劇場公開日 2022年3月25日

「どの気分の時に見ても楽しめる映画」人生の着替えかた ゆきさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0どの気分の時に見ても楽しめる映画

2022年4月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

悲しい

秋沢健太朗さんが主演を務める短編3作品のオムニバス。どの作品も毛色が異なり、飽きずに最後まであっという間に見ることができます。どの作品も伏線が気持ち良く回収され、登場人物全員に人生があり、意味があり、生き方があります。

〇MISSING
ヒューマンドラマ。殺人未遂を起こした兄に加害者家族として生きることを余儀なくされた弟だが、その怒りをぶつける相手の兄は指名手配中。秋沢さんの演じる弟の行きどころのない怒り、哀しみ、陰鬱とした息苦しさが画面越しに伝わってきます。見ているこちらも息が苦しくなるような展開ですが、ラストはゆっくり息を吐き、兄弟の関係の模索の末に思いを馳せられると思います。

〇ミスりんご
コメディ。短編ならではのストーリーの疾走感に一気に惹き込まれます。オレオレ詐欺に加担してしまった2人組のやり取りにクスッとさせられる部分もありつつ、グッとくる部分もあります。私は前情報をあまり仕入れず見ましたが正解だったと思います。ストーリーを追っていると察しがつく内容ではありますが、フライヤーのあらすじがほぼネタバレに感じたので…。

〇お茶をつぐ
ハートフル。聴覚障害者のお茶屋の息子が成長する瞬間を見届けられる物語。全てのしがらみがゆっくりと解されていくラストシーンは思わず涙が出てしまいます。秋沢さんは聴覚障害者を演じるにあたり3種類もの手話を覚えたそうで、秋沢さん演じる息子とその姉との手話は微妙に違っているそうです。もちろん手話を知らなくても十分楽しめる内容ですが、手話に明るい人は十二分に楽しめるのかもしれません。

泣きたい気分、笑いたい気分、物思いに耽りたい気分。どんな気分で映画を見ても楽しめるし、どこか自分も着替えたようなさっぱりとした気分で劇場を後にすることができると思います。

ゆき