「爆弾処理、潜入捜査、記憶障害の合わせ技」バーニング・ダウン 爆発都市 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
爆弾処理、潜入捜査、記憶障害の合わせ技
刑事・警官や探偵が主人公の犯罪サスペンスで定番要素と言えるであろう、爆弾処理、潜入捜査、記憶障害という3つの要素。本作に組み込まれたそれぞれの要素は、個別ではさして目新しくもないものの、3つすべてをかつて爆弾処理班に所属した元警官の主人公フォンの属性として統合したことで、ありきたりでない、ひねりの効いたジャンル映画となった。
犯罪がらみの謎を捜査/調査する主人公に記憶障害を持たせることで、“信頼できない語り手”の叙述手法もほのめかす点では、クリストファー・ノーラン監督の「メメント」を彷彿とさせる。この仕掛けによって、主人公、警察組織、そして彼が潜入したテロ組織の関係性が複雑化し、先を読ませにくくすることに成功している。
監督と共同脚本は香港出身のハーマン・ヤウ。市民のため体を張ってがんばっていたのに上層部から裏切られた、という主人公の思いに、香港の民主化が中国によって封殺された近年の状況を重ねた、とみるのは考えすぎだろうか。
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