「何度も繰り返すことで人の心に刻み込まれていくモノ。それも人の記憶の一部となるのです。観た後にじわじわ心に沁みてくる作品です。」今夜、世界からこの恋が消えても もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
何度も繰り返すことで人の心に刻み込まれていくモノ。それも人の記憶の一部となるのです。観た後にじわじわ心に沁みてくる作品です。
最近観て面白かった作品の、同じ監督の作品が
他にも上映中だと気がついて鑑賞することに。
※ 同時に3本公開中だったのですね すごいなぁ
◇
主な登場人物は、そんなに多くない。
主人公? の少年A と
ヒロイン? の少女A と
同級生? の少女B の、概ね3名(…だけではないですが)
少年A (神谷透=道枝駿佑)は高校生。 同級生との流れで
少女A (日野真織=福本莉子)に「付き合って」と勢いで告白。
「うん いいよ。付き合おう」 と交際が始まる。 おぉ。
ある日のデート中、うとうとしてしまう真織。
目を覚ました彼女が、小さく悲鳴を上げる。
「あなた 誰?」
「前向性健忘」 ぜんこうせいけんぼう
高一の時に彼女が遭遇した交通事故 の後遺症。
事故の前の事は覚えている。 けれど
事故の後の事は、眠ると記憶から消える。 …うわぁ
朝、真織が目を覚ます。
彼女はまず、「日記を読め」というフセンを見る。
そして、前日までの自分が書いた日記を読み返す。
それをすることでようやく
彼女は昨日までの自分に追いつくのだ。
そんな彼女の症状を知っていて
何か辻褄の合わない事態が起きたとき
真織を混乱から救って支えてきたのが
少女B (綿谷泉=古川琴音)。
絵を描くのが好きな真織。
スケッチブックには、神谷透の絵が増えていく。
大きなキャンバスにも、彼の絵を描きだす。
真織に笑顔の時間が増えてきた。
当初、神谷透を快くは思っていなかった泉も
神谷透の存在を認めるようになる。
そんなある日、神谷透が泉に話しかける。
「もしも僕に何かあったら
彼女の日記から 僕を消して欲しい」
うーん。
何かフラグが立ちましたけど…。
◇
とまあ
二人の関係はどうなってしまうのか
ストーリーが進むに連れて話の先が気になり
引きこまれていきました。
この作品、不思議な魅力があります。
いくら説明に文字を費やしても
作品の本質を上手く伝えられない気がしています。
ぜひ自分で観て
どんな作品かを確かめてみて下さいませ。
※ …って、上映館の数、少なくなってきてますね…(汗)
もっと早くみておけば良かった。
◇ 鑑賞後に振り返って
鑑賞中は、もちろん
ストーリーの展開の通りに作品を観る訳で
途中では、登場人物の行動の意味や理由や
そういったものが分かりにくい事があります。 …よね ?
この作品、
エンディング時点からストーリーを逆上り
その時点での主人公たちの心情を振り返ってみたら
より一層
一人一人の行動や心情の揺れ動きが良く読み取れ、
共感の想いがいっそう深くなりました。
何て気持ちの暖かくなるストーリーなのかと
心に沁みてきました。
哀しい終わり方をしたと思っていたのに
ハッピーエンドのお話を見た様な
そんな気分にさえなっていて
そのことに自分でもびっくり です。
観て良かった。
◇最後に
一番辛い思いをしてきたのは、
「ヒロインの親友の子」
ですよねぇ。
ヒロインの一番の理解者であり続けるだけでも
相当しんどい。
もう一人の理解者が出来て、良かったなぁ
との思いも束の間。 よりによってこの男から
更に重荷を背負わされてしまうという…
陰の主役は、この娘かと思います。 うん。
※演じた古川琴音さん。
「メタメルフォーゼの縁側」などで見てましたが
この作品での演技に魅了されました。
”神谷透君を忘れないで” のメモを見つけた時の
表情の変化とか…もう なんというか。 ふぅ
◇最後の最後に
日記を読み返して一日が始まる。
その日課が、10年20年と続き
日記も数十冊になっていたら…
う~ん 読み返すだけで
一日が終わってしまいそうです。
◇最後の最後の最後(…おーい 汗)
絵を描くことで、神谷透の事が
真織の記憶に残るようになったのであれば
そして、それを本人も期待したのであれば
彼の人生も悪くはなかったのかな と
そんな風にも思うのでした。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。