「偽善の域を越える展望が感じられない」戦場記者 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
偽善の域を越える展望が感じられない
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ロシアがシリアで試したことをウクライナ侵攻に振り向けたという視点は貴重に感じたが、初期の攻撃結果しか出ていないので、今となっては古びた感じを受ける。確かに、取材することを生業としている須賀川記者自身の偽善を問い直す姿勢は貴重かもしれない。多くは脚色であろうけれども、映画『クレッシェンド』に集った若者たちは、互いに自分とは違う見解と向き合う機会を得ることができ、相互理解につながる可能性もみせてくれたが、須賀川記者の取材では、それぞれの主張の矛盾は指摘するものの、結論としては、当事者同士の解決に見切りをつけており、展望が感じられない。アフガニスタンでの閣僚取材において、西側諸国の女性の権利保障への批判を偽善だと媚びるような言い方をする必要があったのだろうか。その閣僚の言い分では、西側諸国の統治による悪弊の結果だというわけで、その前がどうだったのか検証されているわけではない。須賀川記者の言うような薬物依存症者への治療という人道支援をしようとしたときに、タリバン政権がその方向で動いてくれることを期待するのは難しいように思える。故中村哲氏の名誉回復が行われているようなので、ペシャワール会の活動成果も含めてアフガニスタン支援の展望を探ってもらいたいと考えた。
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