列車で初アクションを見せ、彼女は何者!?…と思わせた方が良かったと思う。

綾瀬はるかのアクションや演技は素晴らしい。
コメディなどでキュートな魅力を振り撒き、プライベートでの天然は周知。シリアスでは高い演技力を見せる。
実はアクションにも長け、その際の動き、強さ、美しさには本当に魅せられる。
本作も然り。アクションとクールな佇まい。また彩られる衣装の数々…。
綾瀬はるかを見るだけなら高得点だ。
が、そんな彼女のアクションを活かせなかった。
格闘シーンなど別撮り?…と思ってしまったほどリアリティーなく浮いている。
ガン・アクションなどカッコ良く撮ってるように見えて、何かの劣化真似事…?
銃の撃ち合いもこちらの弾だけ当たり、あれだけ撃ちながら一発だって当たらないご都合主義。遮るものだってないんだし、角度によっては当たるでしょ。
もうこれは完全に、行定勲にアクションのセンス無し。緊迫感もキレもない。
どうやら本格初アクションのようだが…、もうやらない方がいいね。
この人はドラマ向き。なら、ドラマ部分は…?
残念ながら今回はこちらも。本当にだらだらスローテンポで、退屈。(“退屈”って言葉、もう3回目)
話の語りも悪いのか、せっかく面白味のある話なのに面白味がない。
どんどんヒロインの過去やそれぞれの交錯した思惑が明るみになっていくのに、引き込むものがない。
理想や感動要素も踏まえているが、響かないと言うかピンと来ない。
次第に眠気にも襲われ…。140分弱の長尺、何に使った…?
『GO』のような快テンポで撮れなかった…? やはりこれだけが特別で、大ヒットはしたものの『セカチュー』や『北の零年』など凡作多い。『ナラタージュ』や『窮鼠はチーズの夢を見る』などスローテンポの作品も多いし。個人的に『GO』以外で良かったのは『円卓』ぐらいで、実は結構過大評価されてる…?

他のキャストもよりけり。
飄々とした長谷川博己、不気味な存在感の清水尋也。
ちょい役ながら印象残した豊川悦司、石橋蓮司、阿部サダヲ、板尾創路。
中でも佐藤二朗のインパクト。
それだけに、役者が本業じゃないアーティストやアイドルの力量不足は否めない。

“リボルバー”は愛用の銃だけど、“リリー”って…? コードネーム…? 全く触れられてなかった気するけど…。
“リボルバー百合”じゃあ何処ぞの源氏名みたい。そこら辺も腑に落ちず。
良かったのは綾瀬はるかの美しいアクション・ヒロイン像だけ。ところがそのアクションも…以下同上。
おそらく東映はシリーズ化を狙っていただろうが、それが放たれる事はないだろう。
昨年の大砲の如き絶好調から一転、鈍い不発弾続く今年の東映を思わせる本作であった。

近大
りかさんのコメント
2024年6月21日

金太さんのように理論的には申せませんが、同感です。

りか
kazzさんのコメント
2023年9月29日

近代さん、お気に召しませんでしたか…(^^)
私は、登場人物を整理できていない脚色が致命的で、もっと単純なストーリーにしておけば良いものを、含みを持たせようとしたことが解りづらく、退屈な展開にしてしまってると感じました。
酷評されている方も総じて綾瀬はるかは否定されてませんね。
市川雷蔵の『眠狂四郎』のような、リアリティや迫力ではない”様式美“のアクションを意識して撮っていると、私は思いました。
綾瀬はるかの孤高の美しさが出ていれば成功…という。
それが今の時代に合ってなかったかも知れませんね。

kazz
humさんのコメント
2023年8月24日

アクションはなにも詳しくないのですが、今作はそんな私にもちょっとさすがに無理が…という❓がのこるところはありましたね。
ちなみに、リリーは植物 〝百合〟の英名lilyかと。もうすでに解決されてたら失礼しました😌
このタイトル、予告でこころ掴まれました。

hum