アラビアンナイト 三千年の願いのレビュー・感想・評価
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マッドマックス監督の恋愛物語
アクションのイメージしかない監督ジョージ・ミラーがファンタジックな恋愛物語を製作、怪優のイメージのティルダ・スウィントンも普通の女性をチャーミングに演じるなど、観る者の裏をかくやり方ではあったが、してやったりとまではいかず若干消化不良に近かった印象。
空港や講演の客席で目にした魔物?達はなんだったんだろうか。
科学がなかった時代に説明できない事象を神話や民話などの物語にし民衆を沈静化した、と学者の立場で言ってはいるものの、実はそう言う不思議な現象を完全に否定できない自分の矛盾した気持ちの現れなのかなと思った。
だとするとジンの存在そのものもこの主人公の不安定な心から作り出した妄想なのかもしれないと思うのは考え過ぎだろうか。
とっても素敵なメロドラマ。
なんだけど、多分。時代も国籍もなんのその、の愛の物語、なんかも知れませんが。
もうダメ。ラス前20分あたりから完全にダメ。イヤ、だから、彼を現代社会に縛りつけちゃダメでしょうが。そこはバイバイしようや、大人なら。的な気分ですもん。
昔話パートは無茶苦茶魅力的でしたが、現代に話が戻って来て、私を愛して!から、個人的には暗転ですw
え?えええぇえー?
ってなりませんか?
やっぱり、ミリヲタ理系脳には、愛の物語はムリですわ。ネコに小判?
ムリだった。
かなりw
と言うか、ティルダーーー!
最近、大丈夫ですか?
日本公開の前作は爆睡もので、コレもちょっと....
あ。今、気づいた。コレがアン・ハサウェイとかなら、素直に物語を受け入れたかもw
下手にティルダとか使うもんだから、え?愛してですか?になるんかも知れませんわw
好き嫌いは分かれるかなとは思うけど、準対抗以上。
今年65本目(合計717本目/今月(2023年2月度)31本目)。
いわゆる「アラビアンナイト」をテーマにした映画です。多くの方が知っていることですがイスラム文化です。とはいえ、日本では(イスラム文化であることはあまり意識されず)多くの絵本や(児童向け)小説などでも扱われていますし、多くの方が知っていると思います。
それをテーマにしながら、独自の設定やルールなども入れていった作品ということになりますので、アラビアンナイトやイスラムに関する知識が「あれば有利」くらいですが、なくても大丈夫です。
映画の中で大きなファクターとなる「3つの願い」が何なのか、そしてそれがどのようにストーリーに展開していくか…は、(たった3つしかない、ということを考えると)やや(数の関係で)ネタバレになってしまうので、避けておきましょう。
なお、上記のように「イスラムの文化のアラビアンナイト」をテーマにはしているとはいえ、アラビア語が突然出てくるわけではなく(基本的に英語展開です)、イスラムに関する分野の知識があれば有利だとは思いますが、一般常識で足りるように工夫されています。
採点は以下が気になったので4.8ですが、七捨八入によりフルスコアにしています。
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(減点0.2/やや中高生に対する配慮が足りない)
・ 主人公は学者のアリシアに取るのが普通と思いますが、学者であるという関係上、突然数学の話をしたり物理の話をしたり、若干考古学(?)に関する話をしたりと、「学者である」という設定から派生することは理解しても、「なぜかしら」変に「浅く広く」理解が求められる展開になっています。
ただ、特定の数学の定理を知らないと解けないとか、物理の何とか法則を知らないとわからないとか、そういう展開にはなっていませんので、「知っていれば有利だが、知らなくても多少???になる展開はあっても、全体としての理解ができなくなるわけではない」(理解度が2~3%落ちるに過ぎない)という点で、この減点幅にしました(かつ、字幕にあれこれ補足するのも限界があるし、「主人公が学者」というのを日本側で勝手に変更することはできないことも考えると、これで0.5も1.0も引けないのは当然の話)。
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アイデアはいいが中途半端
アラビアンナイトを題材にした作品だがアイデアは面白くてもストーリー、脚本が中途半端。もう少し工夫が欲しかった。アラビアンナイトに関心がある人には興味深い作品。早くも今年のワースト作品候補。
文句ありにおもしろかった。
まず主人公のディティールが良い。
本の読み方に貧乏ゆすり。
ティルダスウィントンがノリノリで演じてる感じも良かった。
あと編集も凝ってて好きだった。
演出も映像表現としても引き込まれた。
たのしかった。
細かい音響?が入っているのもよくて、
メガネを取る時の音とか、
割れた瓶のかけらが擦れる音とか、
ヒールの音とかが聴けると嬉しいね。
ジンの歴史がもう世界の歴史というか、
物語の歴史のようで良かった。
特にイシルメダとゼフィールがお気に入り。
あのイシルメダの監獄部屋よ。
これはもうフェチズムかもだけど、
あの猛烈に人間味溢れる感じ。
堪らなかったですな。
打って変わってゼフィール。
彼女も主人公と同じ癖を持つ天才。
あの知的探究心は見ているだけで良いし、
クソみたいな生活には同情するし、
何だか彼女のことは知らぬ間に好きになってたなー。
それ故にラストは悲しかったですな……。
ただ文句と言うか疑問なのは、
愛という結末で終わらせてしまって良かったのかってところだよなー。
孤独や一人で生きること、学ぶことに満足し、
幸せを感じていたアリシアが愛を願うだなんて。
そして愛される生活をそれなりに幸せに感じていた。
これって、もはや映画の歴史がつくってきたものなんじゃないかと思うんですよね。
映画においてのハッピーエンドって、
愛を証明したり人間賛歌をうたうことだって、
もう何度も刷り込まれてしまったんじゃないかと。
それ以外の映画はあり得ない、みたいな。
……と思ったけど、そんなことないか。
『はじまりのうた』とかあんな爽やかなエンドを迎えたけど、
彼女は「愛」というよりは、自分のしたいこと、
自分の人生を掴んだわけだもんね。
「フランシス・ハ」とかもそうか。てか山ほどあるか。
今作だって、何か「知性」とか「知識」とかが
擬人化して彼女と結ばれるみたいなエンドだって
映像的にはおかしいのかもしれないけれど、ありなわけで。
アリシアとジンが愛で結ばれるのって、
どうしても性とか異性愛とかに見えちゃうところがあって、
否定はしないし、アリシアには元夫がいたわけだから
無い訳では無いんだけど、納得はできないんよな。
これは、答えを見つけるしか無い問題。
あと小言だけど、
あの隣人の描き方はどうなん?と思ったけど、
彼女らの間にも愛はあるのだろうし、
あのピスタチオのお菓子で全然許してたというか
心変わりしていたので、
それくらい寛容な人たちだったってことですかね!
【”MAD MAX 怒りのデスロードのアラビアンナイトバージョンかな?等と思って観ると痛い目に合う作品。”今作は孤独な魔人と諦念に満ちた女性神話&物語研究者との恋物語なのである。(私の勝手な解釈。)】
ー ♪ティールダ、ティルダ、ティールダ、ティルダ、スウィントン♪と、徹子の部屋のメロディを梅毒にヤラレタ脳内で、リフレインしながら劇場へ。
そう、脳内では勝手に、”MAD MAX 怒りのデスロードのアラビアンナイトバージョンだよな!”と思って観に行ったのである、私は。ところが・・。-
◆感想
・神話や物語の研究者、アリシア(ティールダ・スウィントン)は、講演の為に訪れたトルコ・イスタンブールのバザールで、ガラスの小瓶を購入する。ホテルに帰り、瓶の汚れを落とそうと電動歯ブラシ(だよね?)でゴシゴシ洗っていたら、蓋が始め跳び、中から超大男のジン(以下、魔人)(イドリス・エルバ)が現れ、”三つの願いを叶えるよう”と宣う。
ー あれれ、全然MAD MAXじゃないじゃん・・。”
・中盤までは、確かにアラビアンナイト風の3000年にも渡る、魔人が語る数々の物語が、アラビアンナイト感満載で描かれる。
あのVFXを多用した、エキゾチックな物語の数々は面白く鑑賞。
太った女性群との酒池肉林(まさに字の如く・・。)は凄かったなあ・・。
・だが、御存じの通り夢を叶える物語が必ずしもハッピーエンドにならない事は衆知の事。それを知っているアリシアは魔人の申し出を受けない。
・そのうちに、魔人はシバの女王との悲恋の話を始めるが、矢張りどれもアンハッピーエンドで、何度も魔人が瓶の中に閉じ込められてきた孤独で哀しき過去を持つ事をアリシアは知るのである。
そして、アリシア自身も、親兄弟はなく、夫とも別れ寂しき独り身・・。
<そんな二人が、お互いを失いたくないという想いに駆られるのに、そんなに時間は必要なかった・・。
今作は、所々、分かりにくい部分もあるが、エキゾチックな物語の数々のシーンや、ラスト、魔人がアリシアを抱きかかえるように歩き去る姿は、中々良かったな・・。>
物語を物語る物語。
文学者のアリシアがイスタンブールで小綺麗な瓶を購入!しかし、その中から魔神が出てきて3つの願い事を…といった物語。
タイトルからして、ファンタジーアドベンチャー的なものかと想像していたら、魔神と出会ってお話して…の展開が、、、これどこまでやるの⁉
全体を通し、終盤まで魔神が自身の過去をお話しする場面が続き・・・勿論ただ話すだけではなく、回想シーンとしてその時の場面も見せられるが、1つのストーリーと言うよりは、回想だからダイジェストみたいなもので。。
鑑賞前のイメージと違ったからとかではなく、シンプルに自分には全く合いませんでしたかね。。
最後の123がロマンチックだったり、エンディング曲も良かったし、現実主義とか夢のある話とか、きっと強いメッセージ性のある作品なんだろうけど、ワタクシはそれを感じ取れるレベルにはなく。。
どんな映画でもソコソコ楽しめるタイプだと思ってますが、珍しく、あまりのめり込むことは…ちょっとできませんでした。
合わなかった
29本目。
会話劇な感じで、映像はあっても補助的で、大胆な感じそうには思えるんだけど、落ち着いた感じで、盛り上がってこない。
早々にスイッチオフだけど、何とか面白そうな所をと思ったけど、オンになる事はなく。
まあ、合わないものは仕様がない。
3つの願い、何をかなえる?
2023年劇場鑑賞42本目。
なんか中世の時代のファンタジーかな、くらいの印象で鑑賞。
いきなり現代だったので、現代によみがえった魔神が起こす騒動みたいな
話かなと思ったらホテルの一室で話すだけ。
でもこれが結構面白いんですよね。ランプの魔神が3つの願いをかなえる、という話は聞きなじみがあると思いますが、「アラジン」でかなえた願いって最後は覚えてるけどあとの2つはなんだっけ?という感じで。この物語の魔神は3つの願いを毎回かなえられないので未だに閉じ込められているという設定が斬新で、その理由を話してくれるのですが、なるほどね、と思わされました。
自分なら何をかなえてもらおうかな(願いを増やしたり、死なない体にしたりはダメと最初にかなり細かくルールを説明される)と考えながら観るのも楽しいですね。
自分なら「自分が好きになれる女性に好きになってもらう」「買う宝くじが全て高額当選するように」「天寿を全うできる健康な身体」ですかね〜
※恋バナです。
私、この映画のサブタイを《三千年の戦い》と読み違えていたんですよね。
マッドマックスみのある荒ぶる戦闘シーンもあるにはありますが、メインはティルダ演ずる学者と魔人との恋バナでございました。別にティルダ戦わんかった。
映像はさすがに美麗です。
内容はまあ王道。
ジョージ・ミラーの珍しいロマンス劇
率直な感想は、「思っていたのと違った」という事。いやもちろん、『マッドマックス』みたいなアクションや、『ハッピーフィート』のようなアドベンチャーを期待していたわけじゃないんだけど。
ジョージ・ミラーらしさを感じたのが、寓話を題材にしている点。実は『マッドマックス』シリーズも、荒廃した世界に降り立った英雄譚だった。というか、恋愛に奔走された人間と魔人によるド直球なロマンス劇をミラーが手がけたのが意外。テリー・ギリアムやターセム作品に似た雰囲気を感じたのは自分だけではないはず。ティルダ・スウィントンが普通の女性を演じるというのも、近年では新鮮かも。
全編通して舞台上で繰り広げられる対話劇に近いので、展開の起伏が乏しかったのが少々残念。セリフ量も少なく、画力が半端なかった前監督作『フューリーロード』の反動が強すぎたか…
「物語」と“何故人間というものは物語を求め綴るのか”を描いた映画。
①「魔法のランプ」に基づいたドラマや映画は沢山あるが、ランプの中に閉じ込められていた魔人と魔人をランプから出した人間とのロマンスを描いた映画はこれが初めてでは。(TVドラマでは男女反対で『可愛い魔女ジニー』ってのがありましたが)
②「物語学」(または「物語論」※narratology)というものが有るのを初めて知った。
主人公をその研究者にしたのは上手い設定。
呼ばれたイスタンブール(イスラム世界)での講演会の席上、彼女は「物語」が生まれた背景等を簡略にスピーチするが、今後の情報技術の発達で「物語」というものは死滅してしまうだろう、と言ったところで何処からともなく現れた老人(後に魔人の物語の中で出てくる王を唯一楽しませた老人?)に“ふざけるな!”と一括されて気絶してしまう。
それと、この映画は物語り形式が「入れ細工」になっているのも特徴的。
先ずはこの映画(「物語」)の語り手として主人公がいる。その物語の中に「ランプと自分の物語」を語る魔人が出てくる。
この映画は物語の語り口として二重構造を取っているわけだ。
そこで、主人公が「物語学」の学者だという設定が効いてくる。
「物語」というものを研究しているから、普通の人間ならすぐ“引っ掛かってしまう3つの願いを叶える”という話に簡単に乗ってこない。“3つの願い”の話は大概欲をかいた人間の失敗談で終わってしまうことを研究して知っているからだ。
何とか自由な魔人に戻れるようアリシアに自分の3000年間の物語を話すも3つの話も全て人間の欲望・愚かさ等(自分の愚かさも含まれる)によりアリシアの言う通りハッピーエンドとはほど遠い。
※魔人(ジン)についてWekipediaで調べてみると、この映画の内容に関する部分は下記の通り:
知力・体力・魔力全てにおいて人間より優れるが、ソロモン王には対抗できないとされる。ソロモン王はジンを自在に操り(これでソロモン王が魔人を壺に入れることが出来た理由が分かった)、神殿を立てる際にもジンを動員したと言われている。
クルアーンに拠る公認教義では、ジンは人間と天使の間に位置する被造物とされる。古典イスラム法でもジンの位置づけを定めているが、ジンが人間と結婚する事についても論考されている。
なお、アラビアンナイト(千夜一夜物語)の伝承で有名な、「シャハラザード姫が残虐な王の悪習を止めさせる為に毎晩一話ずつ話をしてついに成功したとする結末は、後世のヨーロッパ人が追加したものである」ということがそうだが、このエピソードは魔人の語る物語で別の形で取り入れられている。
これらの物語を聞いてアリシアが決断した「願い」は、魔人とアリシアとが相思相違になること。(いささか突飛だとは思ったが)
③孤独を愛する知的で自立した女性を演じるのに現代最高の女優の一人ティルダ・スウィントンはまたとない適役である(まあ、何をやっても上手いけど)(私がこの映画を観ようと思ったのも彼女が出ているから)
一方、イドリス・エルバも3000年も人間たちを見ながらひねくれもせず厭世的にもならなかった魔人を、酸いも甘いも噛み分けたような包容力のある演技で魅力的に造形している。
殆ど二人だけの芝居ながら(魔人が話す「物語」部分は劇中劇なのでここでは省きます)、この二人の好演で飽きさせない。
④
貧乏揺すり
"ストーリーテリング"についての壮大なCGを駆使した西洋画のようなルックと作劇であり、哲学と思想的、且つロマンティシズム溢れる作品である
但し、これが非常に難解な哲学故に、ストーリーそのもののシンプルさとの結びつきを見出すことが困難な思考を余儀なくされるのである
なので、本作を充分に理解したいのならば何回も観るべきなのであろう 色々な伏線と回収が散りばめられている所も、"塵"である人間ならではの成せる技なのかもしれない
ラストの解釈は特に困難を極める 私は、『愛しすぎるが故にジンの能力が徐々に削がれるから、たまに通い婚でいいじゃね』的に思ったのだが、考察サイトではそうじゃないらしい・・・
そんな具合に、その物語を受取った人がそれぞれの考えを持っていいのではという多様性の話であるという結論なのだが、これも間違っているのかな?(苦笑
アラビアンナイト、イスラム神話ベースだけど、その美しさ、寓話満載、不思議感満載。最後は共感。
瓶に閉じ込められた魔人の🧞♂️孤独とシングル中年女性研究者の孤独が共振し、一つになる。
最後は善意的解釈が適当でしょう。
カンケーないけど【ハクション大魔王🤧】思い出した。
所詮はワシの、【物語】なんてこんなもの
しかし、インチキくさいイスタンブールのバザールのツボ🏺小さい胡散臭い
飛び出した魔人の3000年の物語は壮大
エピソードが3つくらいに分かれるが
良い意味で古臭く、色彩美、造形美で煌びやか
教訓にもなる男女の愛、嫉妬、支配欲、示唆に富む物語
現代の研究者の孤独な彼女にもそれなりの物語が
アラビアンナイト、イスラム説話がベースだけど、それだけじゃないし
映像にすると摩訶不思議
空飛ぶ絨毯や魔法のランプは🪔出てこないが、過去から現在へ、現在から未来へ
【女性の真の心を捉えることができない】人間臭い魔人が
主人公の心を鷲掴み、二つの孤独が共鳴共振します。
そう、2人は恋愛を超えた同士なのだ。
決して狂気ではない、現在・過去・未来の物語。
詳しいエピソードにこだわらなくても
①映像美
②研究者の彼女の心の機微
③本当は思慮深く繊細な魔人
に身を任せれば快適作品。
物語も面白いが映像も面白い、おすすめ。ただ、2つ目のエピソードがよくわからなかったよ。
ツボ🏺で無くて瓶🫙だな。お粗末さま。
良い意味で・古臭く、煌びやか
理性と欲望の物語を、意表を付く映像表現で見せる一作
『マッドマックス』シリーズの創始者で、その最新作『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)の鮮烈な印象も未だ生々しいジョージ・ミラー監督による古典物語の映像化。
『アラビアンナイト』と銘打たれているだけに、ジンと呼ばれる魔神(イドリス・エルバ)は登場するんだけど、シンドバッドも空飛ぶ絨毯も登場しない、しかも現代劇まで含んだ、あくまでミラー監督版の『アラビアンナイト』となっています。
序盤から終盤近くまでは、主にジンの語る3つの物語を中心に展開するという、いかにも『アラビアンナイト』的な構造となっています。一つひとつの物語は、かなり過激な要素も含んだ欲望の物語なのですが、映像的にもアングルや演出がまさにショット単位で入念に考え抜かれていて、一つとしてありきたり、と感じさせるような映像がないという気合いの入れっぷり。この残虐さと猥雑さを炎でくるむような映像美は、まさにミラー監督ならではと言えるもので、画面中に刺激に満ちています。
後半になってくると、アリシア(ティルダ・スウィントン)の物語に軸足が映っていくのですが、ここから奇想天外な映像美から一転して、場面によっては定型的とも思えるようなショットが含まれるようになります。こうした映像的な変化と物語の方向性の不明確さが相まって、人によってはやや冗長に感じられるかも知れません。
しかしこの「理性と欲望の相克」こそ恐らくミラー監督が本作で描きたかったテーマなのか、この場面で交わされる会話は非常に考えさせられる要素を含んでいました。ノンストップ・ハイファンタジー映画と思わせておいて、そうは問屋が卸さない、という底知れなさこそが、ミラー監督作品の魅力なのかも知れません。
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