「また訪ねてみたい」柳川 てつさんの映画レビュー(感想・評価)
また訪ねてみたい
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『福岡』と似たような設定ながら、柳川になぜ行くのか、どんな町なのかが語られていて、納得しながら観ていけた。池松壮亮氏演じる宿の主の印象が最初薄かったものの、ジョン・レノンと会ったことがあると言い出したり、中心人物である中国人女性チュアンに求愛したり、謎の少女の父親だったりして、だんだん存在感が高まっていった。中野良子氏演じる居酒屋の女将は端から目立っていたが、中国人のチュアンと言葉が通じないことを承知のうえで言いたいことを言い合う場面が面白かった。『福岡』では、違う言語でも通じ合うという設定であったのとは異なって、自然に感じた。チュアンが夜中の街角で突然踊り出したり、オノ・ヨーコ氏の縁のある家跡で歌う女性が出てきたところが、ちょっと見せ場でもあった。川下りの場面ばかりではなく、見覚えのある場所がいくつか、そして見知らぬ場所もそれなりに映されていて、また訪ねてみたいと思った。弟ドンが死んだ後、チュアンが中国の家に来て兄チェンの妻と鉢合わせしたときには、一悶着あるのではないかと予想した。冗談の内容は、居酒屋で言った通りなのだろう。結末で、チュアンが発見したドンの唯一の遺品が、エンディングの歌の録音で、何事にも控えめだったドンの言い遺した想いを知ったということなのだろうか。
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