「トンデモ展開の連続が楽しい」ムーンフォール ありのさんの映画レビュー(感想・評価)
トンデモ展開の連続が楽しい
月が地球に落下するという”トンデモ”な物語だが、そこはそれ。ローランド・エメリッヒ監督の作品らしいカタルシス満載なアクションシーンで最後まで突っ走ったという感じである。こういうのは一々細かい所を気にしても仕方がない。むしろそれらに突っ込みを入れながら楽しんで観るのがベストだろう。
物語はアッと驚くことの連続で飽きさせない。普通であれば死んでもおかしくない危機的状況を何度も潜り抜ける登場人物たち。NASAの描写のいい加減さ。月に隠された”笑”劇の事実。理屈無視のアクションで豪快に見せ切ったところは、いかにもエメリッヒ節だ。
一応、ハーパーとNASAの職員ファウラーの家族のドラマも用意されているが、何しろ今にも地球と月が衝突しそうという状況なので情緒もへったくれもない。存外表面的にしか描かれておらず、このあたりの大味な展開もいかにもエメリッヒらしい。逆に言うと、人間ドラマを極力端折ってアクションのみに専念した作りは実に潔いとも言える。
とにかく巨費を投じて作られたB級映画という感じなので、そのあたりを割り切って観れば楽しめる作品ではないかと思う。
実際、派手なVFXで表現されたディザスター描写や月でのアクションシーンは見応えタップリだった。惜しむらくは、本作が配信のみでの公開になってしまったことである。映画館の大画面と大音響で体験したら更に迫力が感じられただろう。
個人的な好ポイントとしては、「ゲーム・オブ・スローンズ」のサム役で知ったジョン・ブラッドリーが中々良い活躍をしていたことと、名優ドナルド・サザーランドの元気な姿を久しぶりに見ることが出来た点である。それとマイケル・ペーニャの出演は意外であった。後で知ったが当初はスタンリー・トゥッチが演じる予定だったが、撮影に参加することができなくなり急遽ペーニャに交代したということである。