「"蜂蜜氷糖梨(フォンミンビンタンリー)"」リボルバー・リリー いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
"蜂蜜氷糖梨(フォンミンビンタンリー)"
関東大震災(大正12年(1923年))から1年前後の元女スパイの活劇作品 大正モダン華やぐ帝都東京、そして秩父から行田、上尾と通り、玉の井迄の行程をスパイアクション風に描く造りとなっている
クライマックスは海軍省前の突破シーン それにしても俳優陣の豪華さは他の映画よりも群を抜く出演である
なにせ、ラストの眼帯男役鈴木亮平に至ってはポストクレディットでもよかったのではと思う程の贅沢さである
佐藤二朗との約束や、陸軍省の内幕への射殺等々、謎な部分も含めて次回作を制作陣としては演出しているのであろう 原作未読なのでどれほどの時代考証がなされているかは不明だか、雰囲気だけでもあの時代のノスタルジーが感じられるのではないだろうか
さて、感想なのだが、兎に角今作の効果音である銃声音の大きさに驚く 残響音も含めたリアリティに富むあの爆音は、特徴づけたい意図を厭が応にも感じる演出だ 格闘シーンは2つ程差込まれているが、あくまでガンアクションが主体である 綾瀬はるかといえば、NHKの"精霊の守り人"のあのアクションが思い出される そういえば、あのドラマも子供を護る用心棒役だったなぁとその概視感が頭を過ぎる 今作品もこの世のモノではない老婆が出現し弾摘出切開痕を癒す幻想シーンがあったので、プロットは似ているのかもしれない あの時の綾瀬嬢のキレキレのアクションに比べれば、今作はガンアクション故、あまり突出した演技は感じられない 出演者それぞれが殆ど銃を手にする大変希有な作品という面では興味深いが、大正時代、簡単に銃が手に入る物騒な状況だったのだろうか?(苦笑 ま、あくまで作劇だからそこを突っ込んでも野暮であろう
但し、もう少しストーリーを掘り下げても良かったのかも知れない 『バニシング契約』や、マクガフィンである父親から託された書類とみせて実はそれをくるんでいた手ぬぐいにヒントとか、スパイ映画をたらしめる小片は散りばめられているが、原作自体がそうなのか、深みを感じ得ないのである 他のレビューでも指摘されている通り、"脆弱な陸軍"という演出も、さもありなんと同意するのだが、どうせならば一発も撃たれない奇跡さを主人公に纏わすのも面白いかもと思う 元々破綻している展開なので、ファンタジー寄りにコンセプトを傾けてもと思ったのだが。。。
戦争観とかが差込まれたり、オープニングの自白強要シーンでのオーバーリアリティの演出とか、何か一貫性が感じられないのは、観賞していて困惑した次第である
とはいえ、『引き金を引く』という行為の通常性、惰性を、撃つことを躊躇するという役回りの子供に未来を託すという帰着には納得しているのだが。銃なんか撃たずに甘い菓子を食べている時代の方が幸せだしね^^