「配役は監督が決めるのか?キャスティング・ディレクターが決めるのか?」キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0配役は監督が決めるのか?キャスティング・ディレクターが決めるのか?

2022年4月12日
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かつてのハリウッドでは、どの俳優をどの役に割り振るかは見た目で決まっていた。善良な市民ならそれなりの風貌をした人、アウトローもそう、悪役もそうだった。だから、その俳優は死ぬまで善人か悪役で通すしかなかったのだ。

そんな乱暴なキャスティング・システムに風穴を開けた革命的なキャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティの仕事にスポットを当てたドキュメンタリー映画は、ドハティが見た目に関係なく、例えば正反対のルックスを持った俳優たちを候補リストに並べて、俳優の個性と演技によってその役がいかようにも広がることを監督に提案し続けたプロセスを追う。彼女の恩恵に与ったスコセッシやデニーロやウディ・アレンやイーストウッドがその仕事ぶりを讃えるのを見ると、近代のハリウッド映画はドハティ抜きでは語れないと思うくらいだ。

問題は、そんな重要な仕事に対して、アカデミー賞はキャスティング部門を設けていないこと。撮影監督も美術監督もあるのに。これには理由があって、今も配役は監督がやるものだと断言する監督たちがいるからだ。さて、あなたはどう思うか?

ハリウッド映画を、アカデミー賞の矛盾を散々議論してきた映画ファンも見落としていた論点を提示してくれたという意味で、これは跨いでは通れない問題作だ。

清藤秀人