「ねえお兄ちゃん、私が辛いとき助けてくれる?」その消失、 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
ねえお兄ちゃん、私が辛いとき助けてくれる?
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これは、多少のネタバレに触れながらでないと語れない。
出だしから、ワンショット、ワンショット映像美みごとな短めのシーンが差し込まれる。それは記憶の断片を示すように。ただ、ちょっとこの尖りすぎるシーンが徐々にくどく感じ出した。主人公の語りがダラっと(記憶障害の設定なのでしょうがない)してるし、事件を追いかけていることが無理設定(その記憶障害であることの不都合、ひとりで捜査を続けている不自然、)だと思えてくるし、だんだん時系列を追うのにも疲れてきて、途中で脱落しかけた。
しかし、徐々につながり出した線と線が確信に変わった瞬間のざわつきは、同僚の刑事がなすすべなく佇むしかなかったあの感情と同質のものだった。
そこまで執念深い復讐を仕掛けるほどの、憎しみ。自分の人生を犠牲にしてまで達成したい、執着。それを知ると、ざわざわした不安にいつのまにか支配されてしまっていた。おまけにこちらはもう、"連鎖"という言葉の呪縛にもとりつかれている。みごとに想像の上を来た。
ラスト、事件の終着をみたところで、連鎖は断ち切れたわけではないのだろう。なにより、美紀の心に深く"消失"の感情が根付いてしまっている。"命日"や、"旧姓に戻した"ことで、"美波"という名前を付けた娘と、美紀が事件後どんな歳月を過ごしてきたのか、想像が膨らむ。あの憔悴しきった姿は、さもありなん。
そして思う。タイトル「その消失、」の「、」の意味を。おいおい、まだこのあと何かあるのか?と。また新たな消失が生まれる連鎖が続くのか?と。
そうそう、この日公開初日。監督が上映前に軽く挨拶。なるほど、その気合感じる映画でした。
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