「ベイさんが爆走する救急車が通ります。道を空けて下さい」アンビュランス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ベイさんが爆走する救急車が通ります。道を空けて下さい
オリジナルはデンマーク映画らしいが、その色が無いくらいTHEハリウッド・アクション。いや、ベイさんアクション。台詞の中で『バッドボーイズ』や『ザ・ロック』をネタにもしてるし。“ザ・ロック”は映画でもあるし、人の名前でもある。
ベイさん映画を見るのは『トランスフォーマー 最後の騎士王』以来。Netflix映画『6アンダーグラウンド』はまだ見てないので。CG多用とごちゃごちゃ内容に飽きてきた『トランスフォーマー』の鬱憤を晴らす、怒涛の生身のアクションの連続。原点回帰とでも言うべきベイさん節爆走!
妻の癌治療の為、大金が必要な帰還兵ウィル。
血の繋がらない兄ダニーに相談。兄は犯罪者で、銀行強盗を企んでいた。
誰も死傷者の出ない計画…の筈だった。不謹慎だが、何か不測の事態が起きなければ面白くない。
たまたまこの銀行に用があった警官二人。外で待っていた一人が異変に気付く。
白昼の銃撃戦。死傷者も。救急車(=原題“アンビュランス”)急行。
さらに、ウィルが一人の警官を撃ってしまう。
ダニーとウィルは救急車をジャックして逃走。撃たれた警官と救命士キャムを乗せて…。
劇中ほとんどに渡って繰り広げられる逃走カー・アクション。
絶対捕まるものか。意地でも逃げ切ってやる。出口の見えぬ終点まで降りられない。
あちこちにパトカー。ヘリにも追い掛けられ続ける。LA市内を堂々巡り。
ダニーはもはや気がイッちゃってる。妻の為犯罪に手を染めてしまったが、軍人でもあり善悪葛藤するウィル。
血の繋がらない兄弟の絆、時には対立。
ダニーをジェイク・ギレンホールがハイテンション怪演。
ウィルをヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が熱演。
アンサンブル色も濃い。
極限状態下、手当てを続けるキャム。エイサ・ゴンザレスの熱演と魅力が光る。タイトルからしても彼女の役回りこそ真の主役かもしれない。
撃たれ、重体の警官ザック。
人質の彼を気に掛ける相棒警官のマーク。
捜査の指揮を執る警部。愛犬とのドライブ中に呼ばれ、パトカーに乗せられた愛犬の方が気掛かり。
ダニーを知るFBI捜査官。
ダニーは犯罪者仲間にヘルプを求め…。
それぞれの信念、正義、思惑が交錯。誰一人として途中下車を辞さない。
小惑星衝突や真珠湾攻撃、善悪ロボットVFXバトルよりスケールは小規模だが、それでもアクションのド迫力ド派手さは引けを取らない。
序盤の銀行襲撃~銃撃戦は臨場感満点。
救急車、パトカー、ヘリの大チェイスは圧巻。見ている我々はずっと救急車に同乗しているような錯覚。
CGに頼らず、本物で魅せたベイさんのこだわり。
カメラワーク、アップテンポの展開、矢継ぎ早の編集。
スリル、ユーモア、エモーショナルなドラマ。
グロも。
爆走最中、撃たれた警官の緊急手術。キャムは勿論医者じゃない。医者の元カレやその同僚とリモートで繋ぎ、指示受けながら処置。
皮膚を切り、内臓を掴んで…。
ベイさんはプロデュース作ではグロホラーも多い。
頭のてっぺんから尻尾の先までぎっしり、金太郎飴のようなベイさんムービー!
つまり、ツッコミ所も多い。
その爆走車内の手術。ハラハラスリリングな見せ場だが、そんな状況下で手術出来る…?
出血。血を止めるのに使用したのは、頭に付けていた髪留め。しょ、消毒は…?
銀行襲撃も穴だらけ…と言うより、外から丸見え。計画中、誰もそこを考えなかった…?
最後はまさかの“死人に口なし”!? おまけに、撃った相手を庇うお人好しだらけ!?
一応これ、犯罪だし、死傷者も出ています。
とは言え、久々とも言えるベイさん節をたっぷり堪能。
本領発揮のド派手アクションに度肝を抜かれ、ツッコミつつ胸熱くさせる。兄弟の関係、救命士としてのプロフェッショナル…。
“エンタメ王”ベイさんの真髄を見た。