劇場公開日 2023年2月23日

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「相当面白かった」アラビアンナイト 三千年の願い Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0相当面白かった

2023年9月22日
iPhoneアプリから投稿

かつて物語は、津波や地震などの自然災害が起こったとき、その混乱を鎮める唯一の方法として機能していた。同じように、人間は内面の混乱を落ち着け、現実と向き合うための手段として脳内で物語を紡ぐ。
イマジナリーフレンドの男の子が存在していたアリシアは、彼の存在をノートに記録していた。そのノートと同じようにジンを記録していたので、ジンもまたアリシアの脳内妄想なのだろうと思う。ロンドンの部屋のジンの目の絵画も、ラストシーンのサッカーボールの動きも、これが現実ではないことを示唆していた。

シバの女王とソロモンの物語、ムスタファ王子と側室の少女の物語、母親によりハーレムに幽閉されるイブラヒムと巨体女の物語。どれも“力”と“エゴ”の前に砕ける虚しい悲劇。
最後のトルコの商人の妻であるゼフィールはとても聡明で知的な女性であった。飽くなき“知”への欲求と、深くジンに“愛”されながらも自分の研究を続けるゼフィールは、そのままアリシアの願いに通じる。

アリシアの三つの願い。二つは“知”と“愛”。愛は与えることなので、三つ目は愛する人を“救済”することだった。

誰だって物語の主人公は自分自身。どんなときも自尊心を持ち直して、自分の真実を大切に光らせよう。
壮大な三千年の物語を紡ぐことによって、マッチョな価値観や世間の区分けを乗り超えて語りかけてくれた。

Raspberry