劇場公開日 2022年7月8日

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「被差別部落出身の教師の葛藤」破戒 りあのさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0被差別部落出身の教師の葛藤

2022年7月11日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

島崎藤村の破戒を間宮祥太朗主演で60年ぶりに映画化したとの事。
亡くなった父から自身が被差別部落出身である事を隠し通すよう強く言われていた瀬川は、地元を離れ小学校の教員として働いていた。言葉使いも丁寧で、生徒に慕われる瀬川だったが、出自を隠していることを悩み続け、下宿先の士族出身の志保を好きになったが、告白出来なかった。そのうち瀬川の出自について学校内外で部落出身じゃないかと疑念を抱かれるようになり、瀬川の立場は危ういものになってきた。苦しみの中、瀬川は被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎に傾倒していき、そして・・・てな話。

日露戦争の頃だから120年近く前の明治時代の設定で、先日観た、私のはなし部落のはなし、よりはるかに差別意識が酷かったのだろうと想像し、主人公の気持ちになって悲しくなった。
アメリカの黒人に対する差別、かつてのドイツでのユダヤ人に対する差別、トルコなどでのクルド人に対する差別、中国でのウイグル人やチベット人に対する迫害、日本で現在も続いている在日朝鮮人への差別など、世界中で差別は決して無くならないものなんだろうと思う。
人類皆兄弟、自由で平等というのは理想だろうが、人間は弱い生き物だから、自分より下と思える人が居ないと精神的に持たないのかもしれない。明らかに肌の色が違うなど、見た目が違う差別より、隠し通せと言われるような見た目が全く変わらず、自分のルーツに関わる部落差別は奥が深いのかもしれない。
そんな事を考えながら、悲しく涙が出そうになった。
瀬川役の間宮祥太朗が素晴らしい演技を見せてくれた。
ヒロイン役の石井杏奈が凛として清楚な感じで良かったし、学校での友人役の矢木悠馬の友達思いの言動が素晴らしかった。
楽しい作品ではないが、多くの人に観て、知って、考えて欲しい作品です。

りあの